名称:Ksar of Ait-Ben-Haddou
住所:Ait Ben Haddou 45000, Morocco
公式・関連サイトURL:https://worldheritagesite.xyz/ait-ben-haddou/
アフリカ大陸北西部のモロッコは、ジブラルタル海峡を挟んでヨーロッパ大陸ともかかわりが深く、歴史的な世界遺産の多い国です。その中の1つ「アイット=ベン=ハドゥの集落」は、アトラス山脈の南麓に位置する谷あいの村。アラブ人に迫害されたベルベル人が、身を守るために築いた要塞集落です。
独特の防衛構想に従った特異な姿の集落は、多くの映画のロケ地としても使われました。通商と略奪の歴史が生んだ要塞と集落の融合した、世界遺産「アイット=ベン=ハドゥの集落」についてご紹介しましょう。
目次
モロッコにある要塞の村!世界遺産「アイット=ベン=ハドゥの集落」
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アイット=ベン=ハドゥの集落とは?
アイット=ベン=ハドゥは、マラケシュからアトラス山脈を越えた南東、最寄りの都市ワルサザードの北西30kmほどのところにあります。11世紀ごろからマラケシュとマリのティンブクトゥを結ぶ通商路の中継点として栄えはじめたとみられています。当時こうした陸上交易のルート上の街は、盗賊集団に襲われることもしばしばでした。そこで有力豪族のハドゥ一族は、外敵から身を守るために集落全体を要塞化して備えました。
こうした城塞化した集落は「カスバ」といわれ、北アフリカ地域の随所に今も名残を認めることができます。それらのカスバのなかでも、アイット=ベン=ハドゥは保存状態も良く、ハドゥ一族の防御思想がよくわかる遺構として、1987年に世界遺産に登録されました。モロッコで最も美しい村ともいわれ、映画『ソドムとゴモラ』や『アラビアのロレンス』、『グラディエーター』などのロケ地ともなり、人気の観光スポットとなっています。
アイット=ベン=ハドゥへのアクセス
世界遺産アイット=ベン=ハドゥの集落観光の拠点は、最寄りの都市ワルザザートになります。ワルザザートには空港があるので、カサブランカやマラケシュを経由して飛行機で入るのが一般的です。日本から中近東の空港などを経由する必要があります。
ワルザザートからは、グランタクシーという乗り合いタクシーで片道1時間ほど。世界遺産アイット=ベン=ハドゥの集落には、現在数家族しか住んでおらず、たいていの住民は川の対岸に移住しています。そのため、集落に入るには小川を徒歩で渡らなければなりません。
アイット=ベン=ハドゥのおすすめポイント①:巨大な門と高い城壁
世界遺産アイット=ベン=ハドゥの集落は敵の侵入を防ぐために、工夫がいろいろしてあります。村の手前の小川を渡ると、巨大な門や高い城壁が現れます。門は使用されておらず常に閉じているので、脇から集落に入りましょう。
城壁の向こうにはいくつかの塔がそびえていて、上の方には銃眼が開いています。このような要塞化された村を「クサル」と呼び、四隅に方形の塔が建っているのは、ベルベル人のクサルの特徴です。
アイット=ベン=ハドゥのおすすめポイント②:迷路のような道
世界遺産アイット=ベン=ハドゥの集落は、敵の侵入を最小限に防ぐため入り口が1つしかないのも特徴。集落内には細い小路がたくさんあり、まるで迷路のようになっています。建物を複雑に組み合わせて狭い迷路を作り、集落内で敵を迷わせると同時に、1人ずつしか通れないように工夫されています。
常に盗賊などの襲撃に備えなければならなかったアイット=ベン=ハドゥの集落。その迷路のような要塞化した村も、今では世界遺産の観光名所。クサル内にはカフェやお土産屋さんもありますよ。
アイット=ベン=ハドゥのおすすめポイント③:要塞集落の工夫
世界遺産アイット=ベン=ハドゥの集落にある建物は、粘土やワラなどを固めて日乾レンガにしたものからできています。厚いレンガを壁にすることで、暑い昼間は涼しく、寒い夜は暖かく過ごせるように工夫しているのです。一部には木材や竹も使われていて、湿気対策もバッチリ!3階建のカスパもあり、内部には住居や食糧庫などもありました。
村にはあちこちに穀物を保存しておく貯蔵庫と兼ねている見張り台も立っています。集落背後の丘の上には巨大なカスバ(城塞)になっていて、緊急時には村人をはじめ多くの人が立て籠もれるようになっています。現在は城壁と塔の一部が残るのみですが、ここからはアイット=ベン=ハドゥの集落や対岸の町場などを一望することができますよ。
アイット=ベン=ハドゥの注意事項
世界遺産アイット=ベン=ハドゥの村に入るときは小川を渡らなくてはなりません。川が増水しているときもあり、ズボンなど服が濡れてしまうこともあります。できれば着替えを持っていったほうが良いでしょう。また、小川を渡るときにわざと手をひいてチップを要求する人や、ドアを開けてお金を恵んでくれという人もいるので、注意してくださいね。
世界遺産アイット=ベン=ハドゥの集落対岸の町場には大型のホテルもありますが、夜間は今でも強盗に遭う危険があるので夜の外出は避けて下さい。
◎まとめ
モロッコのアトラス山脈の南側は、荒涼とした大地が広がる地域。かつては世界遺産アイット=ベン=ハドゥと同様のクサルやカスバが点在していました。今もその痕跡はそこかしこで見られますが、アイット=ベン=ハドゥはその残存状況の良さから、世界遺産に登録されたのです。
隊商交易の中継地として栄えたモロッコ南部の歴史と風土を知るためには、世界遺産アイット=ベン=ハドゥは打ってつけの観光名所といえるでしょう。