中国 - 黄山（屯渓）について

黄山は中国・安徽省（あんきしょう）の景勝地で、古代からたくさんの人が訪れていました。黄山を見ていないのに、山を見たといってはいけない、と人々にいわれるほどで、仙人が住んでいる世界を思わせる景色のために、ユネスコの世界遺産、世界ジオパーク、生物圏保護区に指定されています。
実際に、伝説上の王、黄帝がこの山で不老不死の薬を飲んで仙人になったという伝説があり、唐の時代には現在の名前で呼ばれていたようです。
氷河や風雨の侵食が1億年以上かけて、断崖絶壁の峰を作り出し、海からの湿った空気が流れ込むことで大量の雲や霧を発生させて、水墨画そのままの景色を作り出しました。多くの文化人たちがこの山に憧れて、水墨画や漢詩の題材になってきました。
・三大主峰
この山には数多くの峰がありますが、中でも有名な3つを三大主峰と呼んでいます。
3つの峰の中でもっとも険しいといわれているのが「天都峰」です。一昔前までは、歩道が整備されていなかったため、安全に登ることが難しかったのですが、現在は石段が整えられています。山頂には桃色の天然石や百丈のはしごなどの観光スポットもあるそうですから、興味深いですね。
天都峰と並ぶ高い峰が「光明頂」です。高さはあっても全体的には平らになっているため、頂上付近の日照時間が長いという特徴があります。11月から5月までは、日の出とともに雲海が見られることで有名です。東西南北をすべて見渡せるため、雲海の中からの日の出を見るのは忘れられない思い出になることでしょう。
天都峰と光明頂の間にあるのが「蓮花峰」です。垂直にそびえ立った峰には、険しく曲がりくねった道や、はしごを登るようにして進んでいかなくてはならない足場が続きますが、頂上の手すりや鎖には恋人たちがかけた南京錠がつけられていて、登っているときとは一転して、ロマンティックな雰囲気がただよっています。
・奇松
この山の松は、岩の割れ目のような過酷な場所に根を張って育ってきました。育つ環境が過酷なために、形が奇妙になり、奇松と呼ばれるようになったようです。
奇松は強い生命力を感じさせて、人々に尊ばれるようになりました。100本以上ある奇松の中で、有名な10本の松が黄山十大名松と呼ばれています。
中でも有名なのが「迎客松」です。樹齢800年、高さは10mと立派な松ですが、その枝ぶりが手を伸ばして、客を迎えているように見えることから、名前がつきました。お出かけの際には、ぜひやさしくお迎えをしてもらいましょう。
・怪石
この山にそそり立つ岩を怪石と呼んでいます。名前のついている怪石は1200個以上あり、間に歩仙橋という名前の橋がかけられている場合もあります。とても簡単な造りの橋なので、渡るときのスリルは例えようもありません。
有名なのは「飛来石」と「夢筆生花」です。
飛来石は飛んできた石がそのまま地面に落ちたように垂直に立っていますが、高さは12m、重さは60tの巨大な岩石がどうしてこんな姿で立っているのか、考えると不思議でたまらなくなってしまいます。
飛来石は、見る角度によって違う形に見えるのも面白いところです。桃のような形に見えたり、猿が海を眺めているような形に見えたりするそうです。
夢筆生花は漢詩にもよく登場する有名な怪石ですが、名前の通りに先が筆のようにとがっています。筆の先にあたるところに、1本の松が生えている様子も愛嬌があります。
・温泉
年間400tの源泉が出ているため、温泉がたくさんあります。中でも黄山温泉は、消化、心血管、神経痛のほか新陳代謝の促進にも効果があるので、登山の疲れを充分に回復できるでしょう。湯の温度は42℃と少し高めですが、冬は露天風呂（水着を着て入る形式です）の周りが雪景色になるため、ちょうどよいと温度だと評判です。この温泉は硫黄臭がまったくなく、飲泉が可能です。直接口をつけて飲んでいる人がいるほどです。
・寺院
もともと道教や仏教の修行の場として、多くの寺院が建てられましたが、中でも「雲谷寺」は最初に建てられた、由緒のある仏教寺院です。入り口の周りを彫刻された石が取り囲み、林のようになっている様子はまさに奇観で、見る人に強い印象を与えます。ケーブルカーが出ているのも雲谷寺なので、上手に利用して観光を楽しんでくださいね。
・余裕を持って黄山を楽しむために
広い黄山を1日で回るのは大変です。多くの人は近くのホテルに泊まり、日の出から日没まで美しい景色を楽しみます。市内中心部にはたくさんのホテルがあります。近代的でゴージャスなホテルから、伝統的な中国の建物を利用したホテルまでがそろっているので、好みによってえらんでください。また、山の麓にもホテルがあります。宿泊すれば、ホテルでも美しい景色を堪能できるでしょう。