中国 - 敦煌について

敦煌は、中国甘粛省北西部の市で、かつてはシルクロードの分岐点として栄えたオアシス都市です。古くから中国と遠くローマまで続く西域との出入り口となっていました。
紀元前には、匈奴に支配されていましたが、河西回廊(現在の甘粛省)を漢が制圧するようになると、漢の西域統治の中心地となり、西域との交易が始まりました。
敦煌を通って、西方からはぶどうなどの農産物や馬が運ばれ、漢からは絹が運ばれて行きました。
漢にとって、経済や軍事における重要な拠点しての役割を果たしてきました。
その後、王朝が変わっても、西域との玄関口としての重要な役割に変わりはありませんでしたが、元代になり、中国と西方を結ぶルートがシルクロードから南方の海に変わると徐々に衰退して行きました。
しかし、1900年にこの土地の道士によって、莫高窟から大量の文献が発見されると、イギリス、フランス、ロシア、ドイツ、日本、アメリカから次々に探検隊が訪れ、文献を持ち帰り、研究するようになり、その学問的価値が見出され、再び注目されるようになりました。
莫高窟は、1987年に世界遺産に登録されています。
砂漠、オアシス、ラクダと、かつて栄えたシルクロードの風景が今も再現される郊外は、魅力的な観光資源となっています。

敦煌の気候は、中国の内陸部に位置し、高い山に隔てられているため、海洋気流の影響を受けにくい大陸性乾燥気候です。
年平均気温は9.3℃、7月の平均気温は24.7℃で、年間を通して乾燥しており、降水量は少なく、昼夜の気温差が大きいのが特徴です。
夏は緯度の割に温暖な気候になりますが、冬の寒さは厳しく、気温は氷点下まで下がります。


古代東西の文化の交流地点である敦煌は、エキゾチックなロマンあふれる都市として、観光客に人気です。その中でも、人気の高いいくつかの見どころをご紹介しましょう。

・莫高窟

敦煌市の郊外にある仏教遺跡で、『千仏洞』、『敦煌石窟』とも呼ばれています。
敦煌市の東南25キロメートルに位置する『鳴沙山』の東の断崖に掘られた洞窟です。
４世紀から約1000年もの間、彫り続けられ、南北1600メートルの間に彫られた大小492の石窟の中には、2400余りの彩色塑像と総面積45000平方メートルにもなる壁画が保存されています。
1900年には『敦煌文書』と呼ばれる学術的に価値の高い文書が発見され、世界からの注目を浴びるようになりました。
仏教美術としては、世界最大規模を誇り、1987年にユネスコの世界遺産に登録されました。
暗い石窟の中に鮮やかな色彩の残る壁画や仏像が並ぶ姿は圧巻です。

・鳴沙山

敦煌の市内から南へ5キロメートルほどのところにある砂山です。
東西の長さは約40キロメートル、南北の幅は約20キロメートルと巨大で、元々は『神沙山』と呼ばれていましたが、風に吹かれると音を立てるので、『鳴沙山』の名が付きました。
史記にも「天気が良いと音楽を奏でているようだ。」との記述が見られます。
ラクダに乗ってこの辺りを巡れば、砂漠での観光が一段と盛り上がること間違いなしです。

・月牙泉

敦煌市郊外の南5キロメートルほどのところにある砂漠のオアシスです。
長い年月のうちに三日月型の池となりました。
『月牙泉』の名は、清代から使われ始めました。
『月牙』は中国語で三日月を意味しています。
背後にある『鳴沙山』とともに、いかにも砂漠のオアシスらしい情緒ある風景が楽しめます。

・玉門関

敦煌市の北西約90キロメートルのところに位置するシルクロードの関所のひとつです。
ここより南にある漢代に建てられた陽関と合わせて『二関』という呼び方もされています。
漢代と唐代に２度に渡り、建てられましたが、現在もその姿を留めているのは、唐代に建てられたものだけです。
かつては西域交通の要として栄えましたが、宋代に入って西域交通が衰えると、廃れて行きました。
古代から文化人たちが辺境でもの思いにふけり、詩を詠む場所でした。
古代シルクロードに思いを馳せることのできる遺跡です。


敦煌での宿泊は、空港、鉄道、莫高窟など観光へのアクセスもよい敦煌市の中心部に泊まるのがおすすめです。
ホテルが多く密集しているので、探しやすい場所です。


敦煌市は急速に経済が発展したため、貧富の差が激しく、犯罪も多発しています。
街歩きの際には、スリや置き引きに注意するのはもちろんのこと、日本語で話しかけてくる怪しい誘いには乗らないよう、充分に気をつけましょう。