歴史の常識を覆した集落遺跡!世界遺産「ランス・オ・メドー国定史跡」

画像出典:George Burba

歴史の常識を覆した集落遺跡!世界遺産「ランス・オ・メドー国定史跡」

アメリカ新大陸を発見したヨーロッパ人といえば?と聞かれたら、たいていの人はコロンブスと答えるでしょう。ですが近年では、コロンブスからさかのぼること約500年も前に、大西洋を越えてアメリカ大陸に到達した人たちがいたことがほぼ確実視されています。その根拠の1つとなっているのが、今回ご紹介するカナダの世界遺産「ランス・オ・メドー国定史跡」なのです。こちらでは、そんな歴史の定説を覆すほどの重要な遺跡となった世界遺産ランス・オ・メドーについて解説します。

目次

歴史の常識を覆した集落遺跡!世界遺産「ランス・オ・メドー国定史跡」

ランス・オ・メドー国定史跡とは?

ランス・オ・メドー 国定史跡

出典: Russ Heinl

カナダの東に位置するニューファンドランド島。日本の本州の半分ほどの面積を持つこの島の北端近くに、ランス・オ・メドー国定史跡があります。1960年に、ノルウェーの探検家ヘルゲ・イングスタッドと彼の妻で考古学者のアン・スタイン・イングスタッドによって発見されました。発掘調査によって8つの建物跡や溶鉱炉の跡、鉄器などの道具類のほか、ノルウェー様式の住宅の特徴を示すものも多数発見されました。さらにコロンブスの時代よりはるか昔のバイキングの鉄釘が見つかったことで、コロンブスがヨーロッパ人初のアメリカ大陸発見者とする説に疑問が呈されたのです。

中世アイスランドに伝わる叙事詩サガによれば、アイスランドを経てグリーンランドに入植していたバイキングのレイフ・エリクソンが、997年に西方への探検航海に出たとされています。そして彼は「ブドウの地」ないし「草原の地」と訳される「ヴィンランド」を発見し、そこに上陸拠点を建設しました。それまで伝説に過ぎないと考えられていた「ヴィンランド」が、ランス・オ・メドーの発見によりにわかに注目されることになったのです。

サガによれば、エリクソンの帰還後に入植が図られ、150人の男女がエリクソンの宿営地に移り住んだとされています。しかし、バイキングが「スクレリング」と呼ぶ先住民族との間で争いが起こり、それが原因でわずか数年で入植地は放棄されることになりました。こうしてヨーロッパ人による最初のアメリカ新世界定住の試みは失敗に終わり、探検の物語も集落跡も人口に膾炙することなく埋もれていきました。その集落がランス・オ・メドーであったと確定できる材料はありませんが、一連のバイキングの入植に関連する遺跡であることは間違いありません。

アメリカ大陸の歴史にとって重大な発見となったこの地は、1978年に登録された12件のユネスコ世界遺産第1号のうちの1つとなりました。

ランス・オ・メドー国定史跡へのアクセス

世界遺産ランス・オ・メドー国定史跡の最寄り空港は、ニューファンドランド島北部のセント・アンソニー空港です。オタワやトロント、モントリオールなどを経由して目指しましょう。

セント・アンソニー空港からセント・アンソニーの市街地までは、シャトルバスで約45分ほどで到着します。市街地からランス・オ・メドー国定史跡への公共交通機関等のサービスはなく、レンタカーやタクシーなどで向かうことになります。カナダの大自然を堪能しながら、約45分のドライブを楽しみましょう。運転が心配な人は、現地ツアーなどを申し込むと便利ですよ。

ランス・オ・メドーの周辺に街はありません。現地は史跡公園として整備されているものの、飲食店などはないので食べ物や飲み物はある程度持参していきましょう。近くにはバイキングの名を冠した簡単な宿泊施設が集まっているエリアがあるので、泊りがけでゆっくり観光することも可能です。

ランス・オ・メドー国定史跡のおすすめポイント

1. 復元された住居

ランス・オ・メドーの集落跡は、緩やかな弧を描くアイランズ湾の穏やかな入り江に面しています。南北に細長い集落には、鍛冶場や船作りに欠かせない製材所など、少なくとも8つの建物跡が見つかっています。

このうち数件の建物が、柵に囲まれた区画として推定復元されています。木枠を組み、泥炭を積み重ねた壁に草で葺いた屋根の家々に、未開の地に入植した勇敢な人々の暮らしぶりがうかがえるでしょう。その他の遺跡も説明板付きで地表復元されていて、コロンブスに先立つこと500年も前にアメリカ新世界に降り立った人々に思いを馳せることができます。

2. 南の丘

世界遺産ランス・オ・メドー国定史跡の南側には、なだらかで広い岩の丘があります。とくに名前は付いていないようですが、この丘の周囲には遊歩道が整備されていてぐるっと1周できるほか、途中には小さなビジターセンターもあります。

その脇から丘に登ることができ、頂部からはちょうど良い角度でランス・オ・メドーの集落跡と入り江を一望することができます。見渡す限りの草原と海の間にわびしく佇む集落跡。この景色を見れば、きっとさまざまな感慨が去来することでしょう。

3. バイキング村

出典: André Carrotflower (CC BY-SA 2.0)

世界遺産ランス・オ・メドー国定史跡の近くには、バイキング村(Norstead, A Viking Village and Port of Trade)と呼ばれる観光客向けのスポットがあります。ここでは、ランス・オ・メドーに入植した頃のバイキングの住居や教会、船などが再現されていて、当時の生活をうかがい知ることができます。

遺跡発掘の様子も紹介されていて、バイキング村で予習をしてからランス・オ・メドー国定史跡を見学すれば、より理解が深まるでしょう。年齢ごとに異なる教育プログラムやグループツアー、編み物やキャンドル作りなどの体験も用意されているので、子供連れのご家族でも楽しめる観光施設です。

◎まとめ

カナダが誇る世界遺産ランス・オ・メドー国定史跡についてご紹介しました。バイキングの言い伝えを信じ、中世の叙事詩に登場する伝説の地を探した探検家夫婦によって発見された集落遺跡は、夢とロマンを実現しただけでなく、世界史の常識を塗り替える歴史的な発見となりました。カナダの自然と共に、世界遺産ランス・オ・メドー国定史跡をぜひじっくりと観光してみてください。

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