フランス - ルルドについて

ルルドは、スペインの国境にも近いフランス南西部の街です。ルルドはピレネー山脈のふもとに位置し、オクシタニー地方のオート＝ピレネー県にあります。首都パリは800km以上も北上しなければなりませんが、スペインならビルバオまで西に300km、あるいはバルセロナまで南方に400kmとパリまでの半分以下で、いかに隣国寄りであるかが分かります。オート＝ピレネーの中心はタルブという人口4万人ほどの都市ですが、そこから南西にあるルルドはそれよりずっと少ない1万人ほどの街でありながら、昔からその名を世界に知られていました。
この辺りは年間を通して雨が多いところです。7月から9月中旬頃まで続く夏は30度前後と過ごしやすく、晴れ間も広がり観光にはぴったりの季節ですが、冬は氷点下に達する勢いではないものの気温は低く寒い日が続きます。
ルルドは聖母マリアの街として有名です。巡礼地として街そのものがランドマーク的存在となっており、年間600万人の巡礼者や観光客が訪れています。ことの始まりは1858年、薪拾いをしていた文盲の少女の前に現れた聖母が無原罪の御宿りであるとされたことから、国内外のキリスト教徒にとっては巡礼の聖地となるに至っています。また、そうでなくともこれだけ知名度の高さを誇っているとあって訪れる人が絶えません。これまでに数々の奇跡を起こしたとされ、多くの観光客、巡礼者の中には様々な病を抱える人も少なくなく、車椅子やボランティアに手を引かれる人の姿もよく見られます。少女の前に現れ続けた聖母のお告げから泉が湧き出ただけでなく、この泉の水を飲み病が治った人が現れたことで奇跡のシンボルともされてきました。泉がある洞窟やその上に建つ聖堂に向かうのはフランス人のみならず、世界130カ国から訪れる人々で、ルルドの街にはパリにも負けず劣らずといえるほどの宿泊施設が存在するのもこのような事情からです。
巡礼だけでも十分成り立つほどのルルドではありますが、ピレネー山脈の麓にあり、豊かな自然や美しい景色を楽しめる、フランスのどこにでもあるような一面も持つ場所です。聖地とされるずっと以前から人々が暮らしてきたところらしく、ルルド城も街の代表的建造物の一つとなっています。中世にタイムスリップしたような城塞に囲まれており、生活様式や文化を垣間見ることができる博物館はぜひ訪れたいところです。高台にあり、ここから目にするルルドの景色もまた素晴らしいものです。
ここに暮らす人々が通う、普段の生活にとけ込んだ街の教会も挙げられます。街にはいくつかの教会がありますが、足を踏み入れると光に照らされるステンドグラスが美しいサクレクール教会もまた、ルルドの聖母が姿を見せた薪拾いの少女ベルナデットとの関わりがある場所で、ここで洗礼を受けたとされています。聖地を堪能した後に、賑わいから離れてゆっくり街歩きを楽しみつつ訪れることができるので、寄ってみるとよいでしょう。
巡礼の地だけのために訪れる人が圧倒的に多いルルドですが、街から少し離れたピック・ドゥ・ジェールと呼ばれる山もランドマークとして押さえておくに値します。ケーブルカーで山頂まで行けば、ルルドの街が一望できるというだけでもぜひ足を運んでみたくなりますし、お天気がよければこの辺りでハイキングも楽しめます。巡礼者で混雑している場所を訪れた後は、街からはずれて1日ぐらいゆっくり自然を満喫して息抜きする時間があってもいいものです。
日本から訪れる場合には、大抵パリから乗り継いでポー・ピレネー空港へ、そして陸路を使い1時間ほどで行くことになります。聖地ルルドは巡礼が目的ではなくても、観光地としておすすめの場所であることは間違いありません。ただし、ひと通り聖地を体験できたというなら、ゆっくり街歩きをすることもおすすめします。せっかく鉄道、あるいは飛行機でルルドまで時間をかけてやってくるのですから、街の雰囲気を満喫してみましょう。ポー川周辺は雰囲気もよいですし、ぶらり散策にはもってこいの場所です。小さな街ではあるものの、ランドマークはある程度離れているので全てを徒歩で回るのは無理ですが、街観光の合間に川沿いをひと歩きできるぐらいの時間は取りたいものです。ルルドの街はこじんまりとしていますから、せかせかと足早に観光するようなペースではなく、カフェで一服するぐらいでちょうどよいでしょう。