イタリア - ピサについて

ピサは、イタリア共和国中部のトスカーナ州にある人口90,000人の県都であり、天文学の父とされる「ガリレオ・ガリレイ」やフィボナッチ数列で知られる「レオナルド・フィボナッチ」などの出身地としても知られる県都です。この県都は、「ガリレオ・ガリレイ国際空港」を有するだけでなく「ピサ=ラィア=ジェノバ線」や「レオポルタ」など3路線が乗り入れているハブ駅であり、「アウストラーダA12」や「アウストラーダA11」など複数の高速道路が整備されている交通の利便性が高い都市です。この県都は、古代から交易都市や海洋国家として繁栄してきた古都なので旧市街や大聖堂などの歴史的建造物が数多く残されており、特に世界遺産「ピサのドゥオモ広場」の「ピサの傾斜」は世界的にも有名なランドマークとなっています。ピサの斜塔は、ピサ大聖堂に併設されている高さ55.86mの8階建ての鐘楼であり、1173年の施工後3階に高さ10mに達した頃から不均一な地盤沈下が発生するとともに鐘楼が傾き始め、1372年の竣工までに傾斜を修正することができず現在に至っている鐘楼です。この斜塔は、2009年まで世界で最も傾いている建造物としてギネスに認定されていましたが、現在では約5.2度傾いているドイツニーダーザクセン州の「ズールフーセンの斜塔」が世界で最も傾いている建造物とギネスに認定されているのが現状です。ピサの斜塔は、1990年〜2001年まで傾斜角度是正工事により傾斜角が約3.99度まで是正されましたが、工事実施以前は傾斜角約5.5度とズールフーセンの斜塔よりも傾いており世界一の斜塔でした。傾斜は、この鐘楼の建設地の土壌が近くを流れる「アルノ川」が運んできた砂礫や粘土が不均一に混合されていたことから発生した不均一な地盤沈下が原因ですが、不均一な土壌の柔らかさと鐘楼自体の堅牢な構造が地震などの振動共鳴を抑制する効果があるとされています。そのため、この鐘楼は4度の大きな地震で倒壊することなく現在に至ることができました。ピサのドゥオモ広場には、ピサの斜塔以外にも街を代表する教会堂「ピサの大聖堂」と「洗礼堂」及び墓所「カンポサント」などの世界的にも貴重な建造物があり、斜塔の東側にはドゥオモ広場の建造物の歴史的資料や遺物が展示されている「附属美術館」があります。ピサの大聖堂は、「1063～1118年」と「1261～1272年」2期60年以上の長期にわたって建設された大聖堂であり、ピサ首座大司教座建設組織によればピサの斜塔を設計したイタリアのブスケットが設計しています。この大聖堂は、11世紀〜13世期にかけて西ヨーロッパで主流となっていたロマネスク様式を基本設計としていますが、古代ローマの文化とキリスト教やイスラム教の文化を融合したビザンティン文化の影響が随所に見えるのが特徴です。この大聖堂は、従来の大聖堂とは異なり異なる色の大理石パネルをファサードに用いるだけでなく、ブスケットの後任となったライナールドは大聖堂の2階以上の外壁部分を白と黒の大理石で化粧張りとすることで白く浮き上がる様なイメージを与えています。聖堂内は、ピサが海洋国家だったのでイスラム教の影響を大きく受けたピサロマネスク様式で荘厳かつ絢爛な内部装飾が施されるとともに降り注ぐ光に照らされる列柱廊がより長く感じられ、側廊には私財を投げ打ち全ての人に祝福されたパンと聖水を与え続けた「聖ラニエリ」の遺骸をおさめたガラス製の棺が安置されています。洗礼堂は、大聖堂の西側に建設されているオレンジ色のとんがり屋根が印象的な建造物であり、ディオティサルヴィの設計で1152年に着工するとともに14世紀後半からチェッリーノ・ディ・ネーゼが指揮して約200年で完成させました。洗礼堂は、円周約107mで高さはピサの斜塔と同じ約55mあり、中央の洗礼台を囲む様に白大理石の列柱が配されています。洗礼堂は、従来4角形の説教台を6角形の各角に大理石の円柱を配しただけでなく中央にも円柱を1本配し、6角形の説教台上部には階段をかける面以外の5面に「三賢王の礼拝」や「最後の審判」などの緻密な彫刻が施されています。カンポサントは、1203年の第4回十字軍遠征の際に聖地エルサレムのゴルゴダの丘から土を搬入してジョバンニ＝ディ＝シモーネの設計で建設されたとされ、並列して建設されているロマネスク様式の真っ白かつ真っ直ぐ続く大理石の回廊には圧倒される墓所です。カンポサントは、竣工時には真っ直ぐ続く大理石の回廊にも美しいフレスコ画が描かれていましたが、現在では付属美術館で見学することができます。ピサは、世界遺産だけでなく「サント・ステファノ・デイ・カヴァリエーリ教会」や「メディチ宮殿」など歴史的観光スポットが多いだけでなく、移動時間が短いので効率的に観光できる都市です。