イタリア - アンコーナについて

アンコーナはイタリア中部のアドリア海沿岸にある港湾都市で、人口は約10万人ほどです。沿岸の形状が肘に似ているため、ギリシア語でアンコンと呼ばれていたのが都市名の由来になりました。アドリア海に面しているので気候が温暖で、冬でも雪が降ったりすることはほとんどなくオリーブやレモンなどの栽培も行われています。夏は30度を超える日も多くて、イタリア全土やヨーロッパ各地から海水浴に訪れるバカンスの客でビーチが賑わい、ハイシーズンになると砂浜にはデッキチェアがずらりと並びます。アドリア海は気候が安定しているので春や秋も過ごしやすく、アンコーナはゆったりと休暇を過ごしたい富裕層にも人気があるエリアです。アンコーナは街の起源がギリシャ時代までさかのぼることができる歴史ある街で、紀元前390年頃、古代ギリシャ植民都市シラクーザによって建設されたと言われています。街のランドマークにもなっているサン・チリアコ大聖堂は、当時アクロポリスがあった場所がその後イタリアの神殿となって、アンコーナの聖キリアクスに捧げられました。灰色の石を使ったギリシャ十字型のロマネスク様式の建築で、中央には12角形のドームを持っています。サン・チリアコ大聖堂は街の中心的存在で、地元の住民からも親しまれていて観光客も必ず訪れるランドマークです。アンコーナはギリシャとローマが交わった歴史を感じられる街で、古代ギリシャや古代ローマにちなんだ名所がたくさんあります。ローマ帝国がアドリア海港に接近する船の目印として作った、大理石製のトラヤヌス帝アーチもそんな見どころの一つで、114年または115年に港を作った皇帝を讃えて建造されました。高さは18メートルあって、当時は青銅でできた豪華な装飾が施されていましたが、現在は残念ながらほとんどが失われています。近隣エリアの中でも優れたローマ時代の遺跡として知られており、考古学的な意味合いも持ちます。モーレ・ヴァンヴィテッリアーナは、アンコーナに寄港する船舶が運んでくる外国の伝染病などから街や船員を守るために作られた軍事防衛幹部の組織で、ラッツァレットとも呼ばれています。1732年に建築家ルイージ・ヴァンヴィテッリが考案した5角形の建物は、軍事病院や兵舎として利用されたりした後に現在は文化展示が行われていて、観光客も入ることができます。アンコーナには教会も数多くあり、中でもヴェネツィア・ゴシック様式の素晴らしい扉口が特徴のサンタゴスティーノ教会や、5世紀と6世紀に作られた2つの教会をベースにして13世紀に新たに建てられたサンタ・マリア・デッラ・ピアッツァ教会は必見です。ロマネスク様式のサンタ・マリア・デッラ・ピアッツァ教会には当時のモザイク画も残されていて、地下に入ると見られます。アドリア海への入り口であるアンコーナは港として栄えた時代もあるので、港の設備を見学するのも面白くて、豪華客船や各国のクルーズ船が停泊しているのを見ることができます。造船所もあり、街の経済に貢献しています。イタリア各地やアドリア海の対岸にあるクロアチア方面を結ぶフェリーも運航しているので、港は常に人々で賑わっていてお土産を買ったり軽食が食べられる店もたくさんあります。アンコーナの港は中世時代にはビザンチン帝国の支配下にあり、その後は自由都市として発展しましたが16世紀中頃からは教皇庁の支配を受けるようになりました。現在もかつての名残を見ることができ、随所に歴史的な彫刻やラテン語、ギリシャ語などの跡が残されています。アンコーナの住民がピアッツァ・ディ・パパという名称で親しんでいるプレビシート広場は、現在の県庁舎になっている16世紀のコヴェルノ館や図書館、カフェやレストランなどがある活気のあるスポットです。プレビシート広場の奥には階段があり、上には18世紀にローマからアンコーナへの外港を築いた教皇クレメンス12世の像が設置されています。その奥にはサン・ドメニコ教会があって、内部にはグエルチーノの受胎告知やティッツィアーノの十字架磔刑図(じゅうじかたっけいず)などイタリアの名画が展示されているので、絵画に興味があるなら立ち寄ってみましょう。街の中心部にはガリバルディ通りとマッツィーニ通という2つの道が並行していて、どちらもブランドの路面店やレストラン、カフェが並ぶおしゃれな通りです。アンコーナに来たら散歩コースとして必ず立ち寄りたい人気のエリアです。