名称:シュリー=シュル=ロワールとシャロンヌ間のロワール渓谷
(The Loire Valley between Sully-sur-Loire and Chalonnes)
公式・関連サイトURL:https://whc.unesco.org/en/list/933/
フランス最長のロワール川流域には、華麗な宮廷文化が育まれた古城が点在しています。美しい田園風景と調和した古城の文化的景観は、「フランスの庭園」と称えられ、人々を魅了しています。
それらのうちシャンボール城はすでに1981年に世界遺産に登録されていましたが、2000年にロワール川流域一帯の城館と景観が、「シュリー=シュル=ロワールとシャロンヌ間のロワール渓谷」として登録されました。ロワール川の渓谷に豪奢な宮殿やお城が次々と現れるこの地域は、観光大国フランスでもとくに人気のエリアの1つとなっています。
目次
【世界遺産】シュリー=シュル=ロワールとシャロンヌ間のロワール渓谷
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「シュリー=シュル=ロワールとシャロンヌ間のロワール渓谷」とは?
フランス随一の大河であるロワール川は、古くから交易路として利用され、流域には多くの街が建設されました。それにともなって防衛施設としての城砦も数多く築かれるようになり、その数は300を超えるといわれています。
ロワール川流域を押さえることは、フランスを支配するうえでとても重要であるため、ロワール渓谷の城館はしばしば歴史の表舞台に登場します。たとえばジャンヌ・ダルクが王太子だったシャルル7世に謁見したシノン城やロシュ城、16世紀初頭のフランス王ルイ12世が居城としたブロワ城などは、いずれも世界遺産に含まれています。
16世紀以降フランスの国土が安定していくと、ロワール川流域の防衛拠点としての役割は薄れていきました。代わって、ルネサンスの興隆と共に外観の美しさを重視した城館が建てられるようになります。17世紀にヴェルサイユ宮殿が建設されると、ロワール渓谷は王侯貴族の保養地としての側面がますます強くなり、現在に残る世界遺産の風景が育まれていきました。
「シュリー=シュル=ロワールとシャロンヌ間のロワール渓谷」へのアクセス
世界遺産ロワール渓谷に点在する古城を巡るには、トゥールからのバスツアーに参加するのが効率的です。トゥールまでは、パリのモンパルナス駅から特急TGVで約1時間。トゥールの観光案内所では、ロワールの主な城館のチケットが購入できます。
個人で巡る場合には、まずブロワ駅に向かうのがおすすめ。パリからも近く、駅から徒歩10分のところにブロワ城があります。ブロワとトゥールの間は、快速列車TERで約30分です。
多くの古城は駅からはやや離れていて、バスやタクシーを利用する必要があります。他方で、ランジェ城やソミュール城など、鉄道駅から徒歩でアクセスできる古城もあります。
ロワール渓谷のおすすめポイント①:シャンボール城
ロワール川の古城のなかでも壮大なスケールを誇る白亜のシャンボール城は、1519年にフランス王フランソワ1世の命により建てられました。狩猟好きだったフランソワ1世は、森の中にもともとあった小さな狩猟館を、ルネッサンス様式の豪華な宮殿に作り替えたのです。総敷地面積5500haの広大な敷地と、幅156m・奥行き117m・部屋数440という巨大な館の規模に圧倒されます。
見どころはたくさんありますが、とくに目を引くのが建物中央にあるランタン塔の「二重螺旋階段」。日本でいうところのさざえ堂のように、上る人と下りる人がすれ違わないようになっています。この階段を設計したのは、フランソワ1世の庇護を受けていたレオナルド・ダ・ヴィンチではないかという説があります。
ロワール渓谷のおすすめポイント②:シュノンソー城
シュノンソー駅前から長い長いプラタナスの並木道を抜けると、美しく佇む城館が見えてきます。フランス・ルネッサンスの珠玉と呼ぶにふさわしい名城で、歴代6人の城主が女性だったため「女主人の城」とも呼ばれています。なかでもこの城をめぐる、アンリ2世の愛妾ディアーヌ・ド・ポワチエと王妃カトリーヌ・ド・メディシスの確執は有名です。
お城と庭園の美しさはいうまでもありませんが、この城の大きな見どころといわれているのが、シェール川をまたいでかかるアーチ橋です。橋というよりは川の上に宮殿が建てられているといった感じで、川面に白壁が反射するさまは優美のひとこと!その先にある別塔には、18世紀の城主デュパン夫人によって開かれた文芸サロンの部屋があり、モンテスキューやヴォルテールなど当時の一流文化人の社交場となっていました。ジャン・ジャック・ルソーもその1人で、デュパン夫人の息子の家庭教師としてしばらくこの地に滞在し、その間に教育論『エミール』を執筆しました。
ロワール渓谷のおすすめポイント③:ブロワ城
ブロワの街の高台には、ケルト語で「オオカミ」の意味をもつブロワ城があります。1429年、イングランド軍に包囲されていたオルレアンを救うために出陣したジャンヌ・ダルクは、この城でランス大司教から祝福を受けました。また、16世紀初頭のフランス王ルイ12世は、ブロワ城で生まれています。
13~17世紀にかけて度々増改築されているため、ゴシック様式・ルネッサンス様式・古典様式と各時代の建築様式が混在していて、「建築の博物館」とも呼ばれています。なかでも16世紀前半に造られたフランソワ1世翼棟にある八角形の螺旋階段は、ルネッサンスの傑作と称されているんですよ。歴史的にも建築デザインの面でも重要な世界遺産のお城です。
◎世界遺産「シュリー=シュル=ロワールとシャロンヌ間のロワール渓谷」まとめ
世界遺産に登録されたロワール渓谷にある古城は、フランス史において経済的にも文化的にも重要な役割を担いました。栄枯盛衰を繰り返しながら今に至る、美しくも悲しい物語を秘めたロワールの古城は、悠久の歴史を感じさせてくれる場所です。