日本にいる限りは、映画やドラマなどでしかほとんど見ることのないチップの習慣。ですが海外旅行では、行き先の国や地域によっては外国人旅行客もチップを払わなければなりません。どんな時に必要なのか、いくらぐらい払えばいいのか、またどうやって渡せばいいのかetc...慣れない日本人には疑問や不安がいっぱいです。そこでこの記事では、チップのある国ごとにどのように対処したらよいのか解説します。
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日本人にはなじみのないチップ。海外旅行で戸惑わないよう解説します!
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チップとは

チップはもともとヨーロッパで発達した習慣です。英語の"tip"の語源は定かではありませんが、たとえばドイツ語では"Trinkgeld(トリンクゲルト)"といい、英訳するなら"drinkmoney"となります。つまり、良いサービスをしてくれた人に「これで一杯やってくれ」とお小遣いを手渡していたところから始まったものです。
それが今では暗黙のルールとなっていて、とくに飲食店の給仕やホテルのベッドメイキング係などにとっては重要な収入源となっています。こうした職業は基本給が低く抑えられているので、チップの有無は生活に直接響いてしまうのです。
日本でも、かつては茶代や心付けという呼び方で似たようなシステムがありました。今でも、旅館の客室係員に気持ち程度のお金を包んで渡す人もいます。またタクシーで「お釣りは要らないよ」というのも近い考え方といえますが、どちらかというと小銭を受け取るのが面倒だからという動機が多いので、厳密にはチップとはやや異なります。
チップはあくまでサービスに対する気持ちとして支払うのが前提。サービスが良ければ多めに、悪ければ少なめに渡すものですが、慣れないうちは一律型通りの金額で構いません。
チップの習慣がある国や地域
チップはヨーロッパで根付いている文化なので、欧米の国々で一般的です。ほかにも近年まで英領だった香港でも、チップの習慣が残っています。ただしいずれの国でも、請求書にサービス料が含まれている場合は、改めてチップを支払う必要はありません。
また、本来チップの伝統はありませんが、タイやインドネシアなど東南アジアの国々でもチップが期待されている場合があります。
チップが必要な場合とおおよその目安
チップがある国で共通している支払いが必要なシチュエーションは、ホテルとレストラン、そしてタクシーです。相場は国によって微妙に異なりますが、固定的というわけでもないのでおおよその目安で以下にまとめてみます。
◆ホテル
ホテルでチップが必要になるのは、基本的にベッドメイキングとルームサービス、そしてベルボーイに荷物を運んでもらったときです。目安としては、1回のサービスにつき1ドルないし1ユーロかそれに類する金額を、手渡しするか枕元に置いておきましょう。連泊する場合は、清掃の担当者は毎日同じとは限らないので、1日ごとにチップを用意してください。
ルームサービスでは、料金の10~15%程度が一般的です。ほかにもコンシェルジュやフロントに予約などの労をとってもらったときにも、内容にもよりますが日本円で1000円ほど心付けをした方が良いでしょう。
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◆レストラン
給仕に対しては、ランクの高いレストランであれば食事代金の1割ほどが相場です。それ以外の飲食店やカフェなどでは、端数を切り上げてキリの良い金額を渡せば大丈夫です。その際に「I don't need change」などと添えるとはっきりとした意思表示になりますが、たいていは「Thank you」だけでもチップ込みだということは伝わります。お釣りの額が少なくなりすぎるようなら、小銭を余分に足せば何も言わなくてもチップだと分かります。
クレジットカードで支払う際は、請求書の下にチップの記入欄があります。ここに渡したいチップの額を書き込んでサインすればOKです。
◆タクシー
タクシーの運転手には運賃の10%程度を上乗せし、キリの良い額にして渡すのがスマート。
トランクに荷物を入れてもらったときなどは、少し多めに見積もりましょう。
各国のチップ事情
上述の3つの職種は、チップのある国では共通して必須ですが、ほかにも国や地域によってチップが求められる場合があります。
◆アメリカ

アメリカやカナダでは観光ツアーに参加することも多いと思います。観光バスの運転手にも1ドル程度のチップを渡しましょう。また、運転手がツアーのガイドも務めていることも多く、その際にはチップも5~10ドル程度にはずむとベターです。公共のバスや大型シャトルバスなどの場合は不要ですが、ホテルや空港への無料バスでも、運転手には1ドルほどチップを上げましょう。
またアメリカでは、美容院でもチップが必要です。担当してくれた美容師さんに、料金の10~15%くらいのチップを渡してください。
◆ヨーロッパ

ヨーロッパではトイレを利用するのにチップな必要ということが珍しくありません。そもそも料金を払わないと使わせてもらえないトイレもたくさんあります。
ショッピングセンターや飲食店のトイレでは、清掃の係員が入り口に座っていることがあります。その際は日本円で数十円程度のチップを渡しましょう。係員がいない場合でも、お皿が置いてあればそこにチップを置きます。
ちなみにチップが必要だからといって、無料のトイレより特段きれいというわけでもありません。また多めに渡したからといって、係員に愛想よくしてもらえる可能性も高いとはいえません。
◆香港

近年までイギリスの統治領だった香港には、中国では例外的にチップの習慣が残っています。とはいえ基本的に必要なのは西洋風のホテルや高級レストランのみで、中華寄りの料理店やタクシーなどでは不要です。
レストランでもサービス料は料金に含まれているので、お釣りを切り上げる程度で十分。またホテルでトイレを借りる際にチップを渡した方が良い場合もあります。
◆東南アジア

出典: YakobchukOlena / PIXTA(ピクスタ)
タイやインドネシアでも、ホテルや高級レストランでは、50バーツ札ないし100バーツ札をチップとしてあげると良いでしょう。またタクシーでも、端数を切り上げてお釣りを断れば、小銭も増えないですし相手も喜びます。
東南アジアで独特かつ重要なのは、マッサージやスパでチップが必須だという点です。マッサージの施術師の給料は欧米の給仕などと同じく、チップ込みで安く設定されています。なので施術後に満足度に応じて50バーツないし100バーツを手渡してあげましょう。
チップがある国での注意点
日本人にはなじみのない習慣だけに、困惑してしまったり、トラブルの種になってしまうこともよくあります。
せっかくの海外旅行で嫌な思いをしないように、いくつか注意点をまとめます。
◆お金の出しっぱなしに注意
チップのある国では、ホテルの部屋に金銭を出しっぱなしにしておくと、金額にかかわらずベッドメイキングの際にチップとして持って行かれてしまう可能性があります。
そうでなくても、外国で現金をみだりに出すことは控えるようにしましょう。
◆公務員に渡す必要はない
いくら気持ちの良いサービスを受けたからといって、たとえば公立劇場の案内係や公共バスの運転手などの公務員にチップを渡す必要はありません。日本を含め国によっては、公務員に規定外のお金を渡すことは贈賄と受け取られてしまい、犯罪行為とみなされかねません。
◆少額の貨幣で払うのは失礼
チップをコインで渡すのは失礼という記事をしばしば目にしますが、必ずしも硬貨だからダメということはありません。日本には500円玉という決して少額とはいえない硬貨があるように、お金の事情は国によって異なります。
ただし、あまり小さすぎる貨幣をチップにするのはやめましょう。1円玉や5円玉の混ざったチップを貰ったら、おそらく気持ちの良いものではないでしょう。気持ちとしてあげるものですから、それなりの貨幣を用意して渡してください。
◎まとめ
チップを払った方が良いのかどうか、あるいはいくらあげればいいのか。チップの慣習のない日本人には必ずと言っていいほど海外旅行で付きまとう問題です。
払わなかったからといってトラブルになることはあまりありませんが、せっかくサービスをしてくれた人に不快感を与えてしまうことになります。逆に、チップをもらって嬉しくない人はそういないでしょう。サービスが気に入ったのであれば、いつでもどこでも気持ちの分だけチップを渡すのは悪いことではありません。