山岳地帯に広がる独特の村落!エチオピアの世界遺産「コンソの文化的景観」

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山岳地帯に広がる独特の村落!エチオピアの世界遺産「コンソの文化的景観」

エチオピアの南西部には、その名のとおり多くの部族が暮らす「南部諸民族州」があります。そのなかのコンソと呼ばれる地域には、自然や地理的条件の限られた状況下に適応した、独特の文化をもつ村落が点在しています。世界遺産の登録範囲には34の村があり、大きく5つのグループに分かれています。

コンソの集落の特徴は、標高1400m以上という高所に暮らしていること。これは他の部族から身を守るだけでなく、恐ろしいマラリアを媒介する蚊を避けるためとされています。この点は、現在のエチオピアの首都アジスアベバやかつてのエチオピア帝国の都ゴンダールも、同じくマラリア対策として標高2000m超に建設されています。ですが、山岳地帯のコンソでは標高だけでなく麓からの比高も相当になるので、開発の難しさは比べものになりません。

急峻な山の頂上付近に要塞化した村を築き、山肌に石垣を組んで階段状に細々とした畑を構築。限られた土地を最大限有効に活用するため、長い年月をかけて編み出された多くの工夫が施されています。そうした伝統的な生活が残されている点が評価され、2011年に「コンソの文化的景観」として世界遺産に登録されました。

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山岳地帯に広がる独特の村落!エチオピアの世界遺産「コンソの文化的景観」

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コンソの文化的景観とは?

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コンソ人は、アフリカの角と呼ばれるエチオピアやソマリア周辺にもともとあったクシ語派に属しています。ただ、いつごろコンソに定住するようになったのかは定かではありません。コンソの伝承では今から遡ること20世代ほど昔にやってきたとされていることから、約400年前ぐらいではないかという推定がなされている程度です。

使える土地が極端に限られていることから、コンソの社会は長男を中心とする明確な家父長制をとっています。長男以外の男性は、自分で村の外側を開発するか、他の山の頂を切り開かなければなりません。自給自足が基本で、男女とも労働量が平等になるよう仕事が割り振られています。そのため、収穫や畑の雑草取りが女性の仕事とされる一方、糸紡ぎや機織りは男性担当という意外な一面もあります。

コンソの文化的景観へのアクセス

世界遺産コンソ観光の拠点となるのは、北のアバヤ湖畔の街アルバ・ミンチです。アルバ・ミンチの空港には、エチオピアの首都アジスアベバから曜日限定の定期便が就航しています。バスもありますが、アジスアベバからは10時間以上かかります。

アルバ・ミンチからコンソへはミニバスが数多く出ていて、所要時間は2時間ほどです。地図などで「コンソ」とある山麓の町は、地元では「カラティ」や「パカウレ」と呼ばれていて、世界遺産の集落があるのは、実際にはその周辺の山々になります。

観光客が集落を巡るには、コンソの町で許可証を発行してもらう必要があります。また、個々の集落を訪ねる際には、町の観光案内所でガイドを斡旋してもらったり、ツアーに申し込むのが賢明です。

コンソの文化的景観のおすすめポイント①:合理的な農業

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利用できる土地が限られているコンソの村々では、効率的に作物を育て、自給自足を維持するための工夫が随所に見られます。山頂の村の周囲には、「ディラ」と呼ばれる段々畑が広がり、畑の土止めの石垣にはところどころ隙間が開いています。水の供給源は雨なので、上から下へ順々に必要な量の雨水がすべてのディラを潤すよう設計されています。

また、それぞれのディラは中央がくぼんでいます。水が多めに必要な植物は窪み近くに、そうではないものをその外側に植えることで、多彩な作物を生産できるようにしているのです。さらに、段々畑の上から下までは標高差1000m近くになるため、ディラの場所によっても植える作物を変えています。とくに、鳥に狙われやすいような品目は、監視のしやすい村の近くで育てるなどの工夫がなされています。

山上の生活では肥料の確保も重要な問題で、戦前は日本でも一般的であった肥やしも重要な資源です。さらに台所から出る灰も、集めて肥料として利用されます。

こうして、コンソの村々では30種類を超える作物が、山肌一面の段々畑で栽培されているのです。コンソを訪れるときには、一見みな同じに思える段々畑の1つ1つの違いにも目を配ってみてください。

コンソの文化的景観のおすすめポイント②:無駄のない村落

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コンソの村は、他部族との戦いに備えるため、周囲を石垣で囲まれています。住宅は円形のとんがり屋根が特徴的で、お互いに木の柵で分けられているものの、基本的に密集して林立しています。

民家は二段構造になっていて、下層では家畜を飼ったり穀物を貯蔵したりし、生活のスペースは上層に設けられています。また住居の敷地内でも、空いたスペースがあれば、植物が植えられています。ただし、観賞目的のものは一切なく、食用かあるいは何らか日常生活の役に立つ樹木しか植えないというから、徹底して合理的ですね。

ちなみに、コンソの人たちや住居などの写真を撮るときは必ず本人や住人と交渉し、チップを渡してからにしましょう。「ワカ」と呼ばれる、コンソの祖先崇拝の木彫り人形を撮影する際も同様です。

コンソの文化的景観のおすすめポイント③:ニューヨーク

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厳密には世界遺産ではありませんが、観光客がコンソの文化的景観とセットで訪れる有名スポットが「ニューヨーク」です。コンソの村落群の近くにある断崖の奇勝で、浸食作用によって形成された絶壁がニューヨークの摩天楼を思わせることからこの名が付きました。

世界遺産の村落めぐりと同じく、コンソの町の観光案内所でミニバスやバイクタクシーをチャーターすることができます。コンソのニューヨークの観光にも許可証が必要なので、訪れる際は忘れないよう注意してください。

◎まとめ

エチオピアの奥地で今なお独特の生活を送るコンソの人々。高山での自給自足の暮らしは、数々の知恵と工夫の上に成り立っています。

世界遺産のコンソの村々を訪ねて出会うのは、美しい段々畑の景色だけではありません。環境にうまく適応死ながら日々働き続ける人々の姿から、我々が学べることは少なくないはずです。

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