名称:Rock Paintings of the Sierra de San Francisco
住所:Mulegé, Baja California Sur, Mexico
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/en/list/714/
メキシコの世界遺産「サンフランシスコ山地の岩絵群」は、バハ・カリフォルニア半島に住む先住民族・コチミ人とグアチミ人の生活の様子を表した岩絵群。これらは紀元前10世紀から西暦1300年あたりに描かれたと推定されており、人物だけでなく狩猟道具や動物、さらには半島にある世界遺産らしく海洋動物を描いたものまでもがきれいな状態で残されています。しかし、岩絵が何のために描かれたのかは未だ謎のまま。
自分たちの縄張りを主張するためのものだとか、後世に自分たちの生活の様子を伝えるためだったなど、研究者の間では様々な憶測が飛び交っているのだとか。ここでは、謎多き世界遺産「サンフランシスコ山地の岩絵群」の見どころや魅力についてご紹介していきます。
目次
先史時代の岩絵が鮮明に残る場所!世界遺産サンフランシスコ山地の岩絵群
1.「サンフランシスコ山地の岩絵群」とは?
出典: Miroslaw Skorka/Shutterstock
「サンフランシスコ山地の岩絵群」は、メキシコ西部に位置するバハ・カリフォルニア半島の山岳地帯にある世界遺産です。18世紀にスペイン人牧師によって最初の岩絵が発見されたのをきっかけに、現在までにサンフランシスコ山地のおよそ約400ヶ所以上で多数の岩絵が見つかっています。
当時は絵具というものがなかったため、火山岩を砕いた顔料で描き色付けをしていました。鮮やかな色の岩絵が印象的な「サンフランシスコ山地の岩絵群」ですが、注目すべきはその高度な技法。人物や動物にはしっかりと陰影がつけられているほか、下絵から先に色付けするという技法が用いられるなど、先住民の芸術的才能のレベルの高さを物語っています。
世界遺産に登録されている岩絵群はイタリアやスウェーデンなどにも存在しますが、「サンフランシスコ山地の岩絵群」の特徴としてチェックしておきたいのが「巨人」と「海洋生物」を描いた岩絵たちです。これを見ずして世界遺産「サンフランシスコ山地の岩絵群」は語れませんよ。
かつて巨人が存在したのか、はたまた彼ら自身がその絵を描いたのかは定かではありませんが、2mにも及ぶ大きな人物がたくさん描かれた様子は圧巻。中には、先住民たちが魔術に信仰を寄せていたことがわかる岩絵もあります。
太平洋とカリフォルニア湾に囲まれたバハ・カリフォルニア半島らしく、海洋生物が描かれた岩絵も要チェック。クジラやカメ、タコ、マグロ、イワシなどが描かれた岩絵は、かつて先住民たちが狩りだけでなく、漁をしながら生計を立てていたことを示す貴重な史料として大きな話題になりました。
2.「サンフランシスコ山地の岩絵群」へのアクセス
世界遺産「サンフランシスコ山地の岩絵群」はとても険しい山道の先にあり、周辺の治安もあまり良くないためアクセスが非常に困難です。訪れる際は、現地ツアーに参加するか個人ガイドを手配して同伴させるなど、しっかりと対策を立てておくよう心掛けましょう。
まずは、日本の成田からロサンゼルスを経由して、バハ・カリフォルニア・スル州の中心地ロレート(Loreto)へ向かいます。ロレートから「サンフランシスコ山地の岩絵群」の観光拠点となるサンイグナシオ(San Ignacio)までは、バスかタクシー、またはレンタカーの陸路のみ。総移動距離は270kmを超えるため、どの手段を利用しても5時間前後と半日がかりの移動になります。
サンイグナシオから世界遺産「サンフランシスコ山地の岩絵群」までは、現地の旅行者が主催するツアーに参加するのがおすすめ。ただし、参加者が少ない場合は割高となるので要注意です。個人手配で向かう場合は、サンフランシスコ山地の山間に住む専属ガイドを必ず同伴させてくださいね。
3.「サンフランシスコ山地の岩絵群」のおすすめポイント
◆ラ・ピンタダ洞窟
世界遺産「サンフランシスコ山地の岩絵群」で、最も美しくたくさんの絵が見つかっているエリアがサンフランシスコ渓谷です。その中にあるいくつかの洞窟のうち、最大規模を誇るのがラ・ピンタダ洞窟(Cueva la Pintada)。深さ50~60mの岩壁に描かれた岩絵は、なんと全長は170mにも及びます。
ラ・ピンタダ洞窟が注目を浴びている理由は、大きさだけではありません。人や動物が気軽に立ち入れない険しい山間に存在しているだけあって保存状態は抜群。黒や赤の鉱物顔料で描かれた鮮やかな絵を、はっきりと見ることができます。ラ・ピンタダ洞窟は毎日一般公開されているので、ぜひ立ち寄ってみましょう。
◆ラ・シムカ洞窟
ラ・シムカ洞窟(Cueva la Musica)は「音楽の洞窟」と言う意味。その名が表すように、洞窟内にはまるで五線譜のような直線が無数に描かれており、そこに音符の如く人物が配置されています。当時すでに先住民たちが音楽を奏でいてその旋律を記録していたのか?全ては謎に包まれたままですが、彼らの文明の歴史を紐解くのに大きな手掛かりであることは確かでしょう。
4.「サンフランシスコ山地の岩絵群」見学の際の注意点
「サンフランシスコ山地の岩絵群」へはサンイグナシオからアクセスするのが便利ですが、サンイグナシオから先はかなり過酷な道のりとなるので覚悟が必要です。まず、サンフランシスコ山地には宿泊施設がないので、キャンプをしながらの移動となります。車の乗り入れが禁止されていることから移動手段は徒歩のみ。キャンプ用の荷物は、ガイドにお願いしてロバを手配してもらいましょう。
キャンプを行うエリアは全てが世界遺産の範囲内のため、ゴミ捨ては一切禁止されています。トイレは簡易トイレを持参し、食料の食べ残しなどが無いよう心掛けましょう。服装は半袖でもOKですが、夜間は一気に冷え込むので厚手の長袖があると安心です。また、乾燥対策としてお水や保湿アイテムは充分に用意しておくことをおすすめします。
◎まとめ
紀元前の人々がどんなものを食べ、どんな暮らしを営んでいたのか?まだまだ謎が多い世界遺産「サンフランシスコ山地の岩絵群」ですが、私たち人類の歴史や進化の過程を解明するのにとても重要な遺跡であることに間違いありません。人里離れた険しい山中に描かれたことが幸いし、手付かずのきれいな状態で現在まで存在し続けることができた「サンフランシスコ山地の岩絵群」。そんな岩絵を見ていると、先史時代の人々の思いが少しはわかるかもしれません。アクセス困難な場所にありますが、訪れる価値がありますよ。