コククジラを守るメキシコの世界遺産！エル・ビスカイノのクジラ保護区

古代遺跡の宝庫といわれるメキシコには、世界文化遺産が2018年時点で27件あります。有名な古代マヤ文明やアステカ文明を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。そんなメキシコには壮大で守るべき自然もたくさんあり、6件の自然遺産が登録されています。今回ご紹介するのは、メキシコの自然遺産「エル・ビスカイノのクジラ保護区」。コククジラの生態については未だに謎が多いとされ、現在も研究が続けられています。そんな謎に包まれたコククジラの聖地、エル・ビスカイノのクジラ保護区へご案内しましょう。

エル・ビスカイノのクジラ保護区とは？

アメリカ西海岸のサンディエゴから南に伸びる細長い半島の名前をご存知でしょうか？「バハ・カリフォルニア半島」は、西沿岸が太平洋、東沿岸がカリフォルニア湾に面しています。この半島の真ん中あたりにある保護区が「エル・ビスカイノ生物圏保護区（Reserva de la Biosfera El Vizcaíno）」。生物の宝庫として貴重な場所です。

エル・ビスカイノ生物圏保護区の南西部には、コククジラの重要な繁殖地として世界的に知られている2つの大きな潟湖があります。オホ・デ・リエブレ湖（Laguna Ojo de Liebre）と、最南端のサン・イグナシオ湖（Laguna San Ignacio）はコククジラの聖地で、かつてホエールウォッチングツアーでにぎわっていました。しかし、鯨捕やホエールウォッチングツアーに訪れる観光客が増えて、コククジラが激減。絶滅の危機に瀕したため、1993年に「エル・ビスカイノのクジラ保護区」として世界に先駆け、世界遺産に登録されました。現在もクジラと環境を保全するため観光規制が敷かれており、公式ガイドによるエコツーリズムやホエールウォッチングだけが許可されています。

エル・ビスカイノのクジラ保護区へのアクセス

エル・ビスカイノ生物圏保護区内にあるゲレロ・ネグロ空港が最寄りです。まず日本からメキシコ・シティまで行き、シウダード・オブレゴン国際空港またはイグナシオ・ペスケイラ・ガルシア将軍国際空港を経由して、ゲレロ・ネグロ空港へ向かいましょう。

ゲレロ・ネグロは、オホ・デ・リエブレ湖の北東に位置する町。年間降水量が100mm以下という砂漠地帯のため、世界最大の塩田があります。ここからオホ・デ・リエブレ湖までは、車で1時間半から2時間ほどです。

エル・ビスカイノのクジラ保護区のおすすめポイント①:貴重なコククジラ

エル・ビスカイノのクジラ保護区で最も注目されているのは、コククジラです。大西洋のコククジラは絶滅していまったと考えられており、エル・ビスカイノのクジラ保護区でも激減してしまいました。世界遺産に登録して保全活動に努めた結果、少しずつ個体数は回復していますが、まだまだ見守っていかなければなりません。

コククジラは体長約15mと、クジラの中では比較的小さい種です。エル・ビスカイノのクジラ保護区は、そんなコククジラの貴重な繁殖地として大切な場所。秋になると、アラスカから北米大陸の西沿岸に沿って、この温かい2つの潟湖へ戻ってきます。冬はコククジラの繁殖シーズンで、2月から3月中旬ごろに赤ちゃんを出産。数か月ここでのんびり子育てをして、また北へ向かって旅立ちます。夏場は餌場であるアラスカで過ごし、また秋になるとここへ向かうという旅を繰り返しているのです。

エル・ビスカイノのクジラ保護区のおすすめポイント②：貴重な生き物たち

エル・ビスカイノのクジラ保護区は、雨が少ない砂漠気候。そのため、珍しい動植物が生息しています。コククジラのほかにも、クロアシカやキタゾウアザラシ、シロナガスクジラなどがこの保護区を繁殖地としています。冬でも温暖なこのエリアは、越冬の地として最適。絶滅危惧種のアオウミガメも生息しています。陸上に目を向けると、砂漠気候によって育まれた植物や生き物などこのエリアの固有種が見られ、貴重な動植物のゆりかごになっています。

◎まとめ

私たちが自然へ踏み込んで観光するときに何よりも大切なことは、その環境や動植物に影響を与えないようにすることです。一般観光を規制してコククジラの保全に努めているエル・ビスカイノのクジラ保護区のほか、海洋生物や海鳥の宝庫であるカリフォルニア湾とその島々、ユカタン半島の生物圏保護区、オオカバマダラ生物圏保護区など、メキシコには貴重な世界自然遺産も多くあります。壮大な海と、自然の中で生息する動植物を尊重して温かく見守っていきましょう。

コククジラを守るメキシコの世界遺産！エル・ビスカイノのクジラ保護区