イギリス - アイラ島について

アイラ島は、イギリス・スコットランドのインナー・ヘブリディーズ諸島にある島です。「ヘブリディーズ諸島の女王」の愛称で知られている島の面積は東京23区とほぼ同じ600km2、スコッチウイスキーの名産地であるとともに風光明媚な景観が知られており、毎年多くの方が観光に訪れています。アイラ島では約3400人が生活しており、行政上の中心地がボウモアです。島の中西部にあるインダール湾を臨む町は、素朴な村を感じさせる落ち着いた雰囲気をしています。その特徴となっているのが、京都の町のような碁盤の目状に整備された大通りです。村の建設が始まったのは1770年のころ、グラスゴーから移住したダニエル・キャンベルによるもので都市計画に基づいて開発されました。街の南部に位置する純白の外壁をしたキロー（キラロウ）教会は、1776年の完成から人々を見守っています。シンボルでもある教会は円筒状になっており、とんがり帽子をかぶった円錐状の屋根が特徴であるため、円形教会（ラウンドチャーチ）とも呼ばれます。円形状にすることで「悪魔が隠れる角をなくす」という意味があり、スコットランドやイギリス全土はもちろん世界各地にあるキリスト教会でも珍しい造形をしています。またランドマーク的な存在であるボウモア蒸溜所は、アイラモルト原酒を世界に送り出すウイスキー製造の拠点でもあります。アイラ島は、大西洋とメキシコ湾流の影響を受ける穏やかな海洋性気候が特徴です。緯度が高い北部に位置するため、1年を通じて気温が低くなっており、真夏の8月でも最高気温16度前後と肌寒く年平均すると実に約11度ほどになります。南から吹く偏西風の影響により降雨量は1年で1300～2000mmと多く、しとしとと降る雨でも知られています。また冬の季節には大西洋から強風が吹き、短時間の間に天候が変わることも珍しくありません。アイラ島はウイスキーの特産地でもあります。スコッチウイスキーブランドのアイラモルトは世界的に有名、島内にある複数のウイスキー蒸溜所で製造されており、モルト原酒を輸送する大型トレーラーを見かけることも多いです。ウイスキーを産業として根付かせたのは、街を建設したダニエル・キャンベルでした。独特の風味を生み出す泥炭（ピート）は、アイラ島の湿地から生み出されます。はるか昔のコケやシダ、海藻などの植物が堆積しており、潮風の香りや煙を思わせるスモーキーなフレーバーが世界中のウイスキー愛好家の舌を唸らせているのです。代表的な観光が、ウイスキー蒸溜所の見学会でしょう。スタッフが笑顔で迎えてくれる蒸溜所には、人の背丈を大きく超える蒸留窯が立ち並びます。生み出されたばかりの本場のモルト原酒の心地よ香りが満ちており、モルト原酒製造への誇りを感じられます。ウイスキー蒸溜所の多くが、インダール湾や大西洋、東隣にあるジュラ島との海峡に面しており、いずれも個性的な風景を背にしています。それぞれの蒸溜所を訪れるとわかりますが、立ち上る香りが違っており原料となる大麦や泥炭の違いを思わせます。古代ケルト文化に触れることのできるのもアイラ島の魅力です。特にキルダルトンクロスは、島を訪れた方に必ずチェックしてほしい遺跡です。島の南端にあるポート・エリンにあるアードベッグ蒸溜所から東へ伸びる細い道をいくと、石造りの古い教会跡地にでます。そこにあるキルダルトンクロスは、十字に円を組み合わせた独特のスタイルをしており、古代ケルト文化が持つ厳かな雰囲気を感じさせてくれます。スコットランドでも最も保存状態が良いと言われる遺跡は、一見の価値があります。豊かな自然も魅力的です。アイラ島北部に位置するフィンラガン湖は、スコットランドの歴史を語る上でも大切な場所です。かつてスコットランド西岸から北岸を統治したマクドナルド家の拠点であった城跡が残されています。今でこそ湖を臨むエリアには、草地が広がり羊の群れがゆったりと草をはむ光景が広がりますが、かつては強大な権勢を誇る一族の中心地でした。また周囲に咲き誇る慎みやかなアザミの花は、スコットランドの国花となっています。野生のアザラシを見かけることもあります。ボウモア街の対岸、インダール湾を挟んだポートナヘイヴンには手つかずの自然が残されており、野鳥や野生動物が訪れることも多いです。打ち寄せる波音の中にアザラシの鳴き声や野鳥のさえずりが響き渡ることがあり、めったに見られない野生動物を間近で見学する機会ともなっています。野生動物であるため近づきすぎたり、触れたりしないようにマナーを守って観察しましょう。