名称:ベリンツォーナ旧市街の3つの城と防壁・城壁群(Three Castles, Defensive Wall and Ramparts of the Market-Town of Bellinzona)
住所:Bellinzone, Canton Ticino Switzerland
公式・関連サイトURL:https://whc.unesco.org/en/list/884/
イタリア南部ティチーノ州の州都ベリンツォーナは、今でもイタリアとドイツ、フランスの3国を結ぶ街道が集まる交通の要衝。そのため、ローマ帝国時代にはすでに城砦が営まれていたとされています。現在のベリンツォーナには、中世後期に端を発する3つの古城があり、さらに街全体を城塞都市化した際の城壁が残されています。
アルプスの南の出入り口に佇む世界遺産都市ベリンツォーナ。今回は世界遺産「ベリンツォーナ旧市街にある3つの城、要塞及び城壁」の構成資産である3つの古城についてご紹介します。
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狙われ続けた世界遺産!ベリンツォーナ旧市街の3つの城と防壁・城壁群
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「ベリンツォーナ旧市街の3つの城と防壁・城壁群」とは?
ベリンツォーナに初めて城砦が築かれたのは、ローマ帝国時代の西暦4世紀ごろのことでした。その場所は、現在の世界遺産の3古城のうち、カルテルグランデのある丘とされています。
13世紀には、ベリンツォーナの東の峰に2つめのモンテベッロ城が建てられ、14世紀にはさらなる高台に街全体を見下ろすことのできる新たな塔が加わりました。これがのちにサッソ・コロバル城の中心核となる部分です。
その後もベリンツォーナは、イタリア(ミラノ公国)やフランス、ドイツ(神聖ローマ帝国)などさまざまな勢力に攻められ、支配下に置かれました。15世紀の20年弱ほどの短い期間には、現在のスイスのもととなっている三州同盟に参加。その3州にちなんで、ベリンツォーナのカルテルグランデ、モンテ・ベッロ城、サッソ・コルバロ城は、それぞれウーリ城、シュヴィーツ城、ウンターヴァルト城とも呼ばれています。
これらの防衛施設群は、多くの国々に支配されてきたこの地域独自の歴史を物語る貴重な遺構「ベリンツォーナ旧市街にある3つの城、要塞及び城壁」として世界遺産に登録されました。
ティチーノ川の狭い谷間に、3つの古城と城壁、そして古い町並みが集まっている姿は、世界遺産にふさわしい場所です。
ベリンツォーナへのアクセス
世界遺産の街ベリンツォーナに行くには、ヨーロッパを網羅する国際列車ユーロシティを利用するのが便利です。スイスの首都ベルン駅からなら、1回の乗り換えで約2時間45分。隣国イタリアのミラノ中央駅からならより近く、乗り換えなしで約1時間30分の旅です。席の等級によってチケットの値段が異なるので、希望の座席を予約しておきましょう。
ベリンツォーナの3つの古城は、比較的短い間隔で一直線に並んでいるので、すべて徒歩でまわることも可能です。バス網も発達しているので、好きな順にバスで巡ることもできますよ。
ベリンツォーナのおすすめポイント①:カステルグランデ
3つの古城のうち、他の2つは街の背後の丘陵地帯にありますが、「カステルグランデ(Castelgrande)」は街中の独立した丘の上にあります。最も訪れやすく最も雄大なので、ベリンツォーナの3古城を代表するシンボルとなっています。英語にするならグランドキャッスル、そのまんま大きなお城という意味です。
カステルグランデには中心部の建物は残っていませんが、2つの塔と城壁、そして外壁に付属する建物群が丘を巡っています。城壁の上は歩くことができ、当時の衛兵の気分でベリンツォーナの旧市街を俯瞰することができますよ。
3つの古城のなかでは一番低いところにありますが、それでも麓からのハイキングはそれなりのもの。体力と時間に余裕のない人は、トンネルの奥にあるエレベーターも利用できます。
ベリンツォーナのおすすめポイント②:モンテベッロ城
カルテルグランデに次いで、13世紀に建てられたのが「モンテベッロ城(Château de Montebello)」です。上から見ると笹船のような形をしているのが特徴。このお城は外観以上に複雑な構造をもっていて、3つの古城のなかで最も守りの固かった城といわれています。
たとえばやっとの思いで跳ね橋や狭い渡り廊下を越えてきた侵入者は、落とし格子に閉じ込められた挙句に飛道具の的にされる、という仕掛けまで施されています。まるで日本でいう忍者屋敷のようですね。
改修された城内は市立博物館になっていて、ベリンツォーナを中心としたティチーノ地方の出土品や、街の歴史などに関する展示や解説があります。お城の前方に広がる外郭部は芝生の広場になっていて、ベリンツォーナの旧市街を見下ろしながら走り回れる絶好の遊び場。休日には観光客だけでなくベリンツォーナの地元の家族連れでも賑わいます。
ベリンツォーナのおすすめポイント③:サッソ・コルバロ城
ベリンツォーナの3つの古城のなかで一番最後につくられた、一番高いところにあるのが「サッソ・コルバロ城(Château de Sasso Corbaro)」です。
もともとはベリンツォーナの谷全体を監視する物見塔が設置されていましたが、1479年に都市防衛用の城塞としてグレードアップされました。そのため、他の2城からはやや離れていて、もちろん歩いて登るのはひと苦労です。
6か月という突貫工事で建造されたため、カステルグランデやモンテベッロ城と比べると、だいぶこじんまりとした印象。ですが、その城壁は3城のなかで最も重厚で、都市防衛という役割をもっともダイレクトに感じることができます。
城壁は歩いて散策することもでき、眼下にはベリンツォーナの旧市街のほか、他の2城を視界にバッチリ収めることができます。城内にはティチーノ民芸博物館が併設されているので、時間に余裕があればゆっくり見学してみましょう。
◎スイス世界遺産「ベリンツォーナ旧市街の3つの城と防壁・城壁群」まとめ
ベリンツォーナ旧市街の3つの城と防壁・城壁群についてご紹介しました。交通の要衝にあるがゆえに、周辺諸国による取り合いが絶えなかったベリンツォーナ。地理的な宿命に抗いつつも、その都度順応して、今日まで生き抜いてきました。
今では世界遺産の古城が見守るアルプスの入口の静かな観光都市。北イタリアと南スイスを訪ねる機会があれば、ぜひ世界遺産の街ベリンツォーナに立ち寄ってみてください。