覇権強国イギリスの原点!世界遺産「ダーウェント峡谷の工場群」

覇権強国イギリスの原点!世界遺産「ダーウェント峡谷の工場群」

イギリスのイングランド中部を南北に流れるリバー・ダーウェントという川があります。その流域には、18世紀初頭から19世紀にかけて建設されたたくさんの紡績工場があります。これらは産業革命の最初期の遺構として歴史的に貴重であり、また今日までつながる地域の産業景観の基礎を形作っているという点でも大きな価値を持っています。イギリスが世界に覇を唱える原動力となったこられの工場群は、大英帝国栄光のレガシー。いくつかの工場や施設は観光スポットとして観光客に公開されています。ここでは、イギリスの誇る世界遺産「ダーウェント峡谷の工場群」の見どころについて解説していきます。

目次

覇権強国イギリスの原点!世界遺産「ダーウェント峡谷の工場群」

ダーウェント峡谷の工場群とは?

出典: Elliott Brown

産業革命はイギリスで始まったというのは、社会科の常識ですね。そのなかでも産業技術および産業形態に大変革をもたらしたのが、1769年にリチャード・アークライトが発明した人力によらない水力紡績機でした。水紡機は水車を動力とするため、川のそばに大きな工場を建設する必要があります。そこでアークライトは1771年に、ダーウェント川中流のクロムフォードに工場を建設、その後ミル(Mill)と呼ばれる近代紡績工場が次々とダーウェント峡谷に造られました。

19世紀に入ると、綿産業の中心は原材料の集積や輸出に便利な海沿いのランカシャーに移り、ダーウェント峡谷の工場は衰退しました。とはいえそれまでに築き上げられてきた工場群と労働者のための住居や施設群などは、地域の歴史に欠かせない遺構として残されています。2001年に世界遺産に登録された「ダーウェント峡谷の工場群」には、こうした工場以外の建物が800以上も含まれています。

ダーウェント峡谷の工場群へのアクセス

ダーウェント川流域の最大都市ダービーへは、ロンドンから鉄道で約1時間半です。

流域にはたくさんの世界遺産の建物が点在していますが、たとえばアークライトが設立したクロムフォード・ミルとマッソン・ミルのあるクロムフォードは、ダービーからさらに鉄道で27分で着きます。

ダーウェント峡谷の工場群のおすすめポイント

1. マッソン・ミル

出典: Alex Liivet

1783年建設のマッソン・ミル(Masson Mill)は、水力紡績機の発明者リチャード・アークライトが設立した工場の1つです。すでに発明家および起業家として財を成していたアークライトが、さらに大きな水力を利用するために建てた3番目の工場で、当時はまだ高価だったレンガを惜しみなく使った赤い建物が印象的です。

ダーウェント峡谷の工場群のなかでもとくに規模が大きく設備も最新式だったというマッソン・ミルは、地域に莫大な雇用を生み出すとともに、地域のアイデンティティともいえる景色を形成しました。とくに夜にこうこうと工場から漏れる光が、川や周囲の丘を照らすさまは、他に類を見ない光景だったそうです。

現在は「労働繊維博物館」として公開されていて、ダーウェント峡谷の工場群観光のメインスポットの1つとなっています。館内には世界中から集められて約68万個ものボビン(糸巻き)のコレクションが展示されていて、さすが紡績の世界遺産と感心してしまいます。

2. ベルパー・ノース・ミル

出典: Dun.can

ベルパー・ノース・ミル(Belper North Mill)はクロムフォードとダービーの中間付近にあります。1786年に建てられましたが、1803年に火事により焼失。翌1804年に再築されたものが、現在の世界遺産の建物です。

そもそも繊維は燃えやすく、火の粉が飛散しやすいので紡績工場は火災に見舞われやすいという深刻な問題がありました。ベルパー・ノース・ミルは工場に耐火性をもたせるべく、再建時に木ではなく鉄骨のフレームとレンガを採用。現存する世界初の鉄筋ビルディングとなったのです。

現在は、メインのビルの一部がダーウェント峡谷ビジターセンターとなっています。館内には当時の機械など地域の産業革命に関する資料が展示されていて、ガイドによるツアーも実施されています。

3. ダービー・シルク・ミル

出典: Eamon Curry

ダービー・シルク・ミル(Derby Silk Mill)は、ダーウェント峡谷の中心都市ダービーの市街地ど真ん中にあり、世界遺産の工場群のなかでは最も訪ねやすいものの1つです。水紡機が発明される50年近く前の1721年に操業を開始し、完全に機械化された工場としては世界で最初のものといわれています。

創業者のジョン・ラムは、イタリアのピエモンテで修行と研究を重ね、帰国後に工場を建設。彼が考案したシステムと機械は、まだ手動ではあったものの生産効率を飛躍的に高めました。そのため、ジョンは留学先のイタリアで反感と恨みを買い、サルデーニャ王(イタリア王の前身)によって工場建設の翌年に毒殺されたともいわれています。

こうした経緯もあり、ダービー・シルク・ミルはイタリア風の塔が付属しているのが外観上の大きな特徴です。現在の建物は、1910年の大火災の後で再建されたもの。産業博物館として利用されていますが、2020年までリニューアル工事により休館中のため、再オープンまでは外観を楽しむにとどめておきましょう。

まとめ

世界遺産「ダーウェント峡谷の工場群」の観光の見どころをご紹介しました。近年は、世界遺産にもいわゆる産業遺産が増えてきました。2015年には、明治日本の産業革命遺産が登録を果たしています。産業革命そのものの原点ともいえるイギリスの「ダーウェント峡谷の工場群」は、そうした産業遺産のさきがけともいえる存在です。世界史を語るうえで欠かすことのできない「ダーウェント峡谷の工場群」の産業革命遺構、イギリスをじっくり訪れる機会があれば、ぜひ訪ねてみてください。

国内のエリア一覧

海外のエリア一覧

カテゴリー一覧

イギリスでおすすめの記事

イギリスのアクセスランキング