名称:Pont du Gard
住所:400 Route du Pont du Gard, 30210 Vers-Pont-du-Gard
公式・関連サイトURL:http://pontdugard.com/jp
今からおよそ2000年前、南フランスはローマ帝国の支配下にありました。その面影は南フランスの随所に残されていますが、中でも世界遺産として注目されているのが、ガルドン川にかかる古代ローマの水道橋「ポン・デュ・ガール」です。高度な土木技術を有することで知られる古代ローマ人。彼らの水道へのこだわりは特に強く、「ポン・デュ・ガール」を見てみると現代の私たちが驚かされるほど精緻な造りになっているのがわかります。同じような水道橋は、スペインのセゴビアやトルコのイスタンブールにもありますが、その中でも最も大きく保存状態が良いと評価されているのが、この「ポン・デュ・ガール」なのです。それでは、古代ローマ人の建築技術がぎゅっと詰まった世界遺産「ポン・デュ・ガール」の魅力をご紹介していきましょう。
目次
【世界遺産】ポン・デュ・ガールとは?古代ローマの水道橋をご紹介
1.「ポン・デュ・ガール」とは?
急激な人口増加により水不足に陥ったニーム(旧名:ネマウスス)の町。そんなニームを救うため、古代ローマ人はニームからおよそ50km離れたユゼスから湧水を引くことを考えました。その時に思いついたのが「傾斜を利用する」という方法。建設された水路は1kmあたり約25cmというわずかな傾斜でしたが、見事に町へ水道を通し、600年以上にわたって町の人々に飲料水を提供したのでした。
「ポン・デュ・ガール」は、その水道のうちガルドン川にかかる長さ275m・高さ49mの橋です。この巨大な橋を古代ローマ人はわずか5年で完成させました。橋は上層・中層・下層の三段のアーチ構造になっているのですが、この構造のおかげで2000年後の現在も崩れず当時のままの姿で残っています。
1985年にユネスコの世界文化遺産に登録された「ポン・デュ・ガール」。その美しさはもちろん、古代ローマ人の建設技術や土木技術の高さに驚かずにはいられないでしょう。古代ローマ人の知恵と努力の結晶を間近で見て触れられる、なんともロマンチックな世界遺産なのです。
2.「ポン・デュ・ガール」へのアクセス
「ポン・デュ・ガール」観光の拠点となる町は、アヴィニョン(Avignon)とニーム(Nimes)です。パリのリヨン駅からTGVの直通列車を利用すれば、どちらも3時間弱で行くことができます。乗継列車に乗ってしまうと4時間以上かかる場合もあるので、チケット購入の際はしっかり時刻表をチェックしておきましょう。
アヴィニョンとニームからは、現地ツアーに参加するかバスを利用するのがおすすめです。バスでの所要時間は約50分。全体的に便数が少ないのが難点ですが、行き方も簡単でリーズナブルなので、気軽に利用してみると良いですよ。現地ツアーはアルル(Arles)やマルセイユ(Marseille)からも出ています。
3.「ポン・デュ・ガール」のおすすめポイント
◆ガルドン川にかかる美しい姿
ユゼスにある綺麗な湧水をニームに運びたかった古代ローマ人。約50kmの道のりを水道でつなぐことにしたものの、始点から終点までの高低差は17mと充分なものではありませんでした。
結果的に微妙な傾斜を利用することになるのですが、なんと全長275mもある「ポン・デュ・ガール」での高低差はたったの2.5cmしかないのだとか。これは「ポン・デュ・ガール」の高さをできる限り低くするために、手前にあたるエリアを水道全体で最もきつい傾斜にすることで造り上げた技術の賜物なのです。
最高技術のおかげで1日に2万トンもの水を運び、人々の生活を潤してきた「ポン・デュ・ガール」でしたが、紀元4世紀ごろから次第に整備が疎かになり最後には詰まってしまいました。水道橋としての役割を終えた「ポン・デュ・ガール」はその後、人々がガルドン川を渡るための橋として活躍し今に至っています。
◆三層アーチ構造
「ポン・デュ・ガール」の特徴といえば美しい三重のアーチ構造。蓋つきの水路で水が通っていた上層にはアーチが35個あり、中層は11個、下層は6個とアーチの形が次第に大きくなっていくことで強度を増しています。この美しいアーチを石を積んで作ったなんて、古代ローマ人の技術は本当にすごいと思いませんか?ちなみに、足場に利用された突起となる石も未だ残っています。
「ポン・デュ・ガール」を造るのに使用された石の中には、なんと最も重いもので6万トンもあったのだとか。これらを運ぶ時はクレーンと滑車を使った装置が利用され、楔(くさび)状に積み上げることで石同士を固定させたと言われています。石の大きさもさることながら、技術の素晴らしさはまさに圧巻です。
◆歴史も学べるミュージアム
出典: Picturereflex/Shutterstock
「ポン・デュ・ガール」の左岸にはミュージアムがあり、建設や古代ローマの歴史に関する展示を見て学ぶことができます。実物大の複製や模型、バーチャルリアリティーでの再現など、古代ローマを身近に感じられる工夫が盛りだくさん。水道が通ったことによって豊かになった人々の生活の再現は必見です。
「ポン・デュ・ガール」が世界遺産に指定されてからというもの、周辺にはミュージアムやカフェ、レストランなど観光客向けの施設が増えました。夏にはガルトン川で水遊びをすることもできるそうですよ。いつまでも変わらない景色を眺めながら、古代ローマ時代に思いを馳せるのも良いかもしれませんね。
◎まとめ
きれいな水を豊かに使うことが最高の贅沢だった古代ローマ時代。水道が通ったおかげで入浴や水洗トイレなどが普及し、環境衛生上の貢献も著しかったそうです。その一部を担った「ポン・デュ・ガール」は、古代の人々にとってこの上なく有難い存在であったことは明らか。今では観光地として人気の世界遺産「ポン・デュ・ガール」ですが、古代ローマの歴史や素晴らしい建築技術を学ぶ上でもとっても貴重な場所なのです。「ポン・デュ・ガール」では花火やサーカス、演劇など様々なイベントが開催されているので、スケジュールをあわせて訪れてみると良いですよ。