名称:ローマ帝国の国境線/Frontiers of the Roman Empire
公式・関連サイトURL:https://whc.unesco.org/en/list/430/
かつてヨーロッパの大部分を勢力下に収めたローマ帝国の国境線として、イギリスにあるハドリアヌスの長城とアントニヌスの長城、そしてドイツにあるローマ帝国の長城跡が世界遺産として登録されています。
建設から長い年月が経過していることからそのほとんどが埋もれていますが、それでもローマ帝国の繁栄と衰退を肌で感じることができる観光名所として人気です。この記事では、イギリスとドイツにまたがる世界遺産「ローマ帝国の国境線」の見どころをご紹介します。
目次
【世界遺産】ローマ帝国の国境線とは?|古代帝国の足跡がここに!
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ローマ帝国の国境線とは?
5000kmにも及んでいたといわれているローマ帝国の国境線のなかで、現在はっきりと分かる形で残っている3つのラインが、「ローマ帝国の国境線」として世界遺産に登録されています。
まず最初にイギリスにある「ハドリアヌスの長城」が1987年に登録され、その後2005年にはドイツの「リーメス」が、最後にスコットランドにある「アントニヌスの長城」が2008年に追加登録されました。この3箇所の合計距離は約740kmで、当時の長さには到底及びませんが、それでもかなりの規模といえます。
ちなみに、ドイツ国内に残っている部分をとくに「リーメス」と呼びますが、これは国境線という意味のラテン語で、英語のリミットの語源とされています。
ローマ帝国の国境線へのアクセス
イギリスの世界遺産ハドリアヌスの長城へは、エジンバラから鉄道でカーライル駅へ行きます。そこからバスで約1時間。長城の近くには、ビジターセンターや博物館があるので、併せて見学に訪れてみてください。
ドイツ国内のリーメス関連施設でもっとも有名な「ザールブルク城砦」は、フランクフルトの郊外にあります。まずフランクフルト中央駅地下ホームから、在来線のS5で郊外のバート・ホームブルク駅を目指します。そこからバスに乗ってザールブルク停留所で下車すれば、城砦までは歩いて10分ほどです。
ローマ帝国の国境線のおすすめポイント①:【イギリス】ハドリアヌスの長城
最初に世界遺産に登録されたハドリアヌスの長城は、イングランド北部のスコットランドとの境界線近くにある長城。皇帝ハドリアヌスが北方民族の侵入を防ぐために122年に築いたものです。ハドリアヌスの長城の壁の高さは4~5m、幅は約3m、その距離はニューカッスル・アポン・タインからカーライルまで118kmに及びました。
世界遺産であるハドリアヌスの長城は、当初は土塁で造られましたが、その後石垣で補強されます。約1.5kmごとに監視所、約6kmごとに砦が設置されるという壮大なもので、当時は500人から1000人ものローマ兵が防護にあたっていました。ローマ帝国の繁栄を示す世界遺産です。
ハドリアヌスの長城沿いには、古代ローマ人たちの築いた街や砦、寺院などの遺跡が点々としていて、ウォーキングルートやサイクルルートが整備されています。また春から秋にかけては、長城沿いに遺跡観光に便利なバスが運行されており、歩いて回ることもできますよ。
ローマ帝国の国境線のおすすめポイント②:【ドイツ】ザールブルク城砦(リーメス)
出典: Holger Weinandt (CC BY-SA 3.0)
ローマ帝国版万里の長城ともいえるリーメスには、一定間隔で物見塔や兵の駐留する陣営が設けられていました。兵営にもランクがあり、大規模なものは小規模なものより長い間隔をあけて築かれています。ドイツ最大規模の空港のあるフランクフルト郊外のザールブルク城砦は、比較的ランクが高いと考えられている兵営の1つを再建したものです。
二重ないし三重の堀や高い城壁に囲まれた城砦は、まさにローマの雰囲気満点!内部は野外博物館になっていて、復元された兵舎の一部はカフェスペースになっています。気づきにくいですが、城砦裏手の森の中を少し歩くと、兵営とは別にリーメスの長城跡が復元されているので、そちらまで足を延ばすことをオススメします。
ローマ帝国の国境線のおすすめポイント③:【ドイツ】ルッフェンホーフェン城砦(リーメス)
ドイツ観光のハイライトともいえるロマンチック街道のなかでも、とくに人気の観光都市の1つディンケルスビュール。中世そのままの面影を残すこの街の東方に、リーメスに付属する兵営の1つ「ルッフェンホーフェン城砦」があります。
見晴らしの良い丘の中腹に、四重もの堀をめぐらした厳重かつ規模の大きな城砦で、建物こそ復元されていないものの、史跡公園として整備されています。城砦跡を俯瞰できる背後の丘には、当時の模型が野外展示されているほか、資料館も建設されています。
アクセスは、ディンケルスビュールのバスターミナルから825番のバスで最寄りの街ヴィッテルスホーフェンで下車して、そこから徒歩で20分ほどです。バスの本数が少ないので訪ねやすいとはいえませんが、歴史好きの人にはおすすめですよ。
ローマ帝国の国境線のおすすめポイント④:【ドイツ】レーマーヴェルト(リーメス)
旧西ドイツの首都ボンの南、ライン川東岸のバート・ヘニンゲン駅から徒歩10分のところにある「レーマーヴェルト」も、リーメスについて知ることのできる観光施設です。敷地内には資料館のほか堀や柵、兵舎、兵器などが建てられています。また、ローマ時代の料理体験や剣闘士体験など、さまざまな催し物も行われています。
ここはリーメスの西の端っこにあたり、対岸のバート・ブライズィヒへの渡し舟の河港があるあたりで、長城はライン川と交わっていました。その脇には二重の堀に囲まれた小規模な城砦があり、現在はそれに付属する物見塔が推定復元されています。
ライン川流域は人気の観光地なので、ここを通過する人は多いはず。時間があれば、ぜひ立ち寄ってみてください。
ローマ帝国の国境線のおすすめポイント⑤:【イギリス】アントニヌスの長城
2008年に世界遺産に登録されたアントニヌスの長城は、スコットランドの中央部に残る石と土で作られた防塁です。アントニヌス帝の統治時代、142年から144年にかけて作られたもので、古キルパトリックからフォース湾沿いのフォールカークまで60㎞に及んでいます。
世界遺産のアントニヌスの長城は、当初は160㎞南にあるハドリアヌスの長城に代わるものとして建設。寒さが厳しいローマ帝国の北辺に、わずか2年で作り上げられました。その跡、世界遺産のアントニヌスの長城は、スコットランド人の攻撃を何度も受け、建設後わずか20年で放棄されます。領土の拡大とともに国境線を守る難しさが生じ、ローマ帝国の繁栄と衰退を示す世界遺産となっています。
◎イギリスとドイツの世界遺産「ローマ帝国の国境線」まとめ
ヨーロッパの長城というとハドリアヌスの長城がこれまで有名でした。しかし、21世紀に入ってドイツのリーメスの存在がにわかにクローズアップされるようになり、発掘や研究が急速に進展。こうした研究結果をもとに、新たな史跡公園やミュージアムが次々に建設されていて、観光名所としても注目されています。