名称:Abbey and Altenmünster of Lorsch
住所:Nibelungenstraße 32 | 64653 Lorsch
公式・関連サイトURL:http://www.kloster-lorsch.de/en/
ロルシュはフランクフルトの南、ブルグント王国の都だったヴォルムスの東にある人口1万人ほどの小さな街。ここには、世界遺産にも認定されたドイツで最も古い建造物の一つがあります。
それが、「ロルシュの王立修道院とアルテンミュンスター」。アルテンミュンスターとは「旧修道院」という意味で、9世紀にドイツの文化の中心として栄えたところでした。
現在まで残っている建物は少なく、街自体も小さいので他のドイツの世界遺産の陰に隠れがちですが、中世ドイツ史を語るうえで重要な存在といえます。
前ロマネスク時代の様式を伝える建物や、カロリング朝期の貴重な史料となっている修道院の旧蔵書など、学術的な価値も高い世界遺産です。
目次
【世界遺産】ロルシュの王立修道院とアルテンミュンスターとは?
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ロルシュの王立修道院とアルテンミュンスターとは?
ロルシュ修道院はフランク王国の貴族カンコールとその母ヴィリスヴィンダが、764年に自領内に聖堂と修道院を建立したのがはじまりとされています。765年、修道院長となったカンコールの甥のグンデランドは、巡礼者を呼び集めるためにローマから聖ナザリウスの遺骸を拝領しました。
これが大当たりしてヨーロッパ各地から巡礼者が訪れるようになり、9世紀には図書館やその写字室が、ドイツのサロン的な役割を果たすようになりました。
その後、ロルシュ修道院はカロリング朝の王が葬られたり、帝国修道院となったことからさらに裕福に。他方で富や権力の拡大は、周辺との軋轢も生むことになりました。1232年に、修道院は神聖ローマ皇帝フレデリク2世によってマインツ大司教ジークフリート3世の所有とされ、それまでの独立した地位を失います。
17世紀の三十年戦争で修道院のほとんどの建物は破壊され、第一次世界大戦前には残った区画がタバコ倉庫として利用される有様でした。
ロルシュへのアクセス
ロルシュへは、ヨーロッパ有数のハブ空港のあるフランクフルトから鉄道でわずか1時間弱で行くことができます。途中、ロルシュの隣のベンスハイムという街で乗り換えが必要となります。
人気の観光都市ハイデルベルクからも、ベンスハイム乗り換えで30分少々。ヴォルムスからなら乗り換えなしで20分で到着します。ロルシュ修道院はロルシュの街の中心にあり、駅から歩いて10分足らずです。
ロルシュ王立修道院のおすすめポイント①:王の門
世界遺産とはいえほとんど建物が残っていないロルシュ修道院にあって、当時のよすがを感じられる歴史的建造物が、「王の門」です。
カロリング朝時代の遺構として貴重な王の門は、8世紀後半の国王ルートヴィヒ3世によって建てられたもの。古代ローマ様式と現地のチュートン人の様式が混ざり合った、とても珍しい建造物なんですよ。
均整の取れた3つのアーチ門の両脇には半円の塔が付き、白と赤紫の美しいまだら模様が特徴!一見ありふれた楼門のように思えますが、じっくり眺めていると、世界遺産にふさわしい独創性に溢れたデザインであることがわかるでしょう。門の周囲は広々とした芝生が広がるのみで、地元の子供たちの格好の遊び場となっています。
世界遺産ロルシュ修道院の王の門は保存状態も良く、その美しさから「カロリング・ルネッサンスの宝石」とも称えられています。門の由来自体は、カール大帝の戦勝を祝う凱旋門、あるはロルシュ修道院の図書館門など諸説ありはっきりしません。そうした謎を残しているところも、世界遺産にふさわしい要素といえますね。
ロルシュ王立修道院のおすすめポイント②:アルテンミュンスター
王の門から東に進むと、個人宅の裏手のヴェシュニッツ川沿いに、旧修道院「アルテンミュンスター」の遺跡があります。入口には件のタバコ倉庫に転用された細長い建物があるので、これを目印にしましょう。
今は土台が残るだけですが、その一角には十字架が建っています。ここはかつて、カロリング朝の2人の王が埋葬された聖堂跡。ドイツに数ある教会遺跡のなかでも、ちょっと寂しい部類に入るのがアルテンミュンスターです。
ですが世界遺産にも登録されるほどドイツ史において重要な場所だったと考えると、また感慨深さも違ってくるのではないでしょうか。
ロルシュ王立修道院とアルテンミュンスター注意事項
王の門のあるロルシュ修道院跡は駅から比較的近いですが、アルテンミュンスターまでは歩いて20分ほどの道のりとなります。
途中から農道のような畑の広がる小路になり、周辺にはバス停も駐車場もありません。そのため、歩きやすい靴を履いていくことをおすすめします。
◎まとめ
1991年に登録された世界遺産「ロルシュの修道院とアルテンミュンスター」についてご紹介しました。
ロルシュは観光スポットとしての見どころはお世辞にも多いとはいえませんが、フランクフルトとハイデルベルクの中間にあってアクセスがとても容易であるというのが魅力です。
古代から中世へと移り変わる時期のドイツ史において重要な遺構であるロルシュ修道院。フランクフルトでもし時間に余裕があれば、ぜひ世界遺産の街ロルシュを訪ねてみてください。