【コロナ禍の海外】2020年11月取材!ロシア・ウラジオストクの今
日本から2時間で行けるヨーロッパ、ウラジオストク。オシャレな街並みやかわいい雑貨がそろう町として「Can-Cam」、「Maybe!」などの女性ファッション雑誌にもこの街は取り上げられました。しかし、今年は注目の観光地となるはずだったウラジオストクも今は新型コロナウイルスの影響で閑散としています。
今回はウラジオストクで現地ガイドの会社を運営する宮本智(みやもと とも)さんに現在のウラジオストクの観光地や市民の様子についてレポートしていただきました。
目次
【コロナ禍の海外】2020年11月取材!ロシア・ウラジオストクの今
目次を閉じる
【1】コロナがなければ賑わいを見せていたはずのウラジオストク
ウラジオストクはここ数年、中国や韓国から人気旅行先となっていました。ここ1,2年日本人の間でも「一番近いヨーロッパ都市」として認知度が上がり、旅行者数も伸びていました。
2020年春には待望の日系航空会社JALとANAがウラジオストク便を就航、ウラジオストクのみを扱ったガイドブックも3社から出版され、2020年はウラジオストク旅行が大飛躍を迎えるはずでした。
そんな矢先にコロナウイルスが発生し、旅行者でにぎわうはずのウラジオストクは全く想定外の2020年を送ることになりました。今回はこの急転直下のようなウラジオストクの状況を観光視点でレポートします。
【2】2020年11月現在のウラジオストクの主要観光スポットはどうなっている?
ウラジオストク市内にはシベリア鉄道の終着点である「ウラジオストク駅」をはじめ、ウラジオストク市内が一望できる「鷲の巣展望台」や様々なものを扱う「キタイスキー市場」、本場のバレエが堪能できる「マリンスキー劇場沿海地方分館」(筆者注:マリインスキー劇場とも表記されます)などの観光スポットがありますが、いずれも新型コロナウイルスの影響で様変わりしました。
スポットごとにどのような変化があったのか紹介いたします。
【3】シベリア鉄道の終着駅「ウラジオストク駅」とその周辺の今
シベリア鉄道の東の終着駅「ウラジオストク駅」。駅前にはロシア革命の指導者レーニン像が立ち、通常であれば写真スポットとなっていますが、レーニン像はロシア人にとっては日常風景であるため、ここで立ち止まる人はほとんどなくひっそりとしています。
ウラジオストク駅では体温測定器を設置
ウラジオストク駅構内の様子を見てみましょう。10月までは1人1人を入口で検温していましたが、11月からは台に乗れば体温が測定される最新の機械が導入され、入口付近に置かれています。この機械での測定は任意で、見たところあまり多くの人は利用していませんでした。シベリア鉄道内でも係員が検温するので、駅入口での検温は緩めているのかもしれません。
【4】ウラジオストク1番の目抜き通りである噴水通り(アドミラーラ・フォーキナー通り)の今
ウラジオストク一番の散歩通りである「噴水通り」(正式名称:アドミラーラ・フォーキナー通り)にはカフェや飲食店が並ぶのですが、戦勝記念日の5月9日過ぎまではテイクアウト業務しかできず、閉店しているところも多く、また住民は不要な散歩自粛でしたので、人通りはまばらでした。
その後は噴水にも水が入り、限定付きとはいえ店内飲食も再開したので、人通りがだいぶ戻りました。現在はというと、KPOPダンスをしたり、ストリートミュージシャンが演奏したりと、例年通りの賑わいとなっています。
11月からは夜になると青いイルミネーションが照らされ、コロナ騒動を全く感じさせない雰囲気になっています。
【5】ノスタルジックな路面電車が走り、中国人の売り子でにぎわったキタイスキー市場の今
110年の歴史を誇る路面電車が走り、とりわけ日本人旅行者に人気の「キタイスキー市場」。ここは改修工事と相まって、6月までは人出が少なかったですが、現在はウラジオストク住民の市場であり台所といった本来の機能を取り戻しています。
「キタイスキー市場」のキタイスキーは「中国の」という意味のロシア語で、吉林省、黒竜江省といった中国東北部の売り子が多かったのですが、コロナ発生により中国人売り子が帰国し、ウズベキスタン、タジキスタンといった中央アジア出身の売り子比率が増えました。
【6】ウラジオストクの象徴的風景が撮れる「鷲の巣展望台」の今
ウラジオストクのパノラマスポット「鷲の巣展望台」は、昼間のみならず、夕暮れ、夜景が楽しめるスポットとして本来はひっきりなしに旅行者が訪れるスポットです。
2020年は、ロシア国内旅行でウラジオストクを訪れる外地のロシア人、あるいいはウラジオストクに出稼ぎに来られている人々、コロナで残された留学生が若干ながら日中に訪れる程度です。先日訪れた際も、ウラジオストクの海軍基地で働くウラル地方の青年が1人記念撮影をしているだけでした。
【7】マリンスキー(マリインスキー)劇場沿海地方別館の今
鷲巣展望台から金角湾大橋側を向くとすぐ目に入る「マリンスキー劇場(筆者注:マリンスキー劇場沿海地方別館。マリインスキー劇場沿海州別館などとも表記) 」。
ロシア国内の多くのコンサート劇場、演劇場が軒並み上演中止、休業となるなかでも、このマリンスキー劇場は休業期間が極めて短く、ほぼ通年と変わらない形でオペラ・バレエ公演が行われてきました。ロシア国内のみならず世界中でほとんどのイベントが中止となった8月でも、このマリンスキー劇場では第5回国際極東フェスタが2週間にもわたって連日行われました。
ソーシャルディスタンスを取るため、席は1席ずつ開けるといった措置を取り、観客数は多くても通常の半分といった風ですが、世界的にも超例外的な通常公演といえます。マリンスキー劇場の公演でどれだけ市民が感動し、恩恵を受けているかはいうまでもありません。
コロナ禍で気分の落ち込みがちな年配女性の姿をこの間よく見かけますが、彼女らの楽しみとなり、慰めになっています。この超例外的なマリンスキー劇場の公演は、観客であるウラジオストク住民のためというよりは19世紀のロマノフ王朝時代から続く、世界のバレエ・オペラ界を引っ張るマリンスキー劇団の意地であり、芸術大国ロシアの姿勢といえるでしょう。
バレリーナやオペラ歌手、オーケストラは観客の前で本番を演じ続けることで、レベルが維持できるそうですが、コロナ禍でも連日公演を続けることで、コロナ後もロシアは世界の芸術を牽引するでしょう。
【8】ウラジオストク市民の衛生意識はどう変わった?
ロシアではマスク着用の習慣が元々なかったため、コロナ発生初期段階からあまりマスクの着用が進みませんでした。オフィス仕事、店員、公共機関施設勤務者のマスク着用が定められている人々と高齢者以外はマスクを携帯するものの、街を歩くときは基本的に着用しないというような感じでした。
バス車内でも5割位の着用率です。11月になり感染者が増加し、第二波がいわれるようになり、着用率は上がりましたが、それでもマスク着用に対する意識はそれほど高くないといえます。
マスク以外の衛生面全般については、飲食店とスーパーを中心に衛生措置がとられています。多くのカフェや飲食店では頻繁にテーブルをアルコール消毒するようになりました。また多くのスーパーでは、入店時にマスク着用を義務付け、マスクをしない消費者には入店を断るケースも多いです。もし入店したい場合はスーパーがレジ横に用意するマスクを購入して入店となります。
先ほどのマリンスキー劇場でも入場ゲートではマスク着用が必須で、忘れた人は劇場内土産店で購入もできます。なお入場ゲート後及び観覧中はマスクを外す人が多いのはロシア的です。
【9】ウラジオストク在住者として感じたこと
ロシア人は対面のコミュニケーションが好き
ロシア人はオンラインでのコミュニケーションでなく、握手して抱き合い、対面でのコミュニケーションが好きなのだということです。ロシア人は友人に会えば、握手し、ハグ、時にキスもしますが、コロナ禍では、一時期こういったコミュニケーションは制限されました。また数か月はグループで集まるのも禁止されました。
この間、オンラインでの集まりやコミュニケーションが行われましたが、皆どことなく物足りなさを感じているようで、6月頃に元のコミュニケーションができるようになると、皆喜びにあふれました。今も握手やハグは自粛が言われるのですが、やはり身体の接触が恋しいようで、自然と出てしまいます。コミュニケーションについてロシア人らしさを改めて感じました。
ウラジオストクの自然の豊かさに触れられた
続いてウラジオストク在住者としてコロナ禍で感じたのは、ウラジオストクの自然の美しさと豊かさです。コロナ禍で時間が出来たこともあって、極東のジャングルと言われるタイガの森に宿泊したり、ウラジオストク近郊の無人島を散策したりという機会に恵まれました。
タイガの森には、源泉から澄んだ水が流れており、この上なく美味しい水を味合わせてもらいました。タイガの密林からは自然の息吹を感じました。
無人島では海水も透明で、天然のカキを見たり、島では様々な食用キノコを採ったりして、炒めて食べました。ウラジオストクから1時間程度でこういった自然に触れられるのはとても有難いことですし、ウラジオストクの魅力であると感じました。
ウラジオストク市民の芸術性・創造性の高さを改めて感じた
芸術、創造性の街としてのウラジオストクです。このコロナ禍でもウラジオストクでは、マリンスキー劇場のオペラ・バレエを始め、JAZZフェスティバル、絵画展、写真コンクールなどの公式の芸術イベントが多数行われました。
そして非公式な面でも、噴水通りではエアーギタリストが毎晩ロック演奏をしたり、地下道ではバイオリニストがチャイコフスキーを弾き、ストリートアーティストは壁に絵を描き続けます。
ウラジオストクはバーもレストランも非常にレベルが高いと評判なのですが、バーマンは新たなカクテル作りに精を出し、コックは味と美しさを競った新メニューを作り続けます。ウラジオストクのバーやレストランは業界関係者の中で大評判ですが、ここにこの評判の理由を見た気がしました。
コロナ禍でも、これらの芸術、創造活動はとどまることはなく、むしろ通常の活動が制限される分、際立って感じられました。街中に芸術と創造性があふれるウラジオストクを感じ、コロナ禍でも元気をもらいました。
【10】コロナ禍後にウラジオストクを訪れたい観光客に宮本智さんからメッセージ
コロナ禍で感じたことが、そのまま街としてのウラジオストクの魅力につながるのですが、最後にウラジオストク旅行をコロナ後に計画される方向けに魅力を述べます。
ヨーロッパへの入口であり、アジアとヨーロッパの交差点(まさに東洋のイスタンブール?!)であり、ロシアが感じられるのがウラジオストクです。そしてここには、日本や他の国では味わえない、自然や芸術、創造性があり、やさしい人々がいます。
6年住んでも汲み切れない、枯れることのない泉のような街ウラジオストクにお越し頂き、ぜひご自身で街の魅力を味わってみてください。
宮本智さんが運営されている現地ツアー会社「有限会社うらじお」について
レポートは以上です。皆さんもウラジオストクの現状がどうなっているのかを垣間見れたと思います。最後に、宮本さんが運営する会社についても紹介。
有限会社「うらじお」は、ウラジオストクの魅力を多くの人々に知ってもらいたいと開設されました。ウラジオストクが初めての方も親切丁寧なスタッフがウラジオストクの街を案内してくれますよ。
▼有限会社「うらじお」のwebページはこちら(外部サイト)
コロナ禍が収まったら、ぜひウラジオストク行きの航空券はスカイチケットでお求めください。
▼ウラジオストク行きの格安航空券はこちら
【11】2021年はウラジオストク含むロシア全域で電子ビザスタート!新型コロナ禍の収束を祈ろう
ウラジオストクへは成田からのオーロラ航空が週1便の運航を再開しましたが、観光にはまだ時間がかかると考えられます。
その一方で、2021年1月1日にはロシア全域有効の電子ビザがスタート予定です。これまではできなかったウラジオストクからハバロフスク、バイカル湖、モスクワといった、ロシア国内の地域を越えた移動も可能に。シベリア鉄道の旅も本格的にできます。詳細は下記の記事で。
2020年、新たなデスティネーションとしてにぎわっていたはずのウラジオストク。日本から1番近いヨーロッパに1日でも早く行きたいですよね。新型コロナ禍が一刻も早く収束することを祈っています。
最後になりますが、宮本智さん、取材にご協力いただきありがとうございました。