名称:Wadi Al-Hitan(Whale Valley)
住所:Wadi Hitan National Park, Giza Governorate
公式・関連サイトURL:https://whc.unesco.org/en/list/1186/
エジプトの首都カイロの南西、ファイユームという街の郊外にある「ワディ・アル・ヒタン」は、2005年にエジプトで初めて登録された世界自然遺産です。
ワディ・アル・ヒタンは「クジラの谷」の意。この内陸の渓谷からは、なんと400以上ものクジラの祖先の化石が見つかっています。クジラの進化の経緯を探るという点だけでなく、当時の海洋環境を知る手がかりとしても重要なワディ・アル・ヒタン。カイロからのアクセスも容易なこの世界遺産の見どころをご紹介しましょう。
目次
ワディ・アル・ヒタン【エジプト世界遺産】海底だったクジラの谷
ワディ・アル・ヒタンとは?
エジプトといえばピラミッドが有名です。4000年から5000年前の昔々の遺跡見学を堪能したら、次はワディ・アル・ヒタンという世界遺産を訪ねてみましょう。
およそ4000万年前の新生代古第三紀というから桁が違います!世界のあちこちで恐竜や魚の化石は発見されていますが、これだけの規模で状態の良いクジラの化石は、他に見られないという貴重な自然遺産です。
周囲には広漠とした砂の大地が広がっていて、ここが海の底だったとはにわかには想像できません。ところが、あたりを見回すとあちこちに海洋生物の化石が転がっているのです。
大きなものだと、体長20mものクジラの全身骨格がそのまま砂漠に横たわっています!ほかにも、サメやカメのなかまの化石も見つかっていますよ。
ワディ・アル・ヒタンへのアクセス
ギザのピラミッド近くからスタートするファイユーム道路を1時間ほど走ると、カルーン湖とファイユーム市内への分かれ道に差し掛かります。これをカルーン湖方面へ向かい、ワディ・ライアン自然保護区の入り口までさらに1時間。ここからワディ・アル・ヒタンまでは、およそ36kmの道のりです。
公共交通機関はないので、カイロからのツアーに参加するか、車をチャーターするのが一般的です。
※【レベル2:不要不急の渡航は止めてください。】
ワディ・アル・ヒタン周辺は、2024年6月現在、外務省の【レベル2:不要不急の渡航は止めてください。】エリアです。絶対に無理はせず、レベル1未満になれば訪れてみてくださいね。
最新情報は、外務省の渡航情報をご確認ください。
名称:外務省 エジプト危険・スポット・広域情報
公式・関連サイトURL:https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_094.html#ad-image-0
ワディ・アル・ヒタンのおすすめポイント①:クジラの谷
「クジラの谷」ことワディ・アル・ヒタンでは、これまでなんと1000頭を超えるクジラの化石が発見されています。発見されたのは主にバシロサウルスという種類で、恐竜のような名前ですが研究によりクジラの祖先だと判明しています。
最大の特徴は、体に退化した後ろ肢があること。といっても人間の3歳児と同じくらいのサイズなので、とても歩くことはできなかったようです。ですが、クジラが陸上から海中生活に戻ったことを示す重要な手掛かりとなっています。地球上のあらゆる動物のなかでも、これだけ大きく変容した例はないといわれているんですよ。
ほかにもイルカに似た小型クジラのドルドンや、サメ、カメ、ジュゴン、そしてたくさんの魚の化石が発見されていて、ここがかつて海底だったとを実感できます。また、マングローブの化石が発見されているので、このあたりに海岸線があり、熱帯に属していたこともわかります。
ワディ・アル・ヒタンのおすすめポイント②:化石博物館
2016年1月にオープンした新しい博物館です。館内ではクジラの進化の歴史をたどるパネル展示や、ワディ・アル・ヒタン周辺で発見されたさまざまな化石を見ることができます。
とくに、クジラの谷を代表する巨大なバシロサウルスの全身骨格は必見!その特徴である、退化した後ろ脚の骨のディスプレイもあります。バシロサウルスやドルドンの復元図を見ると、よりいっそう想像力が掻き立てられるでしょう。現生のクジラとは大きく異なり、むしろ恐竜や魚竜に近い姿をしています。
展示されているのはクジラだけではありません。ファイユームで発見された、象の祖先につながるパレオマストドンの化石や、ワニの化石なども見どころの1つ。ちなみにワニは、6500万年前から最も変化していない生物とされています。また、博物館の正式名称は「化石と気候変動に関する博物館」で、6500年前から始まった大きな気候変動についての資料もそろっています。
◎エジプトの世界遺産「ワディ・アル・ヒタン」まとめ
ワディ・アル・ヒタン周辺には、まだまだたくさんの化石が眠っているといわれています。化石や恐竜好きの人はもちろん、ピラミッドなど定番の観光に来た人も、クジラの谷を訪れればきっと大いに興味をそそられるでしょう。なんといっても砂漠にごろごろと化石が置かれているんですから。
※2024年6月現在、ワディ・アル・ヒタン周辺には外務省の危険情報【レベル2(不要不急の渡航は止めてください)】が発令されています。これは不要不急の渡航を控えるよう要請するもので、デモに伴う衝突やテロなどに巻き込まれる危険性があります。この地域を訪れる際には、常に最新の情報に留意し、十分な安全対策を講じるようにしてください。