【世界遺産】ヴォーバンの防衛施設群|フランス全土にまたがる要塞とは?

【世界遺産】ヴォーバンの防衛施設群|フランス全土にまたがる要塞とは?

フランス国王ルイ14世に仕えたセバスチャン・ル・プレストル・ヴォーバンは、築城と攻城に優れた能力を発揮し、稜堡式城郭の体系を確立した人物です。18世紀当時、砲撃戦の発達により従来の高い塔を備えた城は時代遅れとなり、できるだけ低く構えた要塞が登場しました。

ヴォーバンは自身の軍学に基づいて、150もの要塞を設計・建設。彼の手がけたいわゆる星型の稜堡式城郭は"難攻不落の要塞"といわれ、実際の戦いで活躍したものも少なくありません。

日本でも函館の五稜郭がこの稜堡式城郭に相当しますが、その基礎を築いたのがヴォーバンです。ヴォーバンの手になる要塞群のうち、保存状態も良く、彼の構想が色濃く反映されている12か所が2008年、世界遺産に登録されました。

目次

【世界遺産】ヴォーバンの防衛施設群|フランス全土にまたがる要塞とは?

目次を閉じる

ヴォーバンの防衛施設群とは?

サン=ヴァースト=ラ=ウーグ「ヴォーバンの防衛施設群」世界遺産

軍事建築家セバスチャン・ル・プレストル・ヴォーバンは、フランス国王ルイ14世の命で17~18世紀にかけてフランス国内に150か所にもおよぶ要塞や要塞都市を築き上げました。そのうちフランスの外周に沿って並ぶ12か所の要塞建築物群が、「ヴォーバンの防衛施設群」として2008年にユネスコの世界遺産に登録されました。

ブリアンソンの城壁「ヴォーバンの防衛施設群」世界遺産

ひとくちにヴォーバンの要塞といっても、その形態はさまざま。海辺の砂洲から起伏の激しい山岳地帯まで、小さな砦から都市ひとつ分に及ぶものまで多種多様です。推薦時点では14か所が候補に挙げられていましたが、フランス中部のバゾシュと、ブルターニュ半島沖合の島ベル=イル=アン=メールの2件は、残念ながら除外されました。

ヴォーバンの防衛施設群へのアクセス

ブザンソン(フランス)

ヴォーバンの防衛施設群はフランス国内あちこちにあるので、それぞれのアクセスについては個別に検討する必要があります。要塞群の1つがある文化都市ブザンソンへは、西のディジョンから鉄道で1時間半。パリからは特急TGVで2時間20分で行くことができます。

ヴォーバンの防衛施設群のおすすめポイント①:ヌフ・ブリザック

ヌフ・ブリザック「ヴォーバンの防衛施設群」世界遺産

ヴォーバンの防衛施設群のなかでももっとも完全に近い形で残っているのが、ドイツとの国境アルザス地方にあるヌフ・ブリザックです。

1699~1703年にかけて造られたもので、ヴォーバンの作品のなかでも最後期に属する完成度の高い要塞といえます。ハプスブルク帝国の攻撃を退けた実績を持つだけでなく、八角形の幾何学的なヌフ・ブリザックの姿は、芸術的な要塞都市としても高く評価されています。

ヌフ・ブリザック「ヴォーバンの防衛施設群」世界遺産

1870年にドイツ軍によって破壊され、このころにはさすがにヴォーバンの要塞も過去の時代のものとなっていましたが、まもなく復興。戦略的な価値を失っていたことが逆に幸いしたのか、今日まで美しい星型稜堡を残しています。

要塞の端っこに駅があるので、コルマールやミュルーズ、ストラスブールといったアルザスの諸都市から鉄道で行くことができます。また、ドイツの観光都市フライブルクからライン川沿いの街ブライザッハを経由して、バスでヌフ・ブリザックに向かうルートもあります。

ヴォーバンの防衛施設群のおすすめポイント②:ブザンソンの城砦

ブザンソンの城砦「ヴォーバンの防衛施設群」世界遺産

ブザンソンは、スイスとの国境に近いフランス東部、ドゥー川の渓谷部にある小都市です。Ω型に屈曲する川の内側に市街地が広がり、城砦(La Citadelle)はその付け根の頸部に位置しています。平地のヌフ・ブリザックと異なり、地形的な制約の多い細尾根の上に築かれているため、外観からはやや武骨で荒々しい印象を受けます。

城塞内にいろいろな観光施設が詰まっているのも、この城砦の特徴。絶滅危惧種のアジアライオンやシベリアトラなどが見られる動物園をはじめ、水族館ら昆虫館、夜行性動物館、レジスタンスと強制収容所博物館、コンテ民俗博物館、エスパス・ヴォーバンなどが入っていて、要塞以外の見どころも盛りだくさんです。

ブザンソン旧市街から川を挟んだ対岸にも、半円形に広がるヴォーバンの作品「グリフォン要塞」があります。その一角には、中世的な方形の塔があり、周辺は市民のちょっとした憩いの場になっています。ブザンソンに滞在するなら、川沿いの散策ついでに立ち寄ってみるのも良いでしょう。

ヴォーバンの防衛施設群のおすすめポイント③:ブライの城砦

ブライの城砦「ヴォーバンの防衛施設群」世界遺産

フランス南西部の中核都市ボルドーから、ジロンヌ川を20kmほど下ったところにある小さな町ブライ。ここにも、イギリス軍が海から川を遡って攻めてくることを想定して築かれた城砦があります。半月型の稜堡式要塞がほぼ完全な姿で残っていて、街の重要な観光資源となっています。

堅固な外郭部分に対して、要塞内はのどかな史跡公園となっています。資料館や観光案内所、軽食店、ワイナリーのほか、キャンプ場もあります。かつての要塞から空を眺めながら一夜を過ごすというのも、なかなか貴重な体験ですね。

対岸のキュサック=フォール=メドックにも、五稜郭ならぬ四稜郭とも呼ぶべき小さな要塞があり、これもヴォーバンが手掛けたものとして世界遺産に登録されています。こちらは車がないと訪れるのは大変ですが、ボルドーのワインシャトー巡りなどをする際に立ち寄ってみるのもアリですね。

◎世界遺産「ヴォーバンの防衛施設群」まとめ

カマレ・シュル・メールの黄金の塔(世界遺産)ヴォーバンの防衛施設群

ヴォーバンの防衛施設群はフランス全土にまたがっているため、一度にすべてを見て回るのはほぼ不可能です。しかし、築城の名手と謳われたヴォーバンの12か所の防衛施設群は、それぞれ一見の価値があります。フランスの外周付近を旅行する際には、ヴォーバンの要塞が近くにないか、とりあえず探してみてください。

国内のエリア一覧

海外のエリア一覧

カテゴリー一覧

フランスでおすすめの記事

フランスのアクセスランキング