名称:Völklingen Ironworks
住所:Rathausstraße 75-79, 66333 Völklingen
公式・関連サイトURL:https://www.voelklinger-huette.org/en/welcome/
ドイツとフランスの国境近く、ザールラント州にあるフェルクリンゲン製鉄所は、ドイツの産業の歴史をのものを体現した世界遺産です。操業当時の姿をそのまま全て残しているという点でも世界で唯一の製鉄所で、1994年に産業遺産として初めてユネスコ世界遺産に登録されました。
60万平方メートルという広大な敷地をもつ製鉄所跡は、銑鉄精錬の全工程を辿ることができることから、「工業文化のイコン」や「労働のカテドラル」とも呼ばれています。今では世界遺産としての見学者だけでなく、コンサートやイベントなどさまざまな用途と目的で多くの人が訪れる観光スポット。今回は、ドイツのが誇る産業遺産フェルクリンゲン製鉄所の見どころについて解説します。
目次
【世界遺産】フェルクリンゲン製鉄所とは?|世界初の産業遺産をご紹介
フェルクリンゲン製鉄所とは?
ザール川沿いのフェルクリンゲンに最初に製鉄所が建設されたのは1873年のこと。ですが、この工場は当時の高い関税のためにわずか6年で操業を停止します。1881年には起業家のカール・レヒリングが閉鎖していた製鋼所を買い取り、2年後に溶鉱炉を稼働しました。鉄鉱石は近接するロートリンゲン地方から調達し、レヒリングの鉄鋼会社は急成長します。
第二次世界大戦では、多くの戦争捕虜や強制労働者がフェルクリンゲンでも働かされていたといわれています。戦争末期にはドイツ国内のほとんどの工場が爆撃を受けるなか、このフェルクリンゲン製鉄所だけはほとんど無傷で終戦を迎えました。このことは今なお「フェルクリンゲンの奇跡」といわれています。そのため、フェルクリンゲン製鉄所がすぐに操業を再開できたことは、ドイツのみならずヨーロッパ全体の復興に大きく寄与しました。
1986年には製鉄所としての役割を終え、再び操業を停止します。そこからすぐに産業記念物保護指定として修され、観光での見学が可能になりました。そして1994年に、初の産業遺産として世界遺産に登録。その後は、年間20万人以上の人々が訪れる観光名所となっています。
フェルクリンゲン製鉄所へのアクセス
フェルクリンゲン製鉄所へ行くには、まずザールラント州の州都ザールブリュッケンを目指します。フランクフルト中央駅かフランスのパリ東駅から鉄道に乗るのが一般的で、どちらも特急列車でだいたい2~3時間です。
ザールブリュッケン駅からフェルクリンゲン駅までは、普通列車でわずか10分。駅から製鉄所までも、歩いて5分とかかりません。
フェルクリンゲン製鉄所のおすすめポイント
1. 製鉄所施設
フェルクリンゲン製鉄所は世界遺産としてだけでなく、ヨーロッパの産業史を語るスポットとしても重要です。廃墟とはいえ完全な姿のまま残っていて、さらに見学もできるところとなると、なかなかお目にかかれません。
巨大な高炉6基は、近くで見るとかなりの迫力がありますよ。大型機械が残っているブロワーホールに、珍しい斜行昇降機はフェルクリンゲン製鉄所ならでは!30mほどの高さの炉口は、製鉄所がピークのときの産業技術の粋といわれています。ちなみにこの炉口には、ヘルメットを借りて登ることができます。工場の廃墟ということで少し恐怖感があるかもしれませんが、上からの景色は絶景です。
その他にも見学ルートがいろいろ整備されているので、世界遺産となったフェルクリンゲン製鉄所をさまざまな角度から楽しむことができます。日が沈むと工場夜景よろしくライトアップもありますよ。闇夜に浮かび上がる鉄骨の塊は、他所では見られない幽玄さを湛えて絶大な存在感を発揮します。
2. 施設見学・ガイドツアー
世界遺産フェルクリンゲン製鉄所には観光客が見学できる巡回ルートが整備されています。至るところに説明板が設置されている…ということもなく、ルートに沿って歩きながら当時の雰囲気を味わいます。
それだけでは物足りない人や、フェルクリンゲン製鉄所のことをもっと知りたいという人は、ガイドツアーがおすすめ!とくにかつての過酷な労働をそのまま教えてくれる元従業員のガイドツアーは人気ですよ。ほかにも工場で働いていた女性たちの足跡をたどるツアーもあり、普通の観光とは違った目線でフェルクリンゲン製鉄所の歴史をたどることができます。
オーディオガイドは公式ホームページからもダウンロードできるようになっています。世界遺産フェルクリンゲン製鉄所について予習をしておきたい人は、ぜひ訪問前に聞いてみてください。
フェルクリンゲン製鉄所の注意事項
世界遺産フェルクリンゲン製鉄所の敷地内は基本的に飲食禁止です。スナックを売っているスペースやピクニックスペースはあるので、どうしても何か食べたくなったらそちらに行きましょう。
フェルクリンゲン駅周辺にも飲食店やショップは点在していますが、日本の観光地のイメージで行くと閑散とした印象を抱くかもしれません。フェルクリンゲンの街中もそれほど観光客向けという雰囲気ではないので、大きな食事はザールブリュッケンでとることをおすすめします。
◎まとめ
100年以上もヨーロッパの産業を支えてきたフェルクリンゲン製鉄所は、操業こそしていないものの、現代の人々にその歴史を語り伝えている生きた博物館といえるでしょう。ドイツ語が分からなくても、見ているだけでも十分に楽しむことができます。近年は日本でも明治の産業遺産や工場夜景など産業に関する観光が注目を集めています。この機会に、世界初の産業遺産であるフェルクリンゲン製鉄所を訪ねてみてはいかがでしょう。