ハイチ - ポルトープランスについて

ポルトープランス（ハイチ）はハイチ共和国の首都であり、首都圏で計算した場合には250万人から300万人ほどの人口規模を誇ります。町の名前はフランス語で「王子の港」という意味であり、ハイチの西海岸に広がるゴナーヴ湾に面しており、湾岸が商業地区、丘陵が高級住宅地という都市構造になっていることもポイントです。
歴史がある古い町で、探検家として世界的に有名なクリストファー・コロンブスが到着する以前は、後にポルトーフランスとなる周辺には永住者は居ませんでした。15世紀末時点で土地を支配していたのは、ハラグア地方に住むインディアンのタイノ族首長のボヘチョでしたが、周辺の島々には南アメリカを原住地とするカリブ語系インディオのカリブ族が展開しており、海辺は狩猟の場でこそありましたが、定住するのにはリスクがありました。その後、スペイン人の到着で先住民全般は保護領に組み込まれることとなり、ボヘチョは子孫を残さないまま他界し、後継者にアナカオーナが擁立されます。彼女はスペイン人との間に友好関係を築けないかと模索しますが、スペイン側の要求は実現困難な物が多く、1503年にはスペイン人のハイチの直接支配が決定します。そして統治者となったアルカンタラ騎士団の騎士であったニコラス・デ・オバンドーは、アナカオーナ体制の排除を画策し、酒宴を要して彼女ら中心人物たちを酔わせ、最終的にはアナカオーナも含めた全員を処刑したのです。その結果、周辺地域のオバンドーたちスペイン人の支配体制はほぼ確立し、サンタ・マリア・デル・プエルトの町が完成しますが、1535年と1592年にフランス人探検家とイギリス人による焼き討ちで維持が困難となり、1606年にスペイン人はこの地を放棄することとなります。
その後、この地方に海賊のバッカニアたちが入るようになり、そこに革製品を求めるオランダ人商人も集まったために、現在のポルトープランス付近は急激に人口が増えていきました。1650年頃にはフランス人海賊やフィリバスターたちも集まりました。それに対し、公的な権利を未だ有していたスペインがこの地方を改めて奪還しようとしますが、最終的に敗退したのです。1697年のレイスウェイク条約で、スペインはポルトープランスも含めたロピタル地域の権利を放棄し、ハイチはフランス領となります。その後、現在のポルトープランス周辺に住んでいたフィリバスターたちとフランス政府の間で対立が起きた結果、フィリバスターたちが排除され、1706年にド・サン・タンドレを名乗る船長が周辺地域を守るためにル・プランス号という船でロピタル地区に入場し、周辺を「ポルトープランス」と命名しました。この出来事が、首都になる新しい都市のポルトープランスの誕生へと繋がります。都市が建設されたのは、1749年のことでした。
都市が誕生してからも混乱の時期は続き、1770年には、首都がポルトープランスから北部にあるカパイシャンに移行した時期もありました。ですが、1803年にハイチはイギリス軍の援助をバックグラウンドとし、フランス軍を駆逐し、1804年1月1日にハイチは独立国となって、この時に首都は再びポルトープランスになり現在に至ります。ちなみに、ハイチ革命やフランス革命等の混乱期は、ハイチ独立運動の支配者であるジャン＝ジャック・デサリーヌにより正式な改名が行われるまでは、ポルトープランスという名よりもポール＝レピュブリカンという名前の方が有名でした。国が南北に分断されていた時期には、南部の共和国のアレクサンドル・ペションの支配下にあり、南部共和国の首都でもありました。ただ、町の名前はジャン＝ジャック・デサリーヌが改名した後も紆余曲折があり、彼が暗殺された後にその後を継いだ北部共和国の大統領アンリ・クリストフが、町の名前をポルトークリムとしたことがあります。
ポルトープランス周辺の気候についてですが、ポルトープランスは熱帯気候に分類され、1年を通じて高温であることで知られています。平均27度から30度であり、4月から6月と8月から10月は特に雨が多くなることもポイントです。ケッペンの気候分類ではサバナ気候扱いとなります。
ポルトープランス観光として、博物館や美術館があります。おすすめの地域は、ポルトープランスの基盤となったロピタル地区の旧市街などです。町の発端となった場所ですので、この地区には多くのランドマークもあり、訪れてみて損はありません。都市単位で有名なランドマークはゴナーヴ湾になります。