アメリカ - ニューオリンズについて

ニューオリンズは、アメリカ南東部に位置するルイジアナ州で最大の都市です。ルイジアナ州は十六世紀にスペインやフランスから海を渡り入植した歴史を持ち、特にフランスは広大な地域を支配しました。ルイジアナという名は、フランス国王ルイ十四世にちなんで名付けられました。ニューオリンズもまたオルレアン公フィリップ二世にちなんだ名です。フランスはイギリスやスペインと州の支配権を争い、権利を奪われることもありました。当時アメリカはイギリスからようやく独立を果たしたばかりで、まだ入植した国と権利は対等だったのです。したがって、現在ならば一方的に排除できるでしょうが、その頃は交渉によって買い取るしか方法はありませんでした。ミシシッピ川に面するニューオリンズは、川を利用してアメリカの物資を運搬する際に欠かせない重要な都市でした。紆余曲折あった中アメリカはようやくルイジアナ州を買収し、管轄権を譲り渡す式典がニューオリンズで開催されました。ヨーロッパ人の入植を初め、綿花と砂糖きびのプランテーション農業における黒人の使役といった歴史上、複雑な人種構成が州の特徴です。ニューオリンズはほぼ北緯三十度の位置で、日本でいえば奄美大島くらいの緯度です。ですから気候区分は温暖湿潤で日本とよく似ているものの、冬でも平均最低気温は0度以下になることはありません。概観すると、夏が長く蒸し暑い一方冬は短いが酷く寒くはならず、海に近いせいか風が強く年間を通して湿度が高めなのが特徴です。ニューオリンズを訪れる際は、季節と服装の関連について日本と同様の準備で困ることはないでしょう。アメリカで人気の観光都市を挙げると必ず上位にランキングされるほど、ニューオリンズは多くの名所や見どころが存在します。とりわけフレンチ・クオーターは最も歴史がある地区として知られ、カナル・ストリートとエスプラネード・アヴェニューそしてランパート・ストリートさらにミシシッピ川で区切られた地域を指します。フランス植民地時代の建物を初め、スペイン統治時代の建物などを見ることができます。フレンチ・クオーター中心部の公園ジャクソン・スクエアは、第七代大統領の名にちなんでおり、公園の前には北米最古の大聖堂セントルイス大聖堂がジャクソン像とともに端然と訪れる人々を迎えます。ジャクソン・スクエアの通りをはさんで向かい側にあるオープンカフェも、映画のワンシーンを飾ったことがあるほどの人気スポットです。またこの地域には、有名シンガーの曲の題名にもなったバーボン・ストリートがあります。昼は比較的穏やかな通りですが、夜ともなるとバーやレストランなどネオンが人の心を魅了し、音楽が流れ、笑い声があちらこちらから聞こえます。ニューオリンズはまさにジャズ発祥の地で、解放された黒人たちやクレオールらによって始まりました。そんな本場の音を聴くにふさわしい場所が、プリザベーション・ホールでしょう。小さなホールは簡素で、古い長椅子が数脚と壁際に別の椅子があるきりで立ち見や床に座る聴衆もいるほどです。ジャズマンの息づかいや温度が伝わり、一度訪れると忘れられない体験となるに違いありません。伝統あるプリザベーション・ホール以外にも、バーやライブハウスでロックやブルース、R&Bなどの生演奏が楽しめるのもバーボン・ストリートの醍醐味です。ジャズの歴史資料に触れたいときは、セントルイス大聖堂からほど近い、ルイジアナ州立博物館が最適です。ジャズ以外にもニューオリンズの祭りマルディグラに関する展示や、プランテーションに関する展示などを知ることができます。マルディグラはカトリックに由来する祭りで、クリスマスから数えて十二夜から始まります。ブラジルで開催されるリオのカーニバルと並び世界でも有名な謝肉祭です。パレードや舞踏会そしてキングケーキパーティが連日催され、期間中は多くの観光客で賑わいます。ニューオリンズではケイジャン料理もまた有名です。タバスコやチリソースなど辛いスパイスが特徴で、米を初め豆類やセロリ、トマト、たまねぎを主に用います。ケイジャンとはカナダ南東部の旧フランス領アカディアから移住したフランス系移民を指し、ジャンバラヤやガンボもケイジャン料理の一つです。スパイスをきかせる料理が多いせいもあって、スパイス専門店をフレンチ・クオーター地区で見つけることができます。さまざまな文化が混ざり合い古き良き時代を残す街こそが、ニューオリンズです。