アメリカ - アバディーン(アメリカ)について

アバディーン(アメリカ)はワシントン州西部のグレイズハーバー郡の町です。「オリンピック半島への入口」という通り名が特に有名で、郡庁所在地でこそありませんが郡内最大の人口1万6461人を抱える町であり、西隣のホーキアム、東隣のコスモポリスと共にグレイズハーバーの経済の中心を担っています。アバディーンは世界的に有名なバンド「ニルヴァーナ」のボーカル・リードギタリストであるカート・コバーンの出身地であり、また同じバンドのベーシストのクリス・ノヴォセリックが少年時代を過ごした町としても知られており、2人が出会った町であるということもあって「グランジのふるさと」と呼ぶ人も少なくありません。
他にも、海賊映画として大ヒットした2003年公開の「パイレーツ・オブ・カリビアン呪われた海賊たち」に海賊船インターセプター号として登場したレディー・ワシントン号のレプリカがある町でもあります。映画やバンドのヒットもあり、レディー・ワシントン号や「ニルヴァーナ」こそがアバディーンのランドマークであるとの呼び声も高いです。
アバディーンの気候は冷たい夏と、温暖な冬が大きい特徴で、年間を通して気温差が大きくなることがありません。海洋性の気候であり、夏の降水量はあまりないとはいえカリフォルニア州の南部のように極端な乾燥がないことで知られていますが、逆に冬の降水量は非常に多く、月間で250mmを超えたりもします。暑いのが苦手な人にとっては過ごしやすい町といえますが、冬場に体調を崩しやすい人で長期滞在の予定がある場合には、相応の対策をとっておくことをおすすめします。
アバディーンの歴史は古く、1884年にサミュエル・ベンによって創設され、6年後の1890年の5月12日に正式な市へと昇格しました。町の名前はこの頃に町で動き始めていた鮭の缶詰工場と、スコットランドのアバディーンの同じ工場の立地と似ていたことから付けられた名前が「アバディーン」でした。
初期のアバディーンは現在のようにグレイズハーバー最大にして最も名が通った港町というわけではなく、近隣にあったホーキアムやコスモポリスにかなり遅れをとっていました。1884年にアバディーンではA・J・ウェストが町で最初の製材所をスタートさせましたが、この頃には他の2つの町は既に都市として活動をしていたことからも違いがうかがえます。
その状況に転機が訪れたのが、ノーザン・パシフィック鉄道の延伸計画が町に聞こえてきたときです。アバディーンやホーキアムの住人たちは当然、自分たちの周辺がターミナル駅になるものと思っていましたが、計画はコスモポリスを素通りして西のオコスタへ向かうものでした。この状況をよしとしなかった各都市の住人たちは町に支線を敷くための運動を展開し、アバディーンの町に鉄道の支線が1895年に敷かれることとなって、結果的にアバディーンの町は大きく発展することとなりました。
そして、それから5年後の1900年代の入るとしばらく町は混乱期に入りました。鉄道が入ったこともあり、町には酒場やカジノ、売春宿が立ち並び大きく賑わいますが、殺人などの凶悪事件の発生率も同じく上昇します。その様子は「太平洋の地獄への入口」や「迷い込んだ男たちの港」などと揶揄される程であり、1929年の世界恐慌が起きるまで混乱は続くこととなりました。世界恐慌の痛手で37あった製材所が9にまで激減してしまうこともありましたが、それから少しずつ持ち直し、現在に至っています。現在の中心産業も製材と漁業が中心であることもポイントです。
アバディーンのランドマークは幾つかありますが、やはりニルヴァーナの影響もあって、アバディーン歴史博物館が外せません。ここにはギター演奏するカート・コバーンの像があり、他にも当時の鍛冶屋や雑貨屋を再現したコーナーのクオリティが高いということで人気になっています。他にも、ブロードウェイヒルもランドマークと呼ぶのに相応しいです。アバディーンの材木王が築いた大邸宅郡は見ごたえがありますし、地面に描かれた羅針盤なども一見の価値があります。グレイズハーバーヒストリカルシーポートも「パイレーツ・オブ・カリビアン」のファンであるならば、訪れることをおすすめします。
宿泊については、アバディーンのどのスポットに重点を置きたいかによりますが、基本的に市内の中心街に泊まっておけば全てのポイントをまんべんなく回れるでしょう。治安情報も深刻な物は特にないので、最低限の海外防犯意識を持っておけば楽しい旅行ができます。