ウズベキスタン - サマルカンドについて

サマルカンドはウズベキスタン共和国の東部に位置する都市で、世界遺産にも登録されています。ソ連時代であった、1930年まではウズベク・ソビエト社会主義共和国の首都でした。サマルカンドという名前は、世界史の教科書に必ず登場するので記憶にある人もいるでしょう。青の都、東方の真珠という異名を持つこの都市は、紀元前10世紀頃からイラン系住民のオアシス居住地として発展しました。ギリシャ史でも、アレクサンドロス大王のペルシャ遠征に近郊のソグディアナで攻防戦が行われたことが記されています。中国史では、中央アジア地域のソグド人都市国家「昭武九姓」の１つ「康国」とされ、中国ではこの地域の出身者は「康」の姓を名乗っていました。この地の主な住民であるソグド人は古来商才に長けた民族として、大陸の東西を結ぶシルクロードを行き来していたことも有名です。そのため、この都市は近隣の都市国家連合の盟主として君臨していました。中国以外で最初に紙の生産が行われたのもこの都市です。712年にウマイヤ朝がこの地に侵攻したことでイスラム化が進みましたが、支配者が変わりながらも1200年代まで商業都市として繁栄を続けていました。1220年に東から侵攻してきたモンゴル帝国の襲撃を受けたことで、この地の様相は一変します。当時、シルクロードは十字軍の影響で地中海に抜けるルートがなくなったため、黒海へ抜けるルートが利用されるようになりました。サマルカンドはこのルートの大半を支配するホラズム・シャー朝の首都になっていたため襲撃を受けたのでしょう。1200年代までの市街は、現在の市街北部に位置しているアフラシヤブ遺跡に残っているので、かつての都市の跡を見ることができます。今もサマルカンドに残る文化財等の多くを築いたのは、このモンゴル帝国による破壊の後に支配者となったティムールやその子孫たちです。14世紀から15世紀にかけてティムール朝の首都になったサマルカンドは、市街地の内部にグーリ・アミール廟やビービー・ハヌム・モスクを築き、旧市街のアフラシヤブにはシャーヒ・ズィンダ廟群を建造しました。これらはランドマークとしても知られています。グーリ・アミール廟は、初代ティムールと息子シャー・ルフやミーラーン・シャー、孫のウルグ・ベクとムハンマド・スルターン、ティムールの恩師たちの墓所です。青いタイルを張った玉葱形のドーム屋根と前方の入り口でもある空間（イーワーン）の鍾乳洞を模したムカルナス式の装飾の外観で知られています。ムカルナス式はイスラム世界ではよく見られる装飾で、建物の内部にも施されているのが特徴です。建物の装飾には青のタイルの他、金や瑪瑙、大理石等も使用されています。この廟は元々急逝したティムールの孫ムハンマド・スルターンのために建設されました。ティムールには故郷に墓所を用意していましたが、山岳地帯の積雪で遺体が運べずこの地に埋葬されています。ティムールの妻の名を冠したビービー・ハヌム・モスクも同時代の建築物です。当時でも短すぎた工期のため、荒廃の進みが早く過去の地震で一部が崩壊してしまいました。現在のモスクはソ連時代に再建築されたものです。モスクに近くには2000年も続いているウズベキスタン最大のシヨブバザールがあります。これらの建築には青色のタイルが多用されているので、これが「青の都」の由来でしょう。このタイルは中国の陶磁器とペルシャの顔料から生まれたす。シルクロードの一大拠点であったサマルカンドらしい品でしょう。ティムール朝の後は近隣諸国の争奪が激化し、1600年代にブハラを首都とするブハラ・ハン国の支配下となってことで首都の座を降ります。レギスタン広場の残り２つのマドラサを建築する等、首都の座を降りても中央アジアの主要都市としての機能を保っていました。ブハラ・ハン国が弱体化し、1868年にソ連の支配下となりましたが、ウズベキスタンの独立後には、シルクロードの要衝の町として、再び観光に力を入れています。ウズベキスタン全体が中央アジアの大陸性気候に属しているので、サマルカンドも寒暖の差が激しい地域です。夏は乾燥し摂氏40度近い酷暑になりますが、冬は厳しい寒さが続き1月には氷点下となり雪が積もることも少なくありません。標高700メートル程の高地にあるため、首都のタシケントより夏の朝晩が涼しいと言われています。ステップ気候から地中海性気候に移行する地域に位置しているので、1年を通じて雨が少なく晴天の日が多い地域です。そのため「青の都」の名にふさわしい、抜けるような青空を見ることができます。