ロシア - サンクトペテルブルグについて

サンクトペテルブルグはロシア連邦の西部、北緯60度の高緯度に位置する大都市です。このため冬の日照時間が非常に短く、気温はマイナス25度前後の日々が続くことも珍しくありません。その一方で、初夏に入る5月半ばから7月半ばにかけては、1年の中で最も日照時間が長くなります。同時に、日の出前の明け方と、日の入り後の薄暮が、長時間にわたって続く現象が起こるのも、この都市の特徴です。ケッペンの気候区分では亜寒帯の湿潤大陸性気候に属するエリアということもあり、年間の降雪量は約300cmにも達します。これはヨーロッパの主要都市の中では、極めて降雪量の多い都市といえます。ちなみにサンクトペテルブルグにおける過去の最低気温は1883年のマイナス35.9度、最高気温は2010年8月の37.1度です。
かつてはロシア帝国の首都として栄え、現在ではレニングラード州の州都であるサンクトペテルブルグには、有名なランドマークが豊富にあります。
最初に紹介したいのは、エルミタージュ美術館です。ここはかつてのロシア帝国の宮殿であり、「冬宮殿」の名称でも知られるサンクトペテルブルグを象徴するランドマークの一つです。美術館の建物は1762年に完成した古い歴史を有し、皇帝エカチェリーナ2世がコレクションした美術品などを、保管及び展示する場所として機能しました。あくまでも皇帝の私的なコレクションであったため、当初は一般公開を前提としていませんでしたが、アレクサンドル2世時代の1863年になると、一般市民が自由に観覧できるようになりました。なお、エルミタージュ美術館の本館として使用されることが決まったのは、ロシア革命（十月革命）後のことです。建物の設計にはイタリア人の著名な宮廷建築家、バルトロメオ・ラストレッリが担当しました。白と薄緑の石材を取り入れた、ロココ様式の建築スタイルを基調とし、華麗で優雅な外観が特徴です。また、南側には大きな宮殿広場を配置しており、ここにはナポレオン戦争の勝利を記念して建てられた、高さ47.5mもの「アレクサンドルの円柱」がそびえ立ちます。
この美術館と同じく、皇帝と関わりの深い有名なランドマークが、サンクトペテルブルグにはもう一つあります。それこそまさに、エカチェリーナ宮殿です。第2代ロシア皇帝エカチェリーナ1世によって1717年に建てられた、避暑用の離宮を前身としており、「冬宮殿」に対して「夏宮殿」とも呼ばれています。その後は第6代ロシア皇帝のエリザヴェータが、1756年に本格的な拡張と改修を命じ、現在の全長325mもの壮大な宮殿になりました。宮殿の設計には「冬宮殿」と同じく、バルトロメオ・ラストレッリが担当しました。建物の外観もよく似ており、白や水色の石材を用いた、ロココ様式の建築スタイルを採用し、柱頭や窓あるいはベランダ部分には、金色の精巧な彫刻や装飾物が施されています。まさにランドマークと呼ぶのにふさわしい、荘厳で華やかな姿といえるでしょう。
サンクトペテルブルグには教会や寺院あるいは修道院など、宗教的なランドマークも充実しています。そのうち見逃してはならないのが、聖イサアク大聖堂でしょう。これはピョートル大帝の時代にまで遡る、歴史と由緒あるロシア正教会の大聖堂です。その名称も、ピョートル大帝の守護聖人である聖イサアクに由来しています。現在の建物はアレクサンドル1世の時代のもので、フランス人の宮廷建築家オーギュスト・ド・モンフェランの設計により、1858年に完成しました。建物のスタイルについては、ロシア・ビザンチン様式をベースにしながら、新古典主義の建築様式も加えた、重厚かつ厳かなデザインが特徴です。聖堂の中央部からは、高さ101.5mにも及ぶ巨大なドームが、シンボリックにそびえています。
サンクトペテルブルグ市内で観光するなら、サンクトペテルブルグ歴史地区に指定されている、各エリアがおすすめです。ここにはユネスコの世界遺産に登録された、貴重な建造物が数多く集まっています。たとえば旧海軍省周辺のエリアであれば、先述したエルミタージュ美術館や聖イサアク大聖堂をはじめ、市議会議事堂に使用されているマリインスキー宮殿や、皇帝ニコライ1世の王女のために建造されたニコラエフスキー宮殿など、数々の歴史的な巨大建築物を目にすることができるのです。この他にも、ミハイロフスキー宮殿が所在するネフスキー大通り周辺エリアや、ペトロパヴロフスク要塞で知られるネヴァ川沿いのエリアなど、魅力的な観光スポットがたくさんあります。