イラン - シーラーズについて

シーラーズは、イランの南西部にある都市です。ファールス州の州都でもあり、イランの電器産業や石油精製など工業の一大拠点でもあります。セメント製造なども行われていますし、砂糖や肥料繊維製品、木製品、金属加工品などの生産も行われています。絨毯や花卉栽培の産地としても有名です。シーラーズはザグロス山脈中に位置しており、標高1500m程度の高原都市でシーラーズはステップ気候に属していますが、地中海性気候の要素もあり、夏は35度を越えるなど非常に暑くなります。ただ朝や夜は涼しくなるので、熱帯夜になって寝苦しいということはほとんどありません。冬になると日中は暖かいですが、朝や夜は氷点下の気温になることもありますが温和な気候なので柑橘類やブドウ、綿、米などの栽培に適しており、農業も盛んに行われています。シーラーズにはシーラーズ国際空港もあり、国内外から観光客も訪れます。シーラーズ国際空港は、イランの中では2番目に利用者の多い空港です。シーラーズを観光するなら、シャー・チェラーグ廟とナスィーロル・モルク・モスクは外せません。シャー・チェラーグ廟は、鮮やかなモザイクデコレーションが魅力のモスクです。シャー・チェラーグには、光の王という意味があります。霊廟の主はシーア派・十二イマーム派の第七代イマームでムーサー・カーズィムの息子ムハンマドとアフマドです。ムハンマドとアフマドはアッバース朝によって迫害されたので、この地に移ってきたと言われています。アッバース朝はイスラム帝国第2の世襲王朝で、中東地域を支配しました。ムーサー・カーズィムが生まれたのはアッバース朝がウマイヤ朝と争っていた時代で、アッバース朝のカリフによって獄に下され毒殺されたと伝えられています。シャー・チェラーグ廟は元々は普通の廟でしたが、14世紀に芸術を好んだ皇太后がモザイクデコレーションを施しました。色が付いた鏡を使ったもので、非常に華麗で観光客にも人気があります。ナスィーロル・モルク・モスクは、ガージャール朝の統治者によって1876年から1888年にかけて建設されたモスクです。ピンク色のタイルが多用されているので、ピンクモスクとも呼ばれています。また、床のタイルには薔薇の花のタイルが使われているので、ローズ・モスクと呼ばれることもあります。薔薇の花はシーラーズのシンボルです。ナスィーロル・モルク・モスクはファサードにも色付きガラスが使用されています。それでいて伝統的な要素も随所に見られる貴重なモスクです。早朝にステンドグラスから朝日が差し込む際には、とても美しい姿を見ることができます。色とりどりの光に彩られたエキゾチックな雰囲気に包まれます。それからシーラーズ付近にはペルセポリスやパサルガダエといった古都の遺跡もあるので、観光の際には立ち寄ってみるのがおすすめです。ペルセポリスはダレイオス1世が建設した宮殿群で、アケメネス朝ペルシア帝国の都でもありました。ペルセポリスは1979年に世界遺産に登録されています。1971年に開催されたイラン建国二千五百年祭典の会場にもなりました。ペルセポリスが建設され始めたのは紀元前520年のことです。ペルセポリスにはペルシア人の都という意味があり、新年祭を執り行う場として利用されていました。諸民族から貢物を受け取って、アケメネス朝の権威を知らしめる目的があったとされます。ペルセポリスは紀元前331年にアレクサンドロス大王によって破壊されましたが、その壮大な遺構は残されています。パサルガダエもユネスコの世界遺産に登録されている貴重な遺跡で、アケメネス朝のキュロス2世によって建設されました。ペルセポリスから87kmの距離にあり、パサルガダエはペルシャ帝国の最初の首都で、キュロス2世のものと思われる墳墓やタレ・タフト要塞、王室、庭園などがあります。パサルガダエ庭園は、イランで初めての四分法に基づいて建設されたペルシャ式庭園であり、ゾロアスター教の4つの元素である「水」「土」「火」「空」によって分けられています。ペルシャ式庭園はスペインのアンダルシアから西インドまで幅広い地域に影響を与えた庭園様式です。パサルガダエの遺跡とは別に、庭園部分も他のイラン国内にあるペルシャ式庭園と一緒に世界遺産に登録されています。シーラーズにはエラム庭園というペルシャ式庭園もあるので庭園巡りも楽しめるでしょう。エラム庭園はシーラーズ大学にありますが、博物館として一般公開されています。