美しき強制収容所！世界遺産「ソロヴェツキー諸島の文化的・歴史的遺産群」

北極海とノルウェー海の間のバレンツ海に開いたロシア北西部の白海。その最奥のオネガ湾の口をふさぐように、6つの島からなるソロヴェツキー諸島が横たわっています。

ここには15世紀後半に建てられたロシア正教のソロヴェツキー修道院が、とても美しい状態で残っています。ロシア特有の玉ねぎ型の屋根をもつこの修道院は、海と小さな湖の狭間に建ち、島ののどかな景色に見事に調和しています。

このように書くとただ綺麗なだけの世界遺産のように思うかもしれません。しかしソロヴェツキー修道院は、要塞や強制収容所として幾度となく血を流してきた凄惨な歴史ももっています。そんな2つの顔をもつ世界遺産ソロヴェツキー諸島の文化的・歴史的遺産群について解説しましょう。

ソロヴェツキー諸島の文化と歴史遺産群とは？

世界遺産「ソロヴェツキー諸島の文化と歴史遺産群」は、ブラゴポルーチヤ湾に臨むソロヴェツキー修道院を中心に構成されています。この修道院は15世紀後半に2人の修道士によって建てられ、16世紀後半にはロシアで最も影響力のある聖地と考えられていました。

しかし、この石造の修道院は16～20世紀にかけて要塞として重要視され、次々と戦争に巻き込まれました。また、1921年からはソビエト連邦の最初の強制収容所として使用され、何万人という人々が飢餓や病気、暴力等により亡くなりました。

美しい風景と修道院の島というだけでなく、暗く悲しい歴史に翻弄されたソロヴェツキー。1939年に強制収容所が閉鎖されると、その歴史的・景観的価値が認められ、1992年に世界遺産となりました。

ソロヴェツキー諸島の文化と歴史遺産群へのアクセス

世界遺産のソロヴェツキー修道院へは、西の対岸のケミという町からフェリーで行くか、白海沿いの最大都市アルハンゲリスクから飛行機で行けます。ただし、白海は冬には凍ってしまい、フェリーは運休となります。

日本からモスクワまでは飛行機で10時間。モスクワの2つの国際空港からアルハンゲリスクまでは2時間弱です。アルハンゲリスクからソロヴェツキー諸島のソロフキ空港へは、1時間ほどで到着します。空港から修道院までは、徒歩で10分ほどの距離です。

ケミへは、カレリア共和国の首都ペトロザヴォーツクから夜行列車で行くことができます。ペトロザヴォーツクへはモスクワのドモジェドヴォ空港から飛行機が出ているほか、サンクトペテルブルクから鉄道で行く方法もあります。

ソロヴェツキー諸島のおすすめポイント①：ソロヴェツキー修道院

世界遺産「ソロヴェツキー諸島の文化と歴史遺産群」の代表的な観光スポットが、ソロヴェツキー修道院です。この修道院や空港など、ソロヴェツキー諸島の中でも最も大きな島であるBolshoy Solovetsky Island（直訳するとソロヴェツキー大島）にあります。白壁に美しい玉ねぎ型の屋根の修道院の建物と、それをぐるりと囲む堅固で無骨な城壁のコントラストがとっても印象的です。

聖地として崇められ、強制収容所として忌み嫌われていたという両極端な歴史をもつ不思議な場所。今ではまた人々から愛される世界遺産となっています。島や海の景色と見事にマッチしている荘厳な修道院は、見るものをうならせる素晴らしさです。

ソロヴェツキー諸島のおすすめポイント②：セキルナヤ山

セキルナヤ山は、ソロヴェツキー諸島の最高地点。最高峰といっても100mほどの丘なので登るのにそれほど苦労はありませんが、ところどころ森と湖の広がるソロヴェツキーの風景を眺めることができます。この山の頂上には、灯台教会や木造の十字架、灯台の明かりとしても機能する巨大なランプがあります。

この教会も世界遺産「ソロヴェツキー諸島の文化と歴史遺産群」に含まれていて、強制収容所時代には処刑場所や犯罪者の独房として使用されてきました。この陸の孤島のような収容所で行われていた残虐行為の数々は、ソ連政府をも驚愕させたといわれています。教会の裏にある木製の長い階段も拷問に使用された歴史があります。

ツアーに組み込まれていることも多く、観光客が訪れる場所の定番です。今では丘の上の小さな教会ですが、観光で訪れる際は過去の悲惨な歴史についても思いを巡らしてみてください。

ソロヴェツキー諸島の文化と歴史遺産群の注意事項

ロシアでは、外国人は外出時にパスポートの携帯が義務付けられています。道で警察官から提示を求められた際に不携帯だと、罰金が課せられることがあります。

また、ロシアでは外国人は滞在登録が必要となります。ホテルに滞在する場合にはホテル側が代行してくれるので、必ず確認しましょう。友人宅などに滞在する場合は、自身での登録が必要です。詳しくは、在ロシア日本大使館等のサイトを確認してください。

◎まとめ

世界遺産「ソロヴェツキー諸島の文化と歴史遺産群」についてご紹介しました。さまざまな暗黒の時代を経験してきた島ですが、本来は聖地として大切にされていた場所です。

そのため、アクセスにはやや難のある世界遺産ながら、世界中から多くの観光客が訪れています。ロシアの歴史と自然の双方を目にすることのできる世界遺産としておすすめですよ。

美しき強制収容所！世界遺産「ソロヴェツキー諸島の文化的・歴史的遺産群」