6国をまたいでスイスが最多!世界遺産アルプス山系の先史時代杭上住居跡群

6国をまたいでスイスが最多!世界遺産アルプス山系の先史時代杭上住居跡群

アルプス山脈周辺には、紀元前5000年頃から前500年頃にかけて水の上に高床式の家屋を立てていた集落跡がたくさん見つかっています。現在のアルプスは多くの国にまたがっているため、世界遺産に登録された遺跡も6か国に分散しています。全部で111件の構成資産から成っていますが、スイスには実にそのうちの半分、56件があるんですよ!そこで今回は、多くの国に広がる世界遺産「世界遺産アルプス山系の先史時代杭上住居跡群」のうち、スイス国内の見どころについてご紹介します。

目次

6国をまたいでスイスが最多!世界遺産アルプス山系の先史時代杭上住居跡群

アルプス山系の先史時代杭上住居跡群とは?

出典: Jean-Pierre Dalbéra

アルプス地域では、湖や湿地に杭を立て、その上に板敷の住居を建造した家屋がたくさん発見されてきました。彼らは漁をメインにしていたわけではなく、農耕や牧畜を営んでいたと考えられています。そんな人々がなぜ水上に住居を設けたかについては、外敵から身を守り、アルプスの山中で農業に適した土地を少しでも確保するためと推測されています。

集落遺跡の出土品からは、農業や牧畜だけでなく冶金など独自の文化を築いたことが窺えます。また、遠い地域で作られたとみられる陶器や琥珀が見つかっていることから、当時すでに交易も行われていたとみられ、人類史を考えるうえでも貴重な世界遺産なのです。

「世界遺産アルプス山系の先史時代杭上住居跡群」は、構成資産のうち約37%が完全に水没していて、残りのうちの30%も部分的に水に浸かっているとされています。また、考古学的な価値が注目されている世界遺産ですので、大部分は観光地化されていません。

アルプス山系の先史時代杭上住居跡群へのアクセス

次にご紹介するラテニウム考古博物館のあるヌーシャテル湖までは、スイスの特急列車ICNで向かいます。ジュネーブからなら1時間余り、スイスの首都ベルンからなら約50分でヌーシャテル湖駅に到着します。

ヌーシャテル駅からはバスに乗り、「ラテニウム(Laténium)」バス停で下車して徒歩5分弱です。

アルプス山系の先史時代杭上住居跡群のおすすめポイント

1. ラテニウム

出典: commons.wikimedia.org

1857年、干ばつによりヌーシャテル湖の水位が下がり、湖底の泥中から木製の杭列が顔を出しました。これにより史上初めて、杭上住居跡の存在が世界に知られることになりました。

この遺跡は紀元前500年ごろのものとみられ、住居跡のほかに大量の武具が見つかっています。遺跡の最寄りの村ラ・テーヌの名前をとって、この遺跡の示す文化圏はラ・テーヌ文化と呼ばれています。ヌーシャテル湖畔にあるラテニウムは、湖で発掘された数々の出土品を収蔵するために建てられた考古学博物館兼研究センター。ラテニウムの名称はラ・テーヌからきています。

館内では世界遺産「アルプス山系の先史時代杭上住居跡群」にまつわる資料を豊富に展示。氷河期から中世まで約5万年にわたってその地で暮らしていた、ネアンデルタール人の歴史も紹介されています。隣接する公園には野外展示場があり、見つかった杭跡や橋がそのまま保存されていますよ。

2. トゥヴァン

出典: Julien Marolleau

ヌーシャテル湖の隣のビール湖畔にトゥヴァン(Twann)という小さな村があります。鉄道も通っていて、トゥヴァン駅の湖側一帯が世界遺産「アルプス山系の先史時代杭上住居跡群」の1つに指定されています。

とはいえ今では湖の眺めが綺麗な公園と船着き場があるだけで、遺跡と分かるものはとくにありません。なんとなく、ここに湖上の家が建っていたんだな~と物思いにふけるくらいです。

他方で、トゥヴァンは山の斜面にブドウ畑の広がる風光明媚なところ。街並みも中世のようで観光にピッタリです!S字型にカーブを描く村のメインストリートには、ワイナリーやレストランが立ち並んでいてとっても雰囲気がいいですよ。

3. チューリッヒ

出典: Scanrail / PIXTA(ピクスタ)

チューリッヒといえば、スイス最大の人口をもつ観光都市。古代の遺跡とは無縁のように思えますが、実はこの町の港付近の湖底も世界遺産の構成資産となっています。

やはり遺跡そのものを目にすることはできないので、チューリッヒの美しい景色とともに港やチューリッヒ湖を眺めるよりほかありません。ちょうどクヴァイ橋から湖に目を向けたあたりに、数千年の昔に集落があったというわけです。

◎まとめ

今回は、スイス・イタリア・フランス・ドイツ・オーストリア・スロベニアの6か国をまたぐアルプス山系の先史時代杭上住居跡群をご紹介しました。水の底に沈んだままの遺跡がほとんどのため、観光で訪れることのできる場所は限られています。さらに遺跡と分かる場所となると、6か国全域でも数えるほどしかありません。もしアルプスの先史時代の歴史に興味があれば、前出のラテニウムやドイツのボーデン湖畔にある杭上住居博物館(Pfahlbaumuseum)などを訪ねると良いでしょう。

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