名称:Major Town Houses of the Architect Victor Horta
住所:Rue Américaine 25, 1060 Bruxelles(オルタ邸)
公式・関連サイトURL:http://www.hortamuseum.be/uploads/web-japon-2016.pdf
ブリュッセルは、「EUの首都」や「小パリ」と称される国際的な観光都市。中心部のグラン=プラスは世界で最も美しい広場の1つといわれ、世界遺産にも登録されています。そんなベルギーの都ブリュッセルには、もう1つ「建築家ヴィクトル・オルタの主な都市邸宅群」と呼ばれる世界遺産があります。
ヴィクトル・オルタは、1861年にベルギーのヘントに生まれた建築家で、それまで建物の装飾品の様式にとどまっていたアール・ヌーヴォーを、建築そのものに反映させた最初の人物といわれています。オルタのもとには、彼に共感した多くの建築家が集まり、ブリュッセルには新しいデザインの邸宅が次々と建てられました。
とくにオルタの思想が色濃く表れている4軒の建物について、2000年に世界遺産に登録されています。ちみに、世界遺産ではありませんが、ブリュッセル中央駅やベルギー漫画センター(旧ウォーケーズ百貨店)もオルタの作品です。
目次
ブリュッセルの美しい世界遺産!ヴィクトル・オルタの都市邸宅群
建築家ヴィクトル・オルタの主な都市邸宅群とは?
ヴィクトル・オルタは、19世紀末~20世紀初めにかけて活躍した建築家。鉄やガラスを多用したアール・ヌーヴォー様式を建築に取り入れ、当時のブリュッセルの建築界では中心的な人物でした。1893年にタッセル邸を手掛けたのを皮切りに、オルタのもとにはブリュッセル市内の建築依頼が次々と舞い込むようになりました。
当時のブリュッセルの典型的な住宅は、直線的な廊下に沿って部屋が並んでいる造りで、真ん中の部屋には光が差し込みにくく、薄暗くなってしまう構造でした。これに対してオルタの建築は、アール・ヌーヴォーの特徴のひとつであるガラスを巧みに用いて、光がしっかり差し込むような工夫がされています。曲線を基調とした鉄の装飾やデザインも大きな魅力です。
しかし20世紀に入って、アール・ヌーヴォーの人気に陰りが見えはじめます。オルタの作品も受難の時代を迎え、多くのオルタ建築が取り壊しの憂き目に遭いました。世界遺産に登録されているタッセル邸、オルタ邸、ソルヴェー邸、ヴァン・エドヴェルド邸の4軒は、貴重な現存現役の建物となっています。
ヴィクトール・オルタの邸宅群へのアクセス
日本からベルギーへは成田空港から直行便が出ていますが、1か所経由して行くのがリーズナブルです。北欧やオランダのアムステルダム経由で行けば、所要時間も12~13時間前後と比較的短め。フランスやオランダ、ドイツなどの近隣国から列車でベルギー入りするルートも一般的です。
ブリュッセル中央駅からはトラムに乗り、ジャンソン停留所で下車。電停からほど近い場所にオルタ邸があります。タッセル邸とソルヴェー邸は、バイイ電停が最寄り。オルタ邸からも500mほどなので、ブリュッセルの街並み散歩がてらに見て周ることもできます。
残るヴァン・エドヴェルド邸はやや離れたところにあり、地下鉄シューマン駅からバスに乗り換え、パーマストンというバス停が最寄りです。
建築家ヴィクトル・オルタの主な都市邸宅群のおすすめポイント
◆オルタ邸
オルタの自邸は、アトリエと住宅が2棟別々に隣り合わせで建っているのが特徴。現在はオルタ美術館として一般公開されています。世界遺産の4軒のなかで、唯一観光客が内部を見学できる貴重な建物です。2棟は内部でつながっていますが、それぞれはっきりと別々の建物のとして設計されていて、仕事とプライベートを峻別していたオルタの思想を垣間見ることができます。
注目すべきは階段室で、真上の天井がガラスになっているため、光が建物の中心にまで届くように工夫されています。階段そのものも、基本は四角い螺旋構造であるにも関わらず、ステップや手すりに曲線のデザインが多用されていることから、とても柔らかく優美な印象を与えます。4軒すべてを回る時間がもしなければ、何はともあれこのオルタ邸をまず訪ねることをおすすめします。
◆タッセル邸
タッセル邸は、オルタが創始したアール・ヌーヴォー建築を、最初に体現した作品です。ブリュッセル自由大学の教授エミール・タッセルの依頼を受けて設計したもので、1893年に完成しました。玄関や階段、そして採光のガラス窓が建物の正面中央にあり、これは当時のブリュッセルの伝統を打ち破る画期的なものでした。
映画好きだったタッセルの要望で階段室に映写機とスクリーンを置けるようにしたり、玄関脇に応接室を設けるなど、ここの希望に応える工夫がなされているのも、オルタのセンスが光るところ。2018年現在は個人事務所となっているため見学はできませんが、外観だけでも斬新さが容易に伝わるでしょう。
◆ソルヴェー邸とヴァン・エドヴェルド邸
後の2つのうちソルヴェー邸は、オルタのパトロンともいえる資産家アルマン・ソルヴェーの依頼で1903年に建てられました。ブリュッセルの大通り沿いにあるため、今では近代的なビルに挟まれてやや目立たない場所になってしまっていますが、見事な細工の欄干が付いた2階のテラスが目印です。
もう1つのヴァン・エドヴェルド邸は、コンゴ自由国の事務局長だったヴァン・エドヴェルドの注文で、1901年に建てられたものです。どちらも内部の見学は、限られた機会にしかできませんが、ブリュッセル博物館ではこれらの世界遺産を日本語のガイド付きで巡るツアーを事前予約制で随時行っています。
@まとめ
ブリュッセル市街に点在する近代アール・ヌーヴォーの世界遺産、ヴィクトル・オルタの邸宅群についてご紹介しました。美しいブリュッセルの街並みにしっくりと馴染んだ歴史ある世界遺産の建造物は、今も変わらず人びとに愛され続けています。
オルタの最高傑作ともいえる邸宅の数々は、一見の価値があるものばかり。それでいて現役の個人住宅というから驚きですよね。ブリュッセルを観光するなら、ぜひ世界遺産の邸宅にも足を運んでみてください。