名称:チョガ・ザンビール (Tchoga Zanbil)
住所:N32 4 59.88 E48 31 60
公式・関連サイトURL:http://www.choghazanbil.ir/
中東にある砂漠の国イラン。古代オリエントの時代からの長い歴史をもつ、シルクロードの時代の文化の交流ポイントであった国です。それだけに様々なものが集まった土地で世界遺産も沢山あるんです。砂に埋もれてしまい未だに詳細がわからない太古の文明の痕跡もあったり、ロマンを感じさせてくれるスポットの数々は素敵ですよ。ではイランの世界遺産をご紹介しましょう。
目次
悠久の歴史を持つシルクロードの中継地、イランの世界遺産をご紹介
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1.チョガ・ザンビール
1979年にイランで初めて世界遺産に登録された「チョガ・ザンビール」。イラン西部、ペルシャ湾に面したフーゼスターン州に残る古代遺跡の世界遺産です。紀元前1200年頃、当時この辺りにあった古代メソポタミアの国家エラムによって造られました。壁に囲まれた街の構造をしている遺跡ですがここに住んでいたのは祭祀だけといわれ、宗教施設を中心とした遺跡と考えられています。
遺跡の中心にはピラミッド状の宮殿、「ジグラット」が迫力ある姿を見せています。周りには何もないイランの砂漠地帯に、重厚感のある遺跡が現れる様が壮観な世界遺産です。また砂色のジグラットが夕日に照らされて金色に輝く様子は幻想的です。
2.ペルセポリス
チョガ・ザンビールと同じくイランで最初となる1979年に登録された「ペルセポリス」、イラン中西部の大きな街シラーズ近郊にある世界遺産です。
アケメネス朝ペルシャ帝国の都であり、新年を祝う祭儀のために建設されたといわれています。建設が開始されたのは紀元前520という記録が残っており、その後紀元前420年ころまで建設が続けられたとされます。その間、ここペルセポリスは宗教の中心として機能していたといわれています。紀元前331年、アレクサンドロス大王の攻撃によって破壊されて廃墟となり、現在まで遺跡として残っています。
中東三大遺跡のひとつとされ、その規模だけでなく壁に残されている大型のレリーフの芸術性の高さでも知られています。イラン観光のハイライトといえる場所でしょう。広い敷地内に建物の跡、様々な像、レリーフが点在しており見所の多い世界遺産ですよ。
名称:ペルセポリス (Persepolis)
住所:Fars Province
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/en/list/114/
3.イスファハンのイマーム広場
イスファハンは現在のイランの首都であるテヘランから南に340キロほどのところにあり、イランの京都ともいわれる世界遺産の古都です。16世紀にサファヴィー朝の時代に首都として定められ、文化的に発展しました。
その中心ともいえるのが、イスファハンのイマーム広場です。南北512メートル、東西159メートルという長方形の広場で非常に綺麗に整えられています。見所は広場の周辺を取り囲む建築群。王族のための専用礼拝所、王宮の門アーリー・カープー宮殿、バザールの門、そして南には大寺院イマーム・モスクの門。すべての建物のミナレットとドーム、壁面を彩るアラベスクと彩色のタイルが非常に美しい、まさにイスラーム様式の傑作で、かつて「ここには世界の半分がある」と絶賛されたほどの世界遺産です。
世界遺産にはイランで初めて1979年に登録。広場の周りにはカフェやバザールもできていて、文字通り飽きることなく過ごすことができますよ。
名称:イスファハンのイマーム広場 (Meidan Emam)
住所:Esfahan
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/en/list/115/
4.タフテ・ソレイマーン
「タフテ・ソレイマーン」はイランの首都テヘランから西へ400キロほど、渓谷の中にある世界遺産です。「ソロモン王の玉座」を意味していて、旧約聖書に登場するソロモン王がここに怪物を閉じ込めたという伝説からきています。この場所はとても特徴的な地形をしていて、かつて火口だった直径100メートル、水深100メートルほどの遺構が湖になっておりまるで絵本の中の世界のようです。今ではイラン国内ですが、ここには3世紀のサーサーン朝によるゾロアスター教の宗教施設や、13世紀のモンゴル帝国時代のイルハン朝の宮殿などが残る世界遺産です。
中でもサーサーン朝で国教とされていたゾロアスター教の遺跡は、当時の最重要拝火壇のひとつ「アードゥル・グシュナスプ聖火」だったといわれています。スピリチュアルな雰囲気のある世界遺産です。
名称:タフテ・ソレイマーン (Takht-e Soleyman)
住所:West Azerbaijan Province
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/en/list/1077/
5.パサルガダエ
「パサルガダエ」はイラン中西部のシラーズ近郊、イランで最も有名な世界遺産ペルセポリスから北へ90キロほどの場所にある世界遺産です。紀元前546年に建設を開始されたペルシャ帝国の最初の都だったところで、約1.6平方キロの範囲に遺跡が散在しています。
ペルセポリスに比べると、現在残っているものは少なく、イランの他の世界遺産よりは派手さはありません。最も重要で一番の見所でもあるのは、この都を築き始めたときのペルシャ帝国の王、キュロス2世の墳墓とされている遺跡です。キュロス2世の墓である証拠は考古学的にはないものの、アレクサンドロス大王がここをキュロス2世の墓だと信じていたことが史料に残されています。
この王の墓とされる建築物と、丘の上に残る要塞跡は2004年に世界遺産に登録されました。その後ペルシャ式庭園の部分が、2011年に世界遺産に追加登録されました。
名称:パサルガダエ (Pasargadae)
住所:Fars Province
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/en/list/1106
6.バムとその文化的景観
バムはイラン南東のケルマン州にある人口8万人ほどの街で、そのすぐ隣に、アルゲ・バムと呼ばれる古代の要塞都市の世界遺産があります。
兵舎があった要塞都市だったアルゲ・バムは、1722年のアフガニスタンの侵攻を受け放棄されました。干乾しレンガで造られたアルゲ・バムは、人だけがいなくなった街といった雰囲気で、すぐにでも生活できるのではと思わされる状態で残っています。
要塞の城壁部分はイランの世界遺産の中でも綺麗に修復されています。遺跡として整備された街は、観光順路は設定されているものの、そこから離れて隅々まで見て回れ、遺跡の中を歩き回り楽しむことができるという珍しいところです。
2003年に大地震によりバムの街の人口の1/3が犠牲になったともいわれ、この遺跡も甚大な被害を受け2004年に危機的状況にある遺跡として世界遺産に登録されました。その後修復も進み、無事危機リストからは外されました。
名称:バムとその文化的景観 (Bam and its Cultural Landscape)
住所:Kerman Province, Bam
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/ja/list/1208
7.ソルターニーイェ
「ソルターニーイェ」はイランの首都テヘランの北西240キロのところにある、14世紀のモンゴル帝国の一部であったイルハン朝の都市の遺跡である世界遺産です。
イルハン朝8第君主オルジェイトゥの名によって建設され、その都となりました。城塞都市の遺跡として残っていますが、その中心になっているのが「オルジェイトゥの墓廟」です。墓は8角形の建物にドームの屋根が乗った形。そしてこの建物を囲んで、8基のミナレットを持ち、青いタイルで覆われた高さ50メートルにも及ぶ二重構造の巨大なドームがつくられています。この廟はイラン周辺のみならず後の世界のイスラム建築、インドのタージ・マハルなどの世界遺産にも大きな影響を与えているといわれています。世界遺産への登録は2005年に行われました。
名称:ソルターニーイェ (Soltaniyeh)
住所:Zanjan Province, Soltanieh
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/en/list/1188
8.ベヒストゥン碑文
「ベヒストゥン碑文」は紀元前500年頃のアケメネス朝ペルシアの王であったダレイオス1世が自分が王に即位した経緯と、その正当性を記した文章とレリーフからなる崖に刻んだ巨大な彫刻であり、碑の遺跡の世界遺産です。
ダレイオス1世は国の内乱の後で、周りに後押しされる形で即位したとされていますが、実際はその前のキュロス王朝の実権を奪い取ったともいわれています。この世界遺産ベヒストゥン碑文のある崖はイラクとの国境に面するケルマンシャー州にあります。この地方には旧石器時代から人が住んでいた跡があり、様々な時代の遺跡が残っています。イランの首都テヘランから西へ500キロ以上と、イラン国内移動を考えても簡単にはいけない場所にはあるので、覚悟して訪れる必要がありますね。
名称:ベヒストゥン碑文 (Bisotun)
住所:Kermanshah Province, Bisotun
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/en/list/1222
9.イランのアルメニア人修道院建造物群
イランの北西部は、古代アルメニアの一部となる地域。キリスト教が興った当初からキリスト教を受容し、さらには世界で最初に国教ともしたのがアルメニア人で、古くから多くの教会が建設されてきました。「イランのアルメニア人修道院建造物群」は聖タデウス修道院、聖ステファノス修道院、生神女マリア聖堂から構成された世界遺産です。
しかしイランのこの地方は地震が多く、これらの教会も一度は崩壊してしまっています。これらの遺跡は15〜19世紀に再建されたもの。特徴的な可愛らしい円錐状の屋根を持ち要塞のような高い壁に囲まれた教会は、イスラム王国がキリスト教会を保護し再建した歴史の過程とともに興味深く見ることができます。
名称:イランのアルメニア人修道院建造物群 (Armenian Monastic Ensembles of Iran)
住所:East Azerbaijan Province
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/en/list/1262/
10.シューシュタル
「シューシュタル」はイラン西部のフーゼスターン州の州都アフヴァーズから90キロほどのところにある、要塞都市の遺跡が残る世界遺産です。国土のほとんどが砂漠地帯というイランの中では珍しい、川沿いにある遺跡です。紀元前500年ころのアケメネス朝の時代にはすでに都市としてあった記録が残っており、イランの当時の首都であったスーサよりも大きな街だったといわれています。
その後の3世紀・サーサーン朝の時代になると、当時最先端の水道設備の施設が造られました。500メートルを超える橋、ダム、水路などが造られました。そしてこれらの水利施設は1970年代になってから再建され、再び利用されるようになりました。つまり現在でも実用的に利用されている世界遺産というわけです。古代の人々の技術力には驚かされますね。
名称:シューシュタル (Shushtar Historical Hydraulic System)
住所:Khuzestan Province, Shooshtar, Taleghani St
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/en/list/1315
11.タブリーズのバザール
タブリーズはテヘランからは600キロほど離れたイラン北東部の端、東アーザルバーイジャーンの州都です。人口140万人の大都市であり古い歴史を持ち、いまでも住民の多くはアゼルバイジャン人というイランの中では独特の文化を持っているところです。
そのタブリーズに、中東最古と言われるバザールがあります。世界で最も距離的に長い商業施設で、世界遺産に登録されています。レンガ造りのアーチ状の屋根は、明かりとりの穴から強い日差しが差し込み、とても美しい光がみられます。
古来から東西の交易の中継点として栄えてきたバザールは、2010年に世界遺産に登録されたあとも、常に新しいお店が入れ替わっており、いまでもイラン北西部の経済の中心として機能しているところでもあります。歴史を感じつつ、同時に現在進行形の経済活動にも直に接することができる、希有な場所だといえるでしょう。
名称:タブリーズのバザール (Tabriz Historic Bazaar Complex)
住所:East Azerbaijan Province, Tabriz
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/en/list/1346/
12.シャイフ・サフィー・アッディーン廟
「シャイフ・サフィー・アッディーン廟」はイランの北西部アルダビール州の州都アルダビールにある、14世紀の遺跡の世界遺産です。アルダビールはカスピ海に面した都市で、イランでは最北端に近いところにあります。お隣の国、アゼルバイジャンの影響も強い土地です。世界遺産であるこの廟は、この地に興ったサファヴィー教団の教祖である、サフィー・アッディーン・イスハーク・アルダビーリーの墳墓です。造られたのは彼の死後の1334年、息子であるサドル・アッディーン・ムーサーが指揮しました。この後教団は王朝をつくるまでになり、やがて16世紀にはサファーヴィー朝が建国されるに至ります。その始祖の墳墓としてシャイフ・サフィー・アッディーン廟は、青のタイルの装飾、ドーム屋根、8つの門を特徴として、現在もその美しい姿をとどめています。
名称:シャイフ・サフィー・アッディーン廟 (Sheikh Safi al-din Khānegāh and Shrine Ensemble in Ardabil)
住所:Ardabil Province, Ardabil
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/en/list/1345/
13.ゴンバデ・カーブース
「ゴンバデ・カーブース」はイランのカスピ海南岸にあるゴレスターン州にある、塔の遺跡です。この塔はすべて焼きレンガで造られたものとしては世界で最も高い72メートルの高さを持つ、イランでも特異な世界遺産です。また土台部分が十角形、先端部分が円錐形で造られるなど全体が科学的に設計され、非常に綿密に建築されていることがわかります。内部にはムカルナスという、尖った小さな突起を繰り返して鐘乳石を模した装飾がなされており、幾何学的なデザインでありながら、洞窟の中のような不思議な印象を与える世界遺産です。
この塔は西暦1006年、当時のイランのこの地方にあったズイヤール朝の君主の命により建てられました。建築の目的は明らかにはなっていませんが、君主の墓だともいわれています。建築から1000年を記念して、2006年に世界遺産に登録されました。
名称:ゴンバデ・カーブース (Gonbad-e Qābus)
住所:Gonbad Kavus, Golestan Province
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/en/list/1398/
14.スーサ
「スーサ」はイランの西端、フーゼスターン州シューシュに残る世界遺産です。現在はイラン領ですが、この地に残る遺跡の歴史的な幅は広く、神殿跡は紀元前4000年にまでさかのぼることができます。紀元前3200年ころからのエラム王国時代、その後紀元前330年まで続いたアケメネス朝ペルシャの時代には王都として栄えました。
638年のムスリムの侵攻、1218年のモンゴルの侵攻を受けて、遺跡はかなりの部分破壊され大きな建物はほとんど残っていません。その遺跡跡から出土したものについても、現在まだ研究が続けられており、由来や目的などが解明されていないものも少なくありません。イラン西部のこの地からは美しい色彩のスフィンクスの壁画や、有名なハンムラビ法典など、様々なものが出土していて、今後の研究成果も楽しみな世界遺産です。
名称:スーサ (Susa)
住所:Khuzestan Province
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/en/list/1455
15.ルート砂漠
「ルート砂漠」はイランの東部ケルマーン州に広がる砂漠地帯で、自然遺産としての世界遺産となっています。いわゆる砂で覆われた砂砂漠ではなく、大きな岩石の多い地帯です。標高の高い土地の多いイランにおいて、周りの高山に囲まれて盆地になっていることもあり、非常に暑いことでも有名。黒い玄武岩が多く、太陽の熱を吸収しやすいため、生物が見られない部分もあるほどの高温地帯で、その特異性から世界遺産となりました。
車で走っていても非常に暑く、強風時には砂で視界が完全に遮られることもあるため、動けなくなることもあるほど。その風は文字通り熱風で、エアコンが全く役に立たなくなってしまうほどです。また南東部には砂丘が広がる地域もあり、その砂丘は高さ300メートルにも至ります。そんな過酷な環境の中にも、かつてキャラバン隊が休息したキャラバンサライの遺跡があり驚きです。イラン初の自然遺産として、2016年に世界遺産に登録されました。
名称:Lut Desert
住所:Kerman
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/en/list/1505
◎まとめ
イランの世界遺産、とても長い歴史があり、多くの国や文化が折り重なった土地柄であることが感じられましたね。イランは独特の政治体制を維持しており、西洋世界との関係が限定されている国でもあります。日本から行くにはビザの取得や移動手段の確保など、旅行に慣れていない人にはハードルとなることも少なくありませんが、それを差し引いても、訪れるだけの価値が十分にある国です。世界遺産を巡るパッケージツアーなどで行くのが手軽でオススメですよ。興味がありましたら、ぜひチャレンジしてみてください。