名称:議事堂宮殿/Casa Poporului
住所:Strada Izvor 2-4, Sect.5, Bucharest
公式・関連サイトURL:http://cic.cdep.ro/en
かつてブカレストは「東欧の小パリ」と称されるほど美しい街でした。しかし、第二次世界大戦後に現れた共産党の弾圧により、ブカレストの街の様相は一変。歴史的建造物や旧市街は破壊されてしまったのです。
そんなブカレストにも、共産党政権時代を生き延びた歴史のある観光スポットや、新政権のもと生まれた新しい観光地など見どころがたくさんあるんですよ。今回は、ルーマニアの歴史を辿りつつブカレストのおすすめスポットをご紹介していきます。
目次
ルーマニア革命の舞台、ブカレストの歴史を感じる観光スポット14選
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1.議事堂宮殿
ブカレストの議事堂宮殿は、米国のペンタゴンに次ぐ世界で2番目に大きな建築物です。1984年に着工し、およそ13年もの歳月を経て1997年に竣工しました。現在は議事堂宮殿という名称ですが、ブカレストでは旧名称の「国民の館」と呼ばれるのが一般的です。
内部も近代建築では類を見ない豪華さで、床や柱、階段は全て大理石、クリスタルのシャンデリアは2800点にも及びます。内部の見学はツアーへの参加が必要なのですが、あまりにも広いため、1時間のツアーでも実際には建物の5%ほどしか見て回れないのだとか。ちなみに、写真撮影には撮影料がかかるので要注意です。
「国民の館」というのは名ばかりで、実際は独裁者であったチャウシェスクのための館だったと言われているこの議事堂宮殿。困窮するルーマニア国民をよそに費やされた建設費は、なんと1500億円以上にも上るそうです。後のルーマニア革命が起こるきっかけの一因となった建物と言えるでしょう。
2.革命広場
出典: Marco Taliani de Marchio/Shutterstock
革命広場は、1989年12月のルーマニア革命の舞台となった場所です。革命広場に面して建つのが旧共産党本部ビル。当時、集まった10万もの民衆に向けてチャウシェスク元大統領が最後の演説をしたのは、2階部分のバルコニーでした。
演説後、群衆から逃れるようにヘリコプターで脱出しましたが逃亡に失敗し銃殺刑に。革命広場周辺では、大統領派の治安警察と反体制派の軍隊との激しい銃撃戦が繰り広げられ、市民を含む多くの人が犠牲になりました。
広場に建つ大理石の慰霊碑は、革命で亡くなった人々への追悼の意をこめて建てられたもの。隣には犠牲者の名前が刻まれた石碑もあり、革命の記憶を今に伝えています。広場を囲むように国立美術館やブカレスト大学図書館、クレツレスク教会などブカレストの観光スポットが集まっていますよ。
名称:革命広場/Piata Revolutiei
住所:Calea Victoriei Boulevard, Bucharest
3.クレツレスク教会
出典: Leonid Andronov/Shutterstock
1722年建築の煉瓦造りの教会。二つの塔が特徴のルーマニア正教独自の建築様式で、周囲の建物とは異なる独特の外観が魅力です。共産主義時代の体系化政策による破壊を免れ、ブカレスト市内で最も古くから残る教会の一つとなっています。
内部には、18世紀の建築当初に描かれた緻密なフレスコ画があちらこちらに点在。壁や天井、梁をすき間なく埋め尽くしています。入り口の天井には善と悪の裁きを下す神の姿や、天国と地獄を表すフレスコ画も。小さな教会ですが、祈りを捧げる信者の姿が後を絶たちません。
ブカレストの中心部にありながら内部はとても静かなので、観光する際はお祈りの邪魔にならないよう静かに鑑賞しましょうね。また、クレツレスク教会の土台部分には、ルーマニア革命の内戦の激しさを物語る銃弾の跡が今も残っており、歴史の様々な局面を感じることができます。
名称:クレツレスク教会/Kretzulescu Church
住所:Calea Victoriei 45, Bucuresti
4.凱旋門
ブカレストが「東欧の小パリ」と称される所以となる、人気のフォトスポットです。1922年に第1次世界大戦の勝利を祝って建てられた際には、木造に漆喰の素材でしたがその後火災で焼失してしまい、1936年にコンクリートと花崗岩を使用した現在の姿に改築されました。
現在見られる姿は、パリに建つエトワール凱旋門をモデルにしてデザインされたもの。南側の壁には、建設当時のルーマニア王・フェルディナンド1世とその妻であるマリア王妃の肖像が彫られています。9月20日の「ブカレストの日」には、凱旋門が解放され見晴台に上ることができるんですよ。
建国記念日の12月1日には、毎年軍隊のパレードが凱旋門の下で行われるので、観光プランに組み込んでみるのも良いでしょう。すぐ隣にはブカレスト市内で一番大きな「ヘラストラウ公園」があるので、観光がてらお散歩するのもおすすめです。
名称:凱旋門/Arcul de Triumf
住所:Piața Arcul de Triumf, București
5.スタヴロポレオス教会
スタヴロポレオス教会、ブカレスト旧市街の中心にある小ぢんまりとした教会。外観や内装の装飾が非常に美しいことで知られており、ブカレストに残る歴史的建築物としてもとても貴重な教会なのです。
1724年にギリシャ人修道僧によって建てられこちらの教会は、「十字の街」という意味を持つギリシャ語「Stauropolis」が名前の由来となっているのだとか。教会の守護天使はミカエルとガブリエルで、もとは修道院として建てられた教会でした。
内部のフレスコ画がとても美しく、また、多くのイコン画が飾られている教会としても有名。19世紀に起きた地震によって教会のドームが崩壊したため、ドーム部分のフレスコ画は20世紀初めに修復されました。結婚式も頻繁に行われるなど、ブカレスト市民の生活に深く馴染み愛されている教会です。
名称:スタヴロポレオス教会/Stavropoleos Church
住所:Strada Stavropoleos 4, Bucharest
6.大主教教会
出典: Lukiyanova Natalia frenta/Shutterstock
ブカレスト市内中心部の近くにルーマニア総主教座大聖堂(大主教教会)があります。1655年に建てられたギリシャ正教会で、統一ルーマニア公国の成立後、1865年にルーマニア正教としてギリシャ正教の支配から独立しました。現在、その信者数は約2000万人にも及ぶそうですよ。
ミサが行われる建物は、3つのドームを備えた美しい外観が特徴的。正面の外壁にはキリストと12使徒のモザイク画が飾られており、さらに教会内には、聖ディミトリチ・バサラボフの聖体(ミイラ)が祀られています。
同じ敷地内には、ルーマニア革命後に大主教教会に譲られた旧国会議事堂だった豪華な建物や、総大司教の住居、煉瓦造りの鐘楼など様々な建物がありますよ。教会を観光しつつ、まとめて鑑賞できるのがうれしいですね。
名称:大主教教会/Patriarchal Cathedral/Dealul Mitropoliei
住所:Aleea Dealul Mitropoliei, Bucharest
7.旧王宮跡
出典: Leonid Andronov/Shutterstock
吸血鬼ドラキュラのモデルになったといわれる、ワラキア公国ヴラド・ツェペシュ公によって15世紀に築かれた城塞の跡です。ドラキュラといえば、ルーマニアのトランシルバニアにあるブラン城というイメージが強いですが、実際のヴラド公はブカレストの旧市街に居を構えて生活していました。
残念ながら度重なる火災や地震によって崩壊し、現在は建物の一部と土台部分しか残っていません。内部の見学もできますが、僅かに残る建物の地下には石室があり、発掘で出土した土器がすこし並ぶ程度。展示物としての魅力は少ないかもしれませんね。
がしかし、オスマントルコ帝国との戦いからルーマニアを守るために戦い、「串刺し公」の異名で恐れられたヴラド公の生活を想像しながら観光するのも楽しそうですよ。現在も発掘調査が続いているなど、新たな発見が楽しな観光スポットでもあります。
名称:旧王宮跡/Old Princely Court
住所:Strada Franceza 25-31, Bucuresti
8.クルテアヴェケ教会
1554年に建てられたクルテアヴェケ教会は、ブカレストに残る最も古い教会です。隣に建つワラキア公国の城塞の敷地内に建てられ、ワラキア公国皇太子の戴冠式が200年にわたり行われています。
クルテアヴェケ教会も旧宮殿跡のように、火災や地震、またオスマントルコ帝国の侵略によって大きなダメージを受けました。かろうじて残った内部のフレスコ画も一部は16世紀の建設時のまま、今に当時の面影を伝えています。
1715年には増築し、1847年にはフレスコ画も描き加えられ、外装は近年になって修復され、より一層美しい教会として観光客だけでなくブカレスト市民にも人気の教会となっています。結婚式もよく行われるそうなので、観光の途中で行き合わせたらラッキーですね!
赤レンガと漆喰の白で織りなす模様がシンプルでありながら均整のとれた美しさです。細い塔とカーブした石の窓枠、華美すぎない外観に対して内部の濃密なフレスコ画はルーマニア正教会の建築に共通する特徴といえるでしょう。
名称:クルテア ヴェケ教会/Curtea Veche/Old Court Church
住所:Strada Franceza 23, Bucuresti
9.ルーマニア国立歴史博物館
出典: Leonid Andronov/Shutterstock
ブカレスト旧市街のヴィクトリエイ通りに面して建つ1894年から1899年にかけて建てられた旧郵便施設が、「ルーマニア国立歴史博物館」です。郵便局というよりは宮殿のようなイメージの建物ですよね!故チャウシェスク大統領のエレナ婦人がしばしばダンスパーティーを開催していたというのも納得の美しい建物です。
有史以前から現代までのルーマニアの工芸品や宝石など幅広いコレクションが展示されています。ルーマニアの初代国王カロル1世の玉座や、国王・王妃の美しい王冠なども観光客に人気の展示品です。
別の意味で観光客だけでなくブカレスト市民の人気を集めているのが、入り口に建てられた謎の銅像「ローマ皇帝トラヤヌス帝とオオカミ」です。そのインパクトに目が点になると思いますが、ブカレスト市内に点在する謎のオブジェ群の一つとしてチェックしてみてください。
建物の下に発見された中世の遺跡を発掘調査中のため、現在は博物館の一部のみ公開されているそうです。
名称:ルーマニア国立歴史博物館/The Romanian National Museum of History
住所:Calea Victoriei nr.12 sector 3, Bucuresti
10.モゴショアヤ宮殿
ブカレスト市の郊外、バスで20分程の距離にモゴショアヤという中世の宮殿があります。ワラキア公国ムンテニア地方(現在のブカレストのあたり)のブルンコヴェアヌ王は、独特な建築様式の宮殿や教会を建てましたが、彼が建てた建築のなかで最も美しいと称されるのが、1698年から1702年にかけて建てられたモゴショアヤ宮殿です。
宮殿という名前から想像するよりも、離宮や別荘のような小ぢんまりとした可愛らしさのある造りで、美しく整えられた公園のように広い敷地の中に様々な建物が和やかに調和して建っています。ブルンコヴェアヌ王の建てた独特な建築様式は、後にルーマニア・ルネッサンス様式や、彼の名前をとってブルンコヴェアヌ様式と呼ばれるそうです。
ブカレスト郊外のモゴショアヤ宮殿のある地域には、ドラキュラのモデルとなったヴラド公の眠るスナゴヴ修道院もあり、観光客に人気のスポットになっています。あわせて観光ルートに組み込むといいですね!
名称:モゴショアヤ宮殿/Mogoșoaia Palace
住所:1, Strada Valea Parcului, Mogoşoaia, Ilfov, Romania
11.アテネ音楽堂
出典: Takashi Images/Shutterstock
ブカレストのアテネ音楽堂は、優美な外観と豪華な内装で有名な美しいコンサートホールです。
1888年にフランス人建築家によって建設されたコンサートホールは、建設費の一部がブカレスト市民からの寄付により賄われました。ブカレストの人々の音楽に対する深い愛情が感じられますね。
アテネ音楽堂は外観も素晴らしく観光客にも人気のフォトスポットですが、やはりおススメは内装の美しさです!大理石をふんだんに使い、梁から天井にかけての装飾も煌びやかで、まるで宝石箱の中にいるような雰囲気です。音の響きも申し分なく、600席ほどの観客席のまわりはぐるりとルーマニアの歴史を描いたフレスコ画で囲まれており、目でも耳でも芸術を存分に楽しめる造りになっています。
コンサートは夜の開催が多いですが、昼間は観光目的だけで入場することもできます。ブカレスト市内の主要観光スポットをまわるツアーでもアテネ音楽堂を含めるコースが多い、人気のスポットとなっています。
名称:アテネ音楽堂/Ateneul Roman
住所:Strada Benjamin Franklin 1-3, București
公式・関連サイトURL:http://fge.org.ro/en.html
12.旧市街
ブカレスト市を流れるドゥンボヴィツァ川に近いヴィクトリエイ通り・ドアムネイ通り・プラティアム通り・バレロル通りの4本の道路に囲まれた地域を指して「旧市街」と呼ばれています。規模はそれほど大きくありませんが、旧市街は以前はブカレストの中心地で、その美しい街並みから第二次世界大戦前までは「東欧の小パリ」と呼ばれていた頃の名残りが感じられます。
大戦の戦火を逃れた旧市街も共産党時代に中世から残っていた建物の多くは破壊され、現在では人気の観光スポットの「国民の館」も古くからあった教会を含む旧市街を壊した上に建てられました。「国民の館」は現在残っている旧市街のエリアの5倍の面積にも相当するそうです。
現在は再開発やインフラ整備工事がすすみ、少しずつ昔の美しい街並みを取り戻しつつあり、ブカレストの街の新たなる魅力として期待の観光スポットです。カフェやレストランも多いエリアなので、市内観光の途中で休憩に立ち寄るのにもぴったりですね。
名称:旧市街/Old Town
住所:Bucharest, Romania
13.国立軍事博物館
1923年に開館したルーマニアの戦いの歴史が詰まった「国立軍事博物館」です。常に強国に囲まれているルーマニアでは、国の歴史がそのまま戦争の歴史に繋がります。「歴史を知る」という意味でもおすすめしたい観光スポットです。
ルーマニアの古代史から、オスマントルコ帝国と戦った中世の時代の武器や防具、近代の銃器などが年代順に見やすく展示がされているほか、屋外には戦車や列車砲、ロケットまで並べられています。地理的にもソ連製の武器が多く展示されているようです。また、入り口近くには大きなスペースを使って1989年のルーマニア革命に関連した資料が多数展示されています。犠牲者の血の跡が生々しい遺品や写真などから、ブカレストで起こった戦闘の激しさや恐ろしさが伝わります。
5月9日は欧州連合が定めた「ヨーロッパの日」ですが、毎年その日に近い週末には軍事博物館が無料で開放されます。さらに各年代の軍服に身を包んだ貴族や将校たちのパレードも行われ、観光客だけでなくブカレスト市民にも人気のイベントになっています。
名称:国立軍事博物館/Muzeul Militar Naţional
住所:Str Mircea Vulcanescu 125-127, Bucharest
14.Palatul Primăverii
2016年から一般公開されることになった故チャウシェスク元大統領の私邸、通称「春の宮殿」です。
チャウシェスクといえば贅を尽くした巨大な「国民の館」を連想しますが、建築途中で銃殺刑になってしまったため実際に住んだことはありません。
春の宮殿はブカレスト北部の高級住宅街に位置し、近隣には各国の大使館が集まってします。チャウシェスクとその家族はルーマニア革命まで約20年間この館に住んでいました。内部には温水プール・シアタールーム・ワインセラー・ヘアサロン・ジムも完備されており、25年以上前にこれだけの設備を整えていたと思うと、庶民とは大きくかけ離れた贅沢な暮らしに驚きます。
観光ガイドの案内で約一時間ほど内部を見てまわれるツアーですが、公開されて間もないため非常に人気の観光スポットとなっています。前日までには必ず予約を入れておくことをおすすめします。
「国民の館」と「春の宮殿」の両方を同じ日に観光して比べてみるのも面白そうです。
名称:春の宮殿/Palatul Primăverii
住所:Bulevardul Primăverii 50, București
◎まとめ
ブカレストは20数年前に国の根幹を揺るがす大きな変化に直面し、独裁者が残した負の遺産を背負いながらも少しずつ前進している濃く深い都市です。華やかで壮麗な建物が立ち並ぶ都市も素敵ですが、ブカレストのように美しいだけでなく、歴史の暗部を垣間見ることのできる観光地もおすすめですよ。きっと思い出深い旅になること間違いなしでしょう。