塔ノ沢温泉の観光情報5選！古きを訪ね、新しきも訪ねる箱根路の旅。

早川の渓流沿いに伸びる塔ノ沢温泉は、慶長10年（1605）に開湯した、箱根七湯のなかでは比較的新しい源泉です。箱根全体を代表する2軒の老舗旅館をはじめとして、塔ノ沢には渓谷の樹々に囲まれた風光明媚な宿が点在しています。箱根湯本のひとつ隣駅なので、ロマンスカーで箱根を観光する際にも便利ですよ。また、箱根の急坂を登っていく登山電車に揺られるのも箱根観光の楽しみの1つ。途中には塔ノ沢の自然を満喫できるスポットもあるので、観光の際にはカメラが手放せませんね。そんな塔ノ沢の短いエリアに凝縮された、観光スポット5選のご紹介です。

1. 塔ノ沢温泉が誇る、格式高い二大旅館

福住楼（ふくずみろう）と環翠楼（かんすいろう）。この2つの歴史ある旅館を抜きにして、塔ノ沢温泉を語ることはできません。

どちらの旅館とも、箱根全山を通じてもっとも格調高いといえる佇まいで、いずれの建物も国の登録有形文化財に指定されています。国道1号線沿いに立地しているので、車で通りがてらにレトロな表構えを流し見するだけでも、十分観光の気分を味わえますよ。

文人や政治家をはじめ、数々の著名人に愛された塔ノ沢の2つのお宿について、簡略ながらご紹介しましょう。

◆福住楼

明治23年（1890）創業の福住楼には、夏目漱石や福沢諭吉、島崎藤村など、明治日本を代表する文化人が好んで逗留してきました。各々お気に入りのお部屋を指名して、長の滞在を楽しんだといいます。

福住楼の建物は京風の数寄屋造で、とくに竹と杉の良材を惜しみなく使用しているのが特徴。そのライトで明るい先進的なデザインは、ともすると歴史的建造物にいることを忘れてしまいそうなほどです。

また、塔ノ沢温泉福住楼は内湯も有名！松の大木をくり抜いて作られたまん丸の大丸風呂は、箱根を代表するお風呂の景色の1つとなっています。

◆環翠楼

もう1つの環翠楼は、約400年の歴史をもつ江戸時代からの老舗。明治初期には療養のために皇女和宮が逗留し、そしてそのまま塔ノ沢で亡くなったことでも知られています。

こちらは、当時としては珍しい大広間を備えていたことから、主に政財界の大物が定宿としていました。その中のひとり、初代内閣総理大臣伊藤博文が考案し、贈った屋号が「環翠楼」なのです。

近代日本を創り上げていった各界著名人が、足しげく通っていた塔ノ沢温泉の名旅館。箱根好きなら一度は泊まってみたいですよね。

2. 箱根登山鉄道

電車での箱根観光には欠かせない乗り物が、箱根登山鉄道。標高差445mの箱根の険を駆け登る、赤くてたくましい観光列車です。始点の箱根湯本駅を出て最初の駅が塔ノ沢ですが、その間には粘着式と呼ばれる普通の鉄道では最大となる、80‰（1000m進むと80m上がる）の急勾配があります。

乗っているだけでも充分観光になりますが、塔ノ沢周辺には他にも箱根登山鉄道にまつわる見どころがあるんですよ。

◆出山鉄橋

塔ノ沢駅と大平台駅の間の早川渓谷に架かる、緑色のトラスが味わい深い出山鉄橋。正式には早川橋梁といい、明治21年（1888）に建設された、現存するものでは日本最古の鉄道橋です。

ここは箱根登山鉄道敷設における最大の難所であったといわれ、その深く切り立った峡谷は、今では塔ノ沢を代表する景勝スポットとなっています。橋上の車窓から見える桜や紅葉、そして万緑の景色は見逃せませんよ。

もうひとつ注目したいのがその先に待っている出山信号場。鉄橋からU字を描いて急坂を登った列車は、この出山信号場でスイッチバックを行います。このとき窓から早川方面を望むと、ついさっき渡ったばかりの出山鉄橋が眼下に見えます。短い時間でこれだけの高さを上ったのだと、ちょっとした感慨に浸ることができるでしょう。

◆あじさい電車

無数のアジサイの花を脇目にゆったり進む登山鉄道。通称「あじさい電車」は、梅雨の箱根の観光名物となっています。あじさいの樹列は箱根登山鉄道の全線にわたっていますが、その標高差のために、上と下では開花時期が1カ月近くも変わってきます。6月中旬から7月下旬ごろまで、いつ観光に訪れても花を楽しめるのが魅力です。

箱根湯本から塔ノ沢までひと駅分だけアジサイを愛でるもよし、予約制で強羅駅までノンストップの「夜のあじさい号」に乗ってみるもよし。塔ノ沢に宿を取れば、どちらのあじさい電車を選んでも、無理なく観光できますよ。

3. フォレストアドベンチャー・箱根

歴史的な観光スポットの多い塔ノ沢に現れた、自然体験型のアウトドアパーク！フォレストアドベンチャー・箱根は、全国に展開しているフォレストアドベンチャーのなかでももっともアクセスが良く、観光にも便利。塔ノ沢駅から歩いて5分程度ですが、箱根湯本駅から無料の送迎バスも出ています。

「キャノピーコース」なら、身長が110cm以上あればOKなので、ファミリーで箱根観光する際にもオススメです。森の中でひと汗かけば、その後の塔ノ沢温泉の心地よさはさらに倍増しますよ。

4. 深沢銭洗弁天

箱根登山鉄道塔ノ沢駅と直結している深沢銭洗弁天は、境内から鳥居越しに発着する列車を眺める構図が珍しい観光スポット。塔之沢温泉に宿泊して霊夢を見た大正時代の実業家が、清水湧き出るこの地に石祠を建てたのが始まりとされています。

「弁天癒水」と呼ばれる境内の湧水でお金を洗うと金運がアップするといわれ、観光客や参拝客が後を絶ちません。ただし、運気欲しさにお札を洗ってしまうと、ビショビショになって後が大変ですよ。

5. 阿弥陀寺

塔ノ沢駅東側裏手の沢谷戸を登りつめた先にある阿弥陀寺は、江戸時代初期に塔ノ沢の洞窟で6年間修業を行った弾誓上人が開いたものです。その後、徳川家の菩提寺である芝増上寺の末寺となったことから、塔ノ沢で亡くなった皇女和宮の位牌を祀っています。

現在の阿弥陀寺は、箱根の「あじさい寺」とも呼ばれる観光名所。6000株を超えるあじさいが、塔ノ沢の峰山深くに厳粛な広がりをもって咲き誇ります。箱根登山鉄道のあじさい電車も良いですが、ゆっくり花を観賞したい方は、ぜひ塔ノ沢の阿弥陀寺まで足をお運びください。

◎まとめ

泊まらずとも見ているだけで観光になる歴史的な旅館に、乗っているだけで塔ノ沢の自然観光ができる登山鉄道。そして、塔ノ沢の駅近に誕生した新しい観光レジャースポット！塔ノ沢を歩けば、箱根の今と昔が見えてきます。箱根湯本のにぎやかな温泉街もいいですが、ちょっと足を延ばして大人なリラックスを求めてみてはいかがでしょう。

塔ノ沢温泉の観光情報5選！古きを訪ね、新しきも訪ねる箱根路の旅。