10か国にまたがる世界遺産!ノルウェーの「シュトルーヴェの測地弧」

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10か国にまたがる世界遺産!ノルウェーの「シュトルーヴェの測地弧」

ノルウェーの「ハンメルフェスト」からウクライナの「スタラ・ネクラシウカ」まで、約2800kmもの壮大なスケールで点在する世界遺産。それが「シュトルーヴェの測地弧」です。天文学者フリードリヒ・フォン・シュトゥルーヴェとその仲間が、子午線の弧長を三角測量するために約40年間かけて設置した三角点群です。

これにより、地球の大きさなどを正確に測ることができるようになり、世界の子午線制定も可能になりました。計10ヵ国にもまたがる世界遺産として2005年に登録されましたが、今回はこの世界文化遺産を代表して、北端の国ノルウェーの構成資産についてご紹介します。

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10か国にまたがる世界遺産!ノルウェーの「シュトルーヴェの測地弧」

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シュトルーヴェの測地弧とは?

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フリードリッヒ・フォン・シュトルーヴェは、代々天文学者を輩出しているドイツ人の家系に生まれ、現在はエストニアとなっているロシア帝国のタルトゥ天文台の所長を務めました。「シュトルーヴェの測地弧」は、1816年からおよそ40年もの歳月をかけて設置した三角点群。地球は正確な球体ではなく楕円形であるという、昔から議論されてきた問題を解決するためだったといわれています。結果的には、地球の大きさの正確な測定や、世界の子午線の制定に繋がり、地学の分野に計り知れない影響を与えた世界遺産です。

北極海に面するノルウェーから黒海に近いウクライナまで、なんと2800kmにまで達する地域に三角点群を設置しましたが、そのほとんどは自然の岩や人工的に設置されたモニュメントに印をつけたようなものでした。設置された測量点は全部で265か所に上りますが、そのうち世界遺産として登録されたのは34箇所。なんと10ヵ国(ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシア、エストニア、ラトビア、リトアニア、ベラルーシ、モルドバ、ウクライナ)にまたがる大変珍しい世界遺産となっています。ただし測量点を設置した当時は、スウェーデン=ノルウェーとロシア帝国の2か国にまたがっているだけにすぎませんでした。

シュトルーヴェの測地弧へのアクセス

ノルウェー国内には、4か所の三角点があります。そのうちアルタの空港には、ノルウェーの首都オスロからの定期便が就航しています。ただし、アルタの三角点は郊外のライパスにある岩山の上なので、空港や市街からアクセスしやすいとはいえません。

対して、アルタ空港で乗り継いでいく測地弧北端のハンメルフェストの三角点は、ハンメルフェスト空港から1kmほどのところにあるので、歩いても行くことができます。

残る2つはアルタの南のカウトケイノにあります。カウトケイノ市街へはアルタからバスかタクシーで行けますが、三角点はどちらも深い森の中にあるので、観光目的で訪ねることはおすすめできません。

シュトルーヴェの測地弧のおすすめポイント①:ハンメルフェスト

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10か国にもまたがる珍しい世界遺産「シュトルーヴェの測地弧」のはじまりは、ノルウェーのハンメルフェストといわれています。ノルウェー北端のフィンマルク県のさらに北西部に位置する街ハンメルフェストは、世界最北端の不凍港とも。三角点の置かれた岬には、測量事業の完成を祝して建てられた記念碑があります。

測量地点のほとんどが自然の岩や人工物に印をつけたものであるのに対し、このようなモニュメントが設置されているのはとても珍しく、この町の観光スポットの1つとなっています。2800kmにも及ぶ壮大な測量の旅のスタートの地。世界遺産シュトルーヴェの測地弧を訪ねるなら、まずはハンメルフェストの記念碑から始めましょう。

シュトルーヴェの測地弧のおすすめポイント②:アルタ

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アルタの三角点は、郊外のライパスという農村地帯の外れの小高い岩山の上にあります。北麓から長さ1kmほどのハイキングコースがあるので、歩いて行くことができますよ。ただし、入り口はとても分かりにくいので、迷ったら地元の人に聞いてみましょう。

アルタの三角点の特徴は、なんといってもその眺望!眼下にアルタの街並みとフィヨルドの美しい景色が広がります。夏には白夜、冬にはオーロラが見られる場所でもあるので、世界遺産の三角点で絶景を写真に収めるというのも良いですね。

またアルタには、もう1つの世界遺産「アルタの岩絵」があります。紀元前4200年~紀元前500年ごろにかけて描かれたロック・アートで、当時の狩りや漁、獲物のようすが今もくっきりと見て取れます。一部はアルタ市街のアルタ博物館で見学可能。「シュトルーヴェの測地弧」と「アルタの岩絵」という2つの世界遺産が存在する都市アルタは、世界遺産観光にもってこいですね。

シュトルーヴェの測地弧のおすすめポイント③:カウトケイノ

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残る2つはアルタの南のカウトケイノにありますが、どちらも町場や道路から外れた深い森の中にあるので、一般観光客が個人で訪れるのはたいへん困難です。ここは世界遺産の三角点は潔く諦めて、カウトケイノの見どころを観光しましょう。

カウトケイノは先住民族のサーミ人が多く住んでいる地域。カウトケイノ市街にある国立サーミ劇場では、トナカイとともに暮らしてきたサーミ人の歴史と文化を分かりやすく学ぶことができますよ。

また、周辺は森と湖が広がる自然豊かなエリアなので、どこを歩いても気持ちの良い風景と空気に出会うことができます。とくにカウトケイノ川沿いのピケフォッセン滝は、落差こそ小さいものの、数千の湖からもたらされる豊富な水が常にしぶきをあげて雄々しく流れていきます。世界遺産のモニュメントだけでなく、ぜひ北欧の自然も堪能してみてください。

◎まとめ

10ヵ国にまたがる世界でも珍しい世界遺産「シュトルーヴェの測地弧」についてご紹介しました。その他の国の構成資産には、シュトルーヴェが所長を務めたタルトゥの天文台や、教会を三角点としたフィンランドのアラトルニオ教会、現在はロシア領内で唯一の世界遺産登録地となったゴーグラント島(三角点自体は島内に2つ)などがあります。

全部を一度に回るのはとても大変ですし、観光には向かないところもあります。世界遺産「シュトルーヴェの測地弧」を訪れる際は事前に下調べをして、効率よく巡れるよう心掛けましょう。

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