名称:Rohtas Fort
住所:near Dina Town, Rawalpindi, Pakistan
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/en/list/586
パキスタンの北部、首都イスラマバードの南東には、16世紀に築かれた世界遺産の要塞があります。3万人の軍勢を駐屯させることができたといわれるこのロータス城塞は、実戦は一度も経験しなかったものの、その堅固な造りと万全の設備から難攻不落の要塞と呼ばれています。
現在も、周囲約4km・厚さ10m以上という城壁や12の城門、さらには後世の建造物にも影響を及ぼしたモスクや宮殿などが良好に残っています。またロータス要塞は軍事施設としてだけでなく、パシトゥーン建築とヒンドゥー建築が見事に融合した最初期の事例として、インド・パキスタン地域の建築史においても重要な意味をもっています。そうした貴重な建築様式やデザインなどが評価され、1997年に世界遺産に登録されました。
今回はそんなパキスタンの栄光の世界遺産ロータス城塞についてご紹介します。
目次
パキスタンに築かれた難攻不落の巨大要塞!世界遺産ロータス城塞
ロータス城塞とは?
ロータス要塞は1541年にシェール・シャーによって建設が始められました。シェールは現在のアフガニスタンやパキスタンに起源をもつパシュトゥン人の家系で、当初はインドのムガル帝国に仕えていました。現在のインドのビハール州一帯の統治者に出世していた1531年に、シェールは帝国からの独立を宣言。わずか10年の間に北インドを席巻し、ムガル皇帝を駆逐してスール朝を樹立しました。
要塞建設の目的は、現在のペシャワールとラホールを結ぶ街道と、近くにある世界最大級の岩塩鉱の防衛にありました。しかし、1545年にシェール・シャーが事故死すると、スール朝は早くも衰退に向かいます。内紛で四分五裂している隙を突いてムガル帝国が勢力を盛り返し、1555年に滅ぼされました。ムガル帝国以降は、ロータス要塞が使用されることはほとんどありませんでした。
ロータス城塞へのアクセス
ロータス城塞はパキスタン首都イスラマバード南東の都市ジェーラムの郊外にあります。ジェーラムへは、イスラマバード市内ないしベナジル・ブット国際空港から鉄道かバスで行けます。最寄り駅はジェーラム駅ではなくディーナ駅で、空港からこちらへバスで向かうこともでき、所要時間は約2時間半ほどです。
なおディーナ駅からロータス城塞まではバスで約40分ほど。帰りの終バスが早いことには十分注意をしてください。ジェーラム市街からなら、バスのほか地元の観光ツアーを利用することができますよ。
ロータス城塞のおすすめポイント①:12の城門
ロータス城塞は一時的な攻防だけでなく、守備隊を長期駐屯させる意図をもって建設されました。そのため、三方を川に囲まれた台地上の城塞はとても広大で、城壁の外周は約4kmにも達します。分厚い壁は外部からの侵入をシャットアウトし、出入りは12の門に限られています。それらの城門もすべて切石積みの堅牢なもの。なかでも有名なのが、南に開いたソヘール門です。ソヘール門は高さ約21m・幅約20m・奥行き約15m・中央のアーチ部分の幅が約5mと巨大なだけでなく、内外ともに美しいひまわりの装飾が施されているのが見どころですよ。
また、中央のアーチ部分の両側に設けられたバルコニーの小さなドーム建築も、世界遺産ロータス城塞の観光ポイント。ロータス城塞の他の建築物はアフガン・ペルシャン様式がとられている一方で、このソヘール門のバルコニーはヒンドゥー様式を採用しています。ロータス城塞に訪れた際は、城壁のスケールだけでなく、ソヘール門をはじめとする城門の装飾にもぜひ目を向けてみてください。
ロータス城塞のおすすめポイント②:城塞内の建築
世界遺産ロータス城塞は、難攻不落といわれる要因となった12の城門が注目されがちですが、それ以外にも多くの見どころが詰まっています。その1つがシャーヒー・モスク。12の城門の1つカーブル門のそばにある小さなモスクで、祈りをささげる人々のための部屋や庭が備え付けられています。
巨大な世界遺産ロータス城塞にあってそれほど目立つ建物ではありませんが、現状の遺構のなかで最も多彩な装飾が施されています。モスクの外側にはイスラームの韻文が刻まれ、このデザインはのちのシャー・ジャハーンやヌール・ジャハーンの墓、そして同じく世界遺産のラホール城のシャー・ブルジ門にも影響を与えています。ほかにも、世界遺産ロータス城塞にはバーオリーと呼ばれる3つの階段井戸や、花や幾何学模様、偽窓などの装飾が施されたラーニー・マハルと呼ばれる王妃の宮殿など、美しい建造物が点在。広大な世界遺産ですから、じっくり時間をかけて見学してみてください。
◎まとめ
パキスタンの世界遺産ロータス城塞についてご紹介しました。厚い壁やさまざまな罠が備わった城門、特徴的なデザイン・装飾がなされた建築物など、ロータス城塞には観光客を魅了する見どころが数多くそろっています。
ただし、2018年現在ロータス城塞周辺には外務省の危険情報レベル2が発令されています。これは不要不急の渡航を中止するよう要請するもので、どうしても渡航するという場合は、安全対策と注意を怠らないようにして下さい。