核兵器の脅威を伝えるマーシャル諸島の世界遺産「ビキニ環礁核実験場」

キリバスの北に位置し、太平洋に浮かんでいるマーシャル諸島は、首都のあるマジュロ諸島を中心として200万平方キロメートルの広大な海域の中にある29の環礁と5つの島からできています。約1225の珊瑚でできた島々の環礁島は、その美しさから「太平洋に浮かぶ真珠の首飾り」とも呼ばれていますよ。

マーシャル諸島は、美しい海が魅力的なリゾート地としても知られており、大自然を堪能することができる観光スポット。ダイビングやシュノーケリング、海水浴などのアクティビティを楽しんだり、美しい海を眺めながらバーベキューなど、ビーチでのんびり過ごして癒されるのもおすすめです。

そんなマーシャル諸島にある唯一の世界遺産ビキニ環礁核実験場は、アメリカによって23回もの核実験が行われたビキニ環礁という島にあります。この記事では、そのビキニ環礁核実験場についてご紹介します。

ビキニ環礁核実験場とは?

2010年にマーシャル諸島初となる世界遺産に登録されたビキニ環礁核実験場は、1946年から1958年にかけて太平洋核実験場の一つとしてアメリカが23回もの核実験を行ったビキニ環礁にあります。1946年にアメリカは、ビキニ環礁を核実験場に選び、170人もの住人を無人島へ強制移住させましたが漁業資源などが乏しく、住人は飢餓に直面してしまいました。

1946年7月に2度行われた最初の核実験は、クロスロード作戦と呼ばれる大小71隻の艦艇を標的とする原子爆弾の実験で、これはニューメキシコ、広島、長崎に続く、史上4番目と5番目にある核爆発でした。主要標的艦の中には、第二次世界大戦で接収した日本海軍の戦艦であった「長門」も含まれており、その他にも、アメリカ海軍の「ネバダ」、「アーカンソー」、「ニューヨーク」などがあります。

1954年にアメリカが計6回の核実験を行ったキャッスル作戦では、3月1日にブラボー実験と呼ばれる広島型原子爆弾の1,000個分もの爆発力をもつ水素爆弾が炸裂し、深さ約120m、直径約1.8kmのクレーターが形成されました。さらに約1000隻以上の漁船が「死の灰」と呼ばれる放射能を含んだ珊瑚の粉を浴びて被爆し、その漁船の中には日本のマグロ漁船「第五福竜丸」も含まれています。漁船だけではなく、ビキニ環礁から240kmほど離れているロンゲラップ環礁の島民64人も被爆しました。

現在のビキニ環礁の放射線濃度は、居住することはできませんが観光などの短期滞在ではほとんど問題のないレベルです。

ビキニ環礁核実験場へのアクセス

マーシャル諸島の首都マジュロから飛行機またはボートなどでアクセスすることができます。所要時間はボートで約1日ほど掛かります。

ビキニ環礁核実験場のおすすめポイント2

海底に沈む日本の戦艦「長門」

ビキニ環礁は現在たくさんのダイバーが集まる人気のダイビングスポットとなっており、その理由の一つとして、日本の艦艇である長門を含むいくつかの艦艇が約70年間海底深くに沈んだままになっているからです。日本海軍の戦艦長門は、第二次世界大戦前に日本海軍の象徴として親しまれ、長門が完成した1920年には、最大口径41cmの主砲と、当時の戦艦の中ではとても高速である26.5ノットの機動力を持つ高速戦艦であり、世界の軍事史などに大きな影響を与えました。

東京の旧丸の内ビルディングが7つも建造できる金額であった4,390万円もの建造費がかけられた全長216mの長門は、イギリスのネルソン級戦艦2隻、アメリカのコロラド級戦艦3隻、日本の長門と姉妹艦の陸奥を指して世界のビッグ7と呼ばれています。海底に沈んでいる状態ですが、ビッグ7の中でも現存しているのは長門だけであり、その姿を一目見ようと世界中から多くのダイバーたちが集まります。核実験の放射線の影響により、ダイバーが直接艦体に触れることはできませんが、貴重な戦艦であるため、見るだけでもビキニ環礁の様々な歴史を感じることができますよ。

ダイビングスポット

ビキニ環礁には美しい海が目の前のホテルやバーなどがあり、島にはたくさんのヤシの木が並んでいます。ビーチから見えるサンセットも美しく、静かでのんびりと過ごせる穴場リゾート地。

たくさんの珊瑚礁を見ることができるビキニ環礁周辺の美しいブルーの海で思いっきりダイビングを楽しんでくださいね。

◎まとめ

現在もビキニ環礁の島民たちは島に戻ることができず、人が居住できるようになるのは早くても2052年頃と推定されています。また、この核実験によって28種の珊瑚が絶滅してしまいましたが、ビキニ環礁面積の80％の珊瑚礁は回復しています。誤った歴史を2度と繰り返さないためにビキニ環礁核実験場をぜひ一度見に行ってみてくださいね。

核兵器の脅威を伝えるマーシャル諸島の世界遺産「ビキニ環礁核実験場」