名称:コミの原生林
住所:Komi Republic
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/en/list/719/
貴重な自然が残るロシア・コミ共和国の世界遺産!コミの原生林
コミの原生林はロシアの首都モスクワから北東に1500km、列車で13時間のコミ共和国のペチョラという町の近郊にあります。32,800平方キロメートルといってもピンときませんが、東京都の15倍という広大な面積。その中にペコラ=イリチ自然保護区とユグド=ヴァ国立公園があり、1995年世界遺産に登録されました。
コミ共和国は天然資源が豊富でタイガの樹木の他、石炭、原油、天然ガス、金、ダイヤモンドなどが産出されており、違法な伐採や採掘が以前から問題となっていました。金の採掘地域を世界遺産の指定地域から外そうとコミ政府が試みましたが、最高裁判所がこの訴えを退けるといった騒動も起きています。いろいろな事情を抱えながらも守られたコミの原生林をご紹介しましょう。
目次
貴重な自然が残るロシア・コミ共和国の世界遺産!コミの原生林
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1.コミの原生林を彩る貴重な植物
ヨーロッパにおいて原生林はどんどん消滅してしまいました。たとえば森と湖が美しいフィンランドはそのほとんどが経済林であり、所説ありますが国土全体での森林割合が45パーセントのうち原生林は約4パーセントといわれています。
世界遺産であるコミの原生林は天然資源の宝庫でもあり、針葉樹林の中にはトドマツ、カラマツ、トウヒ、モミなどが自生しています。もともと気温の低い地域のため、植物の大半が夏季に永久凍土から溶けた水分を主な水分補給の手段にしています。さらに微生物の活動もゆるく、一度森林が失われるとなかなか元の状態に戻りません。伐採計画もあり危うい状況でしたが、世界遺産に登録されたことによって保護されました。
出典: J. Metselaar & M. Grishchenko (CC BY-SA 4.0)
2.寒冷地に適応したヘラジカやトナカイなどの動物たち
「タイガの宝庫」とも称されるコミの原生林には絶滅危惧種に指定されているオオヤマネコの他、ヘラジカやユキウサギ、トナカイ、ヒグマなどの哺乳類40種類以上、シロフクロウ、ウミワシ、ミサゴなどの鳥類200種類以上、氷河期の生き残りとされるアルプスイワナ、カワヒメマスなど16種類の魚類が生息しています。ウラル山脈はヨーロッパとアジアの境とされており、その西側に広がるコミの原生林はヨーロッパ最東端の原生林なんですよ。
3.地形が生み出した奇跡の絶景とは
コミの原生林には低地や丘、湿地や氾濫原がいくつかの島を形作っています。氾濫原とは川の増水により水が氾濫する平野部のことで、川の上流から肥沃な土や植物の種子を運んできます。度重なる川の氾濫は安定した森林の生育には向かず、全体的に草原や低木が大半を占めているんですよ。現在繁茂しているのはヤナギの他、西洋ナナカマドやクロスグリ、ミズゴケなどです。
世界遺産に登録されたコミの原生林では、数多くの自然モニュメントや山岳氷河の形成過程を見ることができます。貴重な動植物の生活環境や景観を守るためにも、世界遺産への登録は必須だったのです。
4.マンププニョールの奇岩もあるコミの原生林のお膝元コミ共和国とは
コミの原生林があるコミ共和国を少しご紹介しましょう。首都モスクワからは1000km以上離れており、公用語はロシア語とともにコミ語と呼ばれるフィンランド語に近い言語が使用されています。共和国の首都はスィクティフカルで人口およそ23万人。天然資源の宝庫であり石炭、原油、天然ガス、金、ダイヤモンド、希少金属などが産出されます。
コミ共和国にはマンププニョールと呼ばれる不思議な石柱群や教会、大聖堂などがあり、世界遺産とともに訪れたい場所が盛りだくさんです。特に都市部ではウィンタースポーツが盛んで、スキー、スノーボード、スピードスケート、フィギュアスケートなどが盛んです。
コミの原生林へのアクセス
コミの原生林は首都モスクワから鉄道でおよそ13時間かけてペチョラという町に入ることが一般的です。他にもいくつかの都市からアクセス可能ですが、大変面積の広い場所なので、日程には余裕を持っていきましょう。
◎まとめ
コミの原生林は地下資源の豊富な地であるがゆえに、残念ながら世界遺産に登録されるにあたり違法な開発が行われたり、フランス企業による伐採計画が進む一歩手前であったことがありました。コミ政府が金鉱開発のために、鉱脈を避けるよう世界遺産の範囲を変えるように仕向けたこともありました。そんな苦難の多いコミの原生林は、一生に一度は訪れてみたい世界遺産ですね。