移民労働制度が作った負の遺産・モーリシャスのアープラヴァシ・ガート

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移民労働制度が作った負の遺産・モーリシャスのアープラヴァシ・ガート

モーリシャス共和国は、インド洋南西部のマスカレン諸島に浮かぶ島国です。かつてイギリスの植民地であったモーリシャスでは、1833年の奴隷制度廃止に伴い、たくさんの移民を同じく植民地であったインドから労働力として迎え入れました。そのため、現在モーリシャスの国民の6割以上が、インド系移民を祖先に持つ人々で構成されているのです。

イギリス植民地各国からの労働者を移民として受け入れるようになったモーリシャスですが、その歴史を語る上で欠かせないのが2006年に世界遺産に登録された「アープラヴァシ・ガート(Aapravasi Ghat)」。
主にインドからの労働者たちが共同生活を送っていた施設です。
それでは、モーリシャスの世界遺産「アープラヴァシ・ガート」についてご紹介していきましょう。

目次

移民労働制度が作った負の遺産・モーリシャスのアープラヴァシ・ガート

アープラヴァシ・ガートとは?

出典: New Generation Media Co Ltd

世界遺産「アープラヴァシ・ガート(Aapravasi Ghat)」とは、インドからの労働移民を受け入れるために建設された施設の総称です。1833年にイギリスで「奴隷制度廃止法」が成立すると、イギリスの統治下にあった国々ではたくさんの奴隷たちが解放されました。しかし、この奴隷解放がきっかけとなり、新たに移民契約労働というものが誕生することとなったのです。

インドからモーリシャスに移送されてきた契約労働者たちの数は、1834年から1920年までの約85年間で50万人以上。島内の農園で働かされた労働者だけでなく、ここからさらにアフリカ大陸やレユニオン島、南米各国へと移送されて行った者もいたのだとか。これをアジア系移民を表す「苦力(クーリー)」という言葉を用いて「クーリー貿易」と呼んでいたそうです。

現在ポートルイスに残るアープラヴァシ・ガートは1849年に建設されたもので、病院や調理場、トイレ、馬小屋などが残されているほか、当時の暮らしぶりを再現した人形などが展示されています。今までの奴隷制度とは異なり、教育を受けることも許されていた労働者たちですが、その生活は過酷で厳しくまるで刑務所のようだったとも言われているのです。

結局、奴隷制度を断ち切ることができなかったことから「負の遺産」と呼ばれるようになったアープラヴァシ・ガート。一方で、現代社会でも運用されている「契約労働」発祥の地であることが高く評価され、2006年にはモーリシャスの初の世界遺産に登録されました。

アープラヴァシ・ガートへのアクセス

成田からモーリシャスへの直行便は運航していないので、アジアや中東、ヨーロッパなどで乗り継ぐ経由便を利用しましょう。おすすめはエミレーツ航空を利用するフライトで、総移動時間は最短のおよそ20時間。乗り継ぎはドバイで1回のみです。

モーリシャスの「サー・シウサガル・ラングーラム国際空港」から首都ポートルイス(Port Louis)までは約50Km離れているため、タクシーを利用するか送迎バスを手配すると良いでしょう。世界遺産「アープラヴァシ・ガート」へは、ポートルイス中心地にあるウォーターフロントから歩いですぐです。

アープラヴァシ・ガートのおすすめポイント

◆移民労働者たちの生活

出典: Tarzan9280

アープラヴァシ・ガートとは、ヒンディー語で「移民の駅」という意味を表す言葉です。その名の通り、イギリス政府はインドからの労働者を大量に迎え入れると、この地を拠点に契約労働制度を作り上げました。別名「偉大な実験場」とも呼ばれたアープラヴァシ・ガートだけあって、奴隷契約こそ結ばれなかったものの、そこでの生活はとても辛く過酷なものだったそうです。

今も残されている調理場や病院、沐浴場などの跡地を見る限り設備に関しては問題ないと思われますが、多い時でなんと1,000人以上もの労働者や家族が滞在していたというから驚きですよね。併設されている博物館には、実際に使用されていた生活用具なども展示されていますので、ぜひチェックしてみてください。

ほとんどの労働者は一旦このアープラヴァシ・ガートに集められた後、島内にあるプランテーションでサトウキビやお茶の栽培をして生活をしていましたが、一部の労働者は、当時イギリスの植民地であったオーストラリアやアフリカ大陸南部、および南米にまで移送され現地の農園で労働を強いられていたのだとか。

高級リゾートとしてのイメージが強いモーリシャスですが、たまにはその歴史を辿る旅をしてみるのも良いのかもしれませんね。当時の名残は今もまだまだ残っており、街中では本場のインド料理を楽しめるほか、スパイスなどの調味料も手に入れることができますよ。

◎まとめ

今回ご紹介したのは世界遺産「アープラヴァシ・ガート」のみでしたが、モーリシャスにはほかにも魅力的な観光スポットがたくさんありますよ!息を飲むほど美しいビーチに、本場インド料理を堪能できるインド人街、そして「七色の大地」や滝で有名なシャマレル(Chamarel)があるブラック・リバー峡谷などなど、どれも見逃せないものばかり。日本からのアクセスも便利ですので、ぜひ訪れてみてくださいね。

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