名称:Okapi Wildlife Reserve
住所:Ituri province, Democratic Republic of the Congo
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/en/list/718/
オカピの保護に努めるコンゴ民主共和国の世界遺産オカピ野生生物保護区
全世界で第11位という広大な面積を誇るコンゴ民主共和国は、アフリカ大陸のちょうど真ん中あたりに位置します。国内の治安が安定しないため、旅行先としての知名度はまだまだ低いものの、豊かな自然と陽気な国民性で訪れる人々を魅力しています。
そんなコンゴ民主共和国に、現在5つの世界遺産があるのをご存知でしょうか?その中で5番目に登録されたのが「オカピ野生生物保護区(Okapi Wildlife Reserve)」。コンゴ北東部のイトゥリの森に広がる保護区域です。今回は、1996年に登録された世界遺産「オカピ野生生物保護区」についてご紹介していきます。
目次
オカピの保護に努めるコンゴ民主共和国の世界遺産オカピ野生生物保護区
オカピ野生生物保護区とは?
「オカピ野生生物保護区(Okapi Wildlife Reserve)」は、コンゴ民主共和国北東部のイトゥリの森にある野生生物保護区です。1996年にユネスコの世界遺産に登録されましたが、森林破壊や密猟などを理由に、1997年以降は危機遺産リストに登録されています。
ここは、20世紀に発見された「世界3大珍獣」のひとつであるオカピの生息域。全世界に生息しているオカピの約6分の1にあたる、5000頭がこの保護区内で暮らしています。保護区にはエプル保護調査センターが併設されており、オカピの保護だけでなく繁殖に関する研究なども進められているんですよ。
自然豊かなオカピ野生生物保護区には、オカピ以外にも様々な動物が暮らしています。森林ゾウやアフリカゴールデンキャットなど絶滅危惧種のほか、300種類以上もの鳥類も!さらには、アフリカ最古の先住民であるムブティ・ピグミー族も野生動物と共存しながら、昔ながらの生活を営んでいます。
オカピ野生生物保護区へのアクセス
世界遺産「オカピ野生生物保護区」へは、コンゴ民主共和国の北東部に位置するキサンガニ(Kisangani)を拠点にすると良いでしょう。キサンガニまでは、首都キンシャサ(Kinshasa)から空路で2時間30分。
保護区までの距離は約320Kmで、乗合トラックを利用しておよそ6時間です。
日本からコンゴ民主共和国への直行便はないので、アジアやヨーロッパ、アフリカの他都市など計2都市以上を経由する必要があります。最短ルートは、タイとエチオピアを経由するエチオピア航空のフライトで、総移動時間は26時間弱です。
交通網が発達していないコンゴ民主共和国国内では、物資輸送用のトラックや乗合バスで移動するのが一般的。ただし、現在は政情不安の影響もあり治安があまり良くないため、利用する際は注意が必要です。
オカピ野生生物保護区のおすすめポイント
◆オカピ
オカピはジャイアントパンダ、コビトカバと並び「世界3大珍獣」に数えられています。
主に中央アフリカに住むキリン科の動物で、体は馬のように茶色で、足にシマウマのような模様が入っているのが特徴。日本では、よこはま動物園ズーラシアと上野動物園、横浜市立金沢動物園の3ヶ所で見ることができます。
実はこのオカピ、1000万年以上も前からその姿を変えていないらしく「生きた化石」とも呼ばれているんですよ。耳まで届くほどの長い舌を持っているオカピですが、主に生息していたのは低地に草木が生えた密林の中。そんなオカピがサバンナで暮らすようになり、高い木になる葉や実を食べるために進化した姿がキリンだと言われているのです。
しかし、オカピに関する研究はあまり進んでおらず、その生態についてはよくわかっていないのが現状。
さらに、オカピの個体数は密猟などで激減しており、準絶滅危惧種にも指定されています。世界遺産「オカピ野生生物保護区」でもオカピの繁殖や保護に努めていますが、人間による密猟や森林伐採が無くならない限り、危機遺産からの解除は難しいでしょう。
◆先住民ムブティ族
世界遺産「オカピ野生生物保護区」があるイトゥリの森の中では、先住民であるムブティ族が生活しています。ムブティは、コンゴ民主共和国の中で最も古い先住民族の一つで、人口は3~5万人。狩猟採集生活をしながら、15~60人の小さな社会を作って暮らしています。
アフリカ大陸の赤道付近には、低身長が特徴のピグミーと呼ばれる人々が暮らしているのですが、実はムブティ族もそのピグミーに属するんですよ。ピグミーの中でも最大規模を誇るムブティ族は、「オカピ」の名付け親としても知られており、彼らの言葉で「森の馬」という意味を表すそうです。
狩猟採集民であるムブティ族は、乾季になると村を出て森に入り食糧を集めます。主な食糧はジャングルに生息する蟹や貝、昆虫のほか、猿、魚、蜂蜜、豆科植物などで、家は棒と葉で作られたとても質素なもの。一方で、暖を取るための囲炉裏が作られるなど、自然の中で生き抜くための工夫が凝らされています。
◆エプル保護調査センター
オカピ野生生物保護区内にある「エプル保護調査センター(the Epulu Conservation and Research Center)」は、アメリカの人類学者パトリック・パットナムが1928年に開いたキャンプです。元々は野生のオカピを捕獲し、欧米の動物園に送ることを目的としたものだったそうですが、現在はオカピを施設内で繁殖させ、生まれた子供のオカピを世界中の動物園に送るという役割を担っています。
2012年には民兵集団に襲撃され、14頭のオカピと2人のスタッフが殺害されるという悲しい事件の場となってしまったエプル保護調査センター。しかし、そんな出来事にもめげず今日もオカピの生態に関する調査を進めながら、絶滅の危惧にあるオカピの保護に努めています。
◎まとめ
日本でオカピを見られるのは、東京の上野動物園と神奈川県内の2ヶ所の動物園のみ。恐らく実物を見たことがないという方も、たくさんいらっしゃいますよね。オカピはとても奇抜な姿をしているのですが、性格が臆病で、生態については現時点であまり知られていません。今後も保護活動や生態調査が進み、個体数が増えることを願うばかりですね。
実は2018年現在、コンゴ民主共和国の世界遺産「オカピ野生生物保護区」があるイトゥリ州は、外務省の海外安全情報でレベル4に分類されています。これはイトゥリ愛国抵抗戦線(FRPI)による略奪や殺人,誘拐等が継続して行われているためです。新たな渡航は禁止となっていますので、注意しましょう。