名称:Erbil Citadel
住所:erbil, kurdistan, iraq
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/ja/list/1437
イラクの北東部、クルド人自治区の主都でアルビル県の県庁所在地でもある人口約70万の都市アルビル。イラクといえば、2003年のフセイン政権崩壊以降首都バグダッドも含め国内の混乱が続いています。そのようななかで、アルビルは例外的に治安が大幅に改善されていることから、イラク復興事業をにらんだ外国企業の進出が相次いでいます。その開発ラッシュぶりは、アルビルをして「第2のドバイ」と言わしめるほどです。
そんなアルビルの中心には、2014年に世界遺産に登録されたアルビル城塞があります。現在のアルビル市はアルビル城塞から放射状に延びる大通りと、城塞から同心円状に広がる環状道路と基本とした都市計画に基づいています。すなわち、アルビル城塞は世界遺産の観光スポットであると同時に、再開発が進む都市のシンボルでもあるのです。
今回は、イラクのなかでは比較的訪ねやすいとされるアルビル城塞についてご紹介します。
目次
イラクの復興を担う「第2のドバイ」の世界遺産アルビル城塞!
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アルビル城塞とは
出典: jan kurdistani (CC BY-SA 2.0)
アルビル城塞のある丘には、有史以前から人が定住していたことが明らかとなっています。城壁に囲まれた町がいつごろできたのかは定かではありませんが、紀元前2300年の記録には、すでにアルビル城塞のものと思われる記述がみられます。
古代アッシリアから古代ローマ、そしてイスラーム国家と、多くの時代の変遷を経験しながらも、アルビルは重要な都市であり続けました。しかし、1258年にモンゴル帝国が攻め寄せ、6ヵ月にもおよぶ籠城の末に、アルビル城塞は陥落します。街も大きなダメージを受け、以降は都市としての地位は低下します。
20世紀に入ると再び人口が増大し、街は城塞の外へ広がっていきました。今世紀に入ると、イラク戦争や過激派組織ISILとの戦いでも破壊を免れ、近年では発掘調査や保存整備が図られています。
アルビル城塞への行き方
アルビル市街のすぐ外側に、アルビル国際空港があります。多くの外国企業が進出してきていることから国際便の就航数も増えていますが、日本からの直行便はありません。イスタンブールやドバイ、アブダビなどを経由しましょう。
空港からアルビル市内へはタクシーで移動します。アルビル城塞は名実ともにアルビルの中心なので、迷うこともないでしょう。
アルビル城塞のおすすめポイント①:円形の城塞
円形の丘の上にぐるりと堅固な城壁が巡っているアルビル城塞。ここは戦時の要塞でもあり、8000年以上前から連綿と人が住み続けている都市でもあります。面積は10万2千平方メートルにおよび、城内の東側には富裕層が、西側には職人などが居住していました。
イラク戦争終結以降に発掘調査と修復事業が進められ、一部が一般観光客にも開放されています。大門から入ると、アラブの都市らしい迷路状の街路や袋小路が張り巡らされています。丘からは復興ラッシュに沸くアルビルの活気あふれる新市街のようすも一望でき、イラクの新旧こもごもを実感できる観光スポットです。
アルビル城塞のおすすめポイント②:第2のドバイ
出典: Ask Gudmundsen (CC BY-SA 3.0)
爆弾テ口事件がおさまらないバグダードとは対照的に、アルビルは治安が大きく改善しています。経済や商業においても、ここ数年間でヨー口ッパやトルコなどの外国企業が次々と進出していて、大企業がイラク進出の窓口となっています。
アルビルの自治政府は、石油資源を各国へ輸出し、その資金で都市の整備を進めています。その事業にはドバイの政府系デベロッパーも参加していることから、アルビルは「第2のドバイ」とも呼ばれているのです。
要塞の南麓にある城塞広場(The castle Fountains and gardens)からは、目の前にそびえるアルビル城塞の城壁と岩壁を見上げることができますよ。
アルビル城塞の注意事項
イラクへの入国はイラク政府が発行する正式な査証が必要となります。現地の空港で取得することはできないので、必ず事前に駐日イラク大使館で申請してください。
また、イランやトルコから陸路でアルビルのあるクルディスタン地域に入国した日本人が現地政府当局に拘束されるという事案が複数発生しています。アルビルを訪れる際は必ず空路を利用しましょう。
◎まとめ
2018年現在、アルビル周辺には外務省の危険情報レベル2が出ています。これは、バグダッドを含むイラク国内の大部分がレベル4(退避勧告)ないしレベル3(渡航中止勧告)であるのに比べると、ほとんど例外的ともいえる緩さです。したがって、現状のイラクにおいては、世界遺産アルビル城塞は数少ない観光スポットの1つとなっています。
とはいえ、用心しなければならないことに変わりはなく、レベル2は特別な注意と十分な安全対策を要求するものです。単独行動は避け、できるだけ現地のガイドと帯同するようにしてください。