【世界遺産】澄江の化石産地とは?|カンブリア紀の奇妙な生き物が見つかる!?

画像出典:Dwergenpaartje (CC BY-SA 3.0)

【世界遺産】澄江の化石産地とは?|カンブリア紀の奇妙な生き物が見つかる!?

本記事では中国の世界遺産、「澄江の化石産地」についてご紹介します。

世界遺産に登録されている化石産地は世界に10件以上あります。ですが、中国雲南省澄江から発掘される化石は世界的にも珍しい時代のもの。恐竜の時代どころか生物が地上に進出する前、約5億4200万年前から約4億8830万年前までの、カンブリア紀と呼ばれる「古生代前期最初期の動物群の化石」が多数出土しています。

カンブリア紀の特徴は、「カンブリア爆発」と呼ばれる急激な生物の多様化にあります。とくに、人間の想像力ではちょっと思いつかないような奇妙奇天烈な形状をした生物も少なくなく、カンブリア紀はまるで種の試行錯誤のようにさまでまな動物が分化し、そして淘汰を繰り返していた時代と考えられています。

有名なところでは、長年上下が逆さまに考えられてきたほど珍妙な姿のハルキゲニアや、初めて学会に復元図が発表されたときに爆笑の渦が起こったといわれるオパビニア、そしていまだに上下が分からない平たいクラゲのような形のエルドニアなどなど。2012年に世界遺産に登録された澄江の化石産地からは、200種以上の動物化石がみつかっています。

目次

【世界遺産】澄江の化石産地とは?|カンブリア紀の奇妙な生き物が見つかる!?

澄江の化石産地とは?

出典: www.istockphoto.com

澄江の帽天山周辺から多数の化石が産出されることは、20世紀初頭には知られていました。カンブリア紀の軟体性の生物と思われる化石も見つかっていましたが、このときはそれほど注目はされていませんでした。

時代が進み、カナダのバージェス頁岩(こちらも世界遺産)で、豊かな生物相が存在したことを示す多数の化石が発見されます。これにより、それまで原始的な生物しかいないと考えられていたカンブリア紀の扱いが一変。同時代の地層をもつ澄江の化石産地でも本格的な調査が始まりました。

調査の結果、澄江の動物群はバージェスよりも1,500万年ほど古い時代のものであることや、両者に共通する動物種が極端に少ないことなどが明らかになりました。そのため、世界遺産登録基準における「地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの」という条項を満たすとして、2012年に登録が決定しました。

澄江の化石産地へのアクセス

澄江の化石産地は、中国南西部雲南省昆明市の外れ、撫仙湖の北にあります。昆明長水国際空港へは、日本国内からも関西国際空港や中部国際空港から直行便が出ています。

昆明から澄江の化石産地までの公共交通機関はないので、澄江県の市街か県北部の陽宗駅からタクシーを利用する必要があります。

澄江の化石産地のおすすめポイント①:澄江動物化石群博物館

出典: SNP (CC BY-SA 3.0)

澄江の化石産地は世界遺産ですが、だからといって発掘現場をむやみに歩き回るわけではありません。化石の主な産出地である帽天山には、観光客向けに澄江動物化石群博物館が建てられています。

館内にはもちろん、澄江で見つかった多数の化石標本が展示されています。カンブリア紀を代表する巨大生物であるアノマロカリス類や、日本でもおなじみの三葉虫類など、現生の動物とはまったく違った生き物たちの姿を目にすることができますよ。

周辺も国家地質公園として整備されているので、約5億年前には海の底だった大地に思いを馳せながら散策してみるのも良いですね。

澄江の化石産地のおすすめポイント②:澄江動物群

澄江で発見された動物は、今のところ他に類を見ない特殊性を有しているので、「澄江動物群」としてまとめられています。生物学上重要なだけでなく、カンブリア紀研究の先駆者であるスティーヴン・ジェイ・グールドが「奇妙奇天烈動物」とまで呼んだ特異な外見は、大いに興味をそそられます。

「カンブリアンモンスター」とも称されるカンブリア紀のオモシロ生物のうち、いくつかをここでご紹介しましょう。

◆アノマロカリス

出典: Matteo De Stefano/MUSE (CC BY-SA 3.0)

「奇妙なエビ」という意味のアノマロカリスは、カンブリア紀最大の動物であり、食物連鎖の頂点に立つ存在でした。扁平な胴体の両サイドにはいくつものヒレが並び、尻尾は確かにエビのよう。ですが、基本的に脚はなく、頭の先端に捕食用の腕が伸びています。口は「輪切りのパイナップル」とも呼ばれる円形をしていて、当初はこの口と腕、そして体部分が別々に発見され、それぞれ別個の生物と考えられていました。

アノマロカリスには、とくに腕や口の部分に多種多様な特徴をもつ仲間がいます。なかでも、腕に3本の指が付いているパラペユトイアは、澄江だけでしか確認されていない固有種です。澄江動物化石群博物館を見学するときは、ぜひ探してみてください。

◆ハルキゲニア

出典: Jose manuel canete (CC BY-SA 4.0)

ハルキゲニアは、芋虫状の体の片面に2列のトゲを、もう片面にはやはり2列の突起が並んでいます。初めてバージェスで発見されたとき、研究者はトゲトゲの脚で歩き、背中の触手で餌をとっていたと考えられていました。ですが、澄江で発見された同種の化石を調べたところ、目や歯と思われるものが見つかり、なんと上下も前後も逆さまだったことが判明しました。つい最近の2015年のことです。

とはいえ、どちらを向いていても奇妙な姿のハルキゲニア。「幻のような」という意味のこの小動物は、今ではキモかわいいと一部の人たちの間で人気になっているほどなんですよ。

◆ミロクンミンギア

出典: Talifero (CC BY-SA 3.0)

澄江動物群の重要な生物の1つに、ミロクンミンギアが挙げられます。現在確認できる魚類の最も原始的なものとして、「最古の魚類」と呼ばれています。それまで魚類が誕生したのはカンブリア紀の次のオルドビス紀と考えられていたため、ミロクンミンギアの発見はとても画期的なものでした。

ただし、魚類といっても現生の魚とは似ても似つかず、胸びれもなければ尾びれもなく、ウロコもアゴもありません。泳ぎは上手ではなく、薄っぺらい体に水流を受けながら漂っていたと推測されています。

◎まとめ

澄江の化石産地には早期カンブリア期の爆発を解明する重要な手がかりがあると同時に、豊富なリンが澄江にあり、澄江の経済基盤となっているという問題を抱えています。

世界的に見れば世界遺産は貴重であり保護したいところですが、保護したことで周辺のリン産業の工場で生計を立てている人たちは生活に困ってしまいます。また、その従業員数も3000人と多く、簡単には片付けられない点が問題をさらに肥大化させています。

現代の生活と古代の遺産のどちらを守るかは非常に難しい問題です。これをわきまえて、澄江の化石産地を観光すると違った視点で世界遺産を観光できるかもしれませんね!

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