「丹霞(たんか)」とは「夕焼け雲」を意味する言葉で、赤い堆積岩の独特な地形が特徴。中国北部の甘粛省には赤・朱・黄色のストライプ模様が鮮やかな「張掖丹霞地貌(ちょうえきたんかちぼう)」がありますが、中国の南東部にはジュラ紀から新第三紀に堆積して形成された地球進化のプロセスを示す丹霞が点在しています。
2010年にブラジリアで開催された第34回世界遺産会議で、これら中国南東部にある6か所が「中国丹霞(たんか)」という名称で自然遺産として正式に登録されました。西の貴州省から東の浙江省にわたる6か所を順に、それぞれの特色と魅力を交えてご紹介しましょう。
目次
【世界遺産】中国丹霞とは?|独特な地形に注目!
目次を閉じる
中国丹霞のおすすめポイント①:貴州省赤水市・赤水丹霞
貴州省の赤水(せきすい)は、四川盆地と雲貴高原の境に位置する中国最大の丹霞分布エリア。赤い丹霞壁や切り立った尾根など、高原の急な隆起と強い水流がえぐれた地形を生み出しました。
数千ともいわれる滝が点在し、渓谷丹霞の代表ともいえる赤水丹霞は、国家クラスの景勝地であり自然保護区。面積は1000平方キロメートル以上に及び、南天竹や原始森林、ジュラ紀から続くヘゴなど古い植生が見られます。燕子岩国家森林公園や十丈洞大滝など、トレッキングで観光を楽しみましょう。
中国丹霞のおすすめポイント②:湖南省新寧県・莨山
湖南省の南西部、新寧県内にある崀山は、中国南部プレートと長江プレートが交差して隆起した丹霞カルスト。天に突き出たドーム型の峰が密集した独特な景観の丹霞です。
ここには、アモイトラ(華南虎)やウンピョウ(雲豹)、ジャコウネコなどの絶滅危惧種が生息していることで知られています。八角寨の竜頭香から見ると、奇石が林立する丹霞地形の眺望を満喫できますよ。
中国丹霞のおすすめポイント③:広東省仁化県・丹霞山
広東省仁化県にある丹霞山は、多様な景観とエキゾチックな自然がいっぱいの世界遺産。峰や断崖がひしめく独特の景観が魅力で、代表的な丹霞の特徴をもっていることから「中国丹霞」の名前の由来になりました。
丹霞山一帯は、まるで熱帯雨林。うっそうとした樹林帯には多くの希少な動植物が生息しており、国際自然保護連合(IUCN)がレッドリストにあげた生物が70種以上、植物10種以上も含まれるといわれています。
中国丹霞のおすすめポイント④:江西省・龍虎山
江西省の竜虎山は、ジュラ紀に堆積したれき岩層が浸食や風化によってできた丹霞地形。世界遺産であるとともに、「竜虎山世界地質公園」として世界ジオパークにも認定されています。
廬渓川の両岸にあるうねうねした竜山と、激しく隆起した虎山の姿がとても魅力的。多様な丹霞と川の光景は落ち着いた山水画のような印象も受けます。
中国の小説『水滸伝』で、108人の魔王が封じ込められた竜虎山。かつては道教の大本山でもありました。仙水岩の断崖絶壁には、春秋戦国時代にくり抜いてつくられた懸墓遺跡群があります。
中国丹霞のおすすめポイント⑤:福建省・泰寧
福建省北西部に位置する泰寧は、無数の不思議な穴や洞窟がある断崖、典型的な赤い丹霞地形が特徴。岩穴の中に造られ、太い1本の柱で支えられている甘露岩寺は、中国建築史上の一大傑作と言われています。
多くの深い峡谷がある泰寧では、懸天峡・通天峡・倚天峡からなる寨下大峡谷が見どころです。
中国丹霞のおすすめポイント⑥:浙江省・江郎山
江郎山は、郎峰・亜峰・霊峰と呼ばれる3つの巨岩がそびえ、現地の人が神と仰ぐ山。江氏という3兄弟が登って3つの岩になったという伝説が名前の由来です。東シナ海に面した浙江省(せっこうしょう)の江山市にあり、主峰の郎峰は標高約820m。亜峰と霊峰の間にある細く深く切り立つ峡谷は「小弄峡」や「一線天」と呼ばれる景勝地です。
断層も見られる白亜紀の地層で、動物約150種と植物約50種がIUCNレッドリストに記載されています。漢詩にうたわれた場所としても知られる中国丹霞の江郎山へ、ぜひ足を伸ばしてみてくださいね。
◎まとめ
中国の南西部にある、丹霞という特有の地形を持つ6か所が世界遺産となりました。「中国丹霞」としてまとめて登録されましたが、それぞれに違った特徴と魅力、歴史があります。それぞれの場所を訪れて、違いを体感してみるのもいいかもしれませんね。