名称:Residence of Bukovinian and Dalmatian Metropolitans
住所:Kotsyubyns'koho St, 2, Chernivtsi, Chernivets'ka oblast, 58012
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/ja/list/1330
「ブコビナ・ダルマチア府主教の邸宅」は、ウクライナ西部のチェルニウツィーという街にある世界遺産です。19世紀末に建てられた東方正教会の宗教施設群で、その規模と壮麗さもさることながら、さまざまな時代の建築様式が融合した歴史主義建築の傑作として、2011年に文化遺産に登録されました。オーストリア帝国の支配下でチェコ人の設計により建設された正教会の施設という複雑な背景を持ちながらも、見事なデザインの調和を体現したブコビナ・ダルマチア府主教の邸宅は、東欧と西欧の境目を代表する建造物として高く評価されています。この記事では、そんなウクライナの世界遺産「ブコビナ・ダルマチア府主教の邸宅」の見どころについて解説します。
目次
ウクライナの荘厳な建築美の世界遺産!ブコビナ・ダルマチア府主教の邸宅
ブコビナ・ダルマチア府主教の邸宅とは
現在のウクライナとルーマニアにまたがるブコビナ地方は、18世紀末にハプスブルク帝国領となり、キリスト教東方正教会のブゴビナ・ダルマチア主教区が創設されました。当初の府主教(大司教)の邸宅は木造のみすぼらしいもので、1851年になって主教の威厳にふさわしい建物を作るよう陳情されました。これを受けて、チェコ人建設家ヨセフ・フラヴカが選出され、新しい邸宅の建設計画がスタートしました。
フラヴカは、府主教の住居のほかに行政府や学校、図書館、礼拝堂、美術館なども併設した壮大な施設群を提案。しかし、さまざまな問題から建設はなかなか進まず、1883年になってようやく完成を見たのです。全体の幅が70m、奥行が100mと広大な敷地を有し、中庭を三方から取り囲むように「コ」の字型に建物が配置されています。現在はチェルニウツィー大学として使われていますが、観光客にも開放されています。
ブコビナ・ダルマチア府主教の邸宅へのアクセス
ブコビナ・ダルマチア府主教の邸宅のあるチェルニウツィーへは、まずウクライナ西部の中心都市リヴィウへ向かいます。こちらも世界遺産に登録されているリヴィウからチェルニウツィーまでは、電車かバスで4~5時間ほどです。
チェルニウツィーの駅およびバスターミナルからは、歩いても20分程度でチェルニウツィー大学に着きます。
ブコビナ・ダルマチア府主教の邸宅のおすすめポイント
1. 大理石の間
世界遺産ブコビナ・ダルマチア府主教の邸宅を訪れたら、まず最初に見ておきたいのが「大理石の間」です。府主教らの会議室として使用されていた厳かな部屋で、美しい天井画が見どころ。かつては歴代オーストリア皇帝の肖像画も飾られていました。
格子になっている大理石の間の天井は、パネルの1枚1枚、枠の1本1本細部に至るまで鮮やかな装飾が施されています。あまりの壮麗さに、見上げる首が痛くなるのも忘れてしまいそうです。部屋は2階分打ち抜いて作られているので、天井がとても高い分なおさら。ぜひ大理石の間で、当時のブコビナ・ダルマチア府主教の権威を感じ取ってみてください。
2. 赤の間
「赤の間」は、その名の通りの淡いワインレッドの壁が印象的な、小会議室として使用されていた部屋です。壁面だけでなく調度品までがすべて赤で統一されていて、大理石の間とはまた違った幽玄な空間に仕上げられています。その美しさは、世界遺産委員会の諮問機関である国際記念物遺跡会議(ICOMOS)が、「傑出した美しい木製の宝石箱」と評したほどです。
赤一色といっても気品すら漂わせるコーディネートは一見の価値あり!ほかにも府主教の図書室だった「青の間」や応接室だった「緑の間」など、ブコビナ・ダルマチア府主教の邸宅はさまざまなカラーに彩られています。
3. 三成聖者聖堂
中庭から、大理石の間や赤の間がある邸宅本邸に向かって右側には修道院が、左手には三成聖者聖堂があります。三成聖者は東方正教会の重要な3人の聖人で、聖堂は神学校と併せて建てられました。
正教会の聖堂でありながら、外観はどこか西欧的な要素も含んでいて、絶妙なデザインのバランスの上に成り立っていることが分かります。堂内には地元ブゴビナだけでなく遠くウィーンから招かれた芸術家たちの手による華麗な壁画が遺されています。とくに祭壇のイコンと天井画が素晴らしく、高い円塔から取り入れられた日の光が、これらの芸術作品を神秘的に照らします。
◎まとめ
世界遺産ブコビナ・ダルマチア府主教の邸宅のおすすめポイントを3つご紹介しました。歴史を感じさせる建築様式と荘厳な装飾を目の当たりにできるこの建築群は、ウクライナのみならずヨーロッパ世界全体でみても重要な存在です。ウクライナ西部やルーマニア北部を観光する際は、ぜひ世界遺産ブコビナ・ダルマチア府主教の邸宅のあるチェルニウツィーにも足を運んでみてください。