10か国にまたがる世界遺産「シュトルーヴェの測地弧」

10か国にまたがる世界遺産「シュトルーヴェの測地弧」

「シュトルーヴェの測地弧」は、世界遺産の中でも非常に珍しく、全10か国にまたがって登録されている世界文化遺産。かつて自分たちが住む世界の形と広大さを知りたいと切望した、偉大な天文学者の足跡を残す、まさに後世に語り継ぎたい世界遺産のひとつです。

19世紀の天文学者シュトゥルーヴェは、北極圏から黒海まで2,820kmを超える弧長で、三角測量を行いました。現在の地図の礎を築いたシュトルーヴェの測地弧について、わかりやすくご紹介します。

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10か国にまたがる世界遺産「シュトルーヴェの測地弧」

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「シュトルーヴェの測地弧」とは?

ハンメルフェストの測量点(シュトルーヴェの測地弧)

世界遺産「シュトルーヴェの測地弧」とは、ノルウェーにある世界最北の町ハンメルフェストの岬から、ウクライナの南端、黒海にほど近いスタラ・ネクラシウカの町までを南北一直線に結ぶ、258か所に及ぶ三角測量地点のこと。三角点とは、測量をするときに基準となる地点です。

今から200年以上も昔は、今ほど正確な地図は存在していませんでした。しかし19世紀にドイツ出身の天文学者フリードリッヒ・ゲオルグ・ヴィルヘルム・フォン・シュトゥルーヴェは、約40年物歳月をかけて、ノルウェーからウクライナまでの長距離を測量。これによって正確な地図ばかりか、地球の正確な形までもが判明することとなったのです。

測量点は当初、2か国(当時のスウェーデン=ノルウェー、ロシア帝国)に置かれました。その後、ノルウェー・スウェーデン・フィンランド・ロシア・エストニア・ラトビア・リトアニア・ベラルーシ・モルドバ・ウクライナにも設置。

エストニア(シュトルーヴェの測地弧)
ベラルーシ(シュトルーヴェの測地弧)

約40年にわたって、計10か国・2820km以上におよぶ測地弧に、265ポイントの測地点が配置されました。

子午線の弧長が三角測量できるようになったことで、地形図作成など地学分野が大きく発展。世界の子午線も制定されました。また、惑星や地球の大きさ・形を正確に測定することが可能となり、地球科学分野にも大きく寄与したのです。

この偉大な功績を称えて世界遺産に登録されたのが、シュトルーヴェが調査を行なった2,820kmにも及ぶ三角測量地点の連なりであり、うち34の測量地点が世界遺産として登録されました。

この記事では、特に有名なおすすめスポットを4か所ピックアップしてご紹介します。

「シュトルーヴェの測地弧」のおすすめポイント①:ハンメルフェストの測量点

ハンメルフェスト「シュトルーヴェの測地弧」

世界遺産「シュトルーヴェの測地弧」のはじまりは、ノルウェーのハンメルフェストといわれています。ノルウェー北端のフィンマルク県のさらに北西部に位置する街ハンメルフェストは、世界最北端の不凍港です。

ハンメルフェストの測量点(シュトルーヴェの測地弧)

三角点の置かれた岬には、測量事業の完成を祝して建てられた記念碑があります。測量地点のほとんどが自然の岩や人工物に印をつけたものであるのに対し、このようなモニュメントが設置されているのは珍しく、この町の観光スポットの1つとなっています。

2800kmにも及ぶ壮大な測量の旅のスタートの地。世界遺産シュトルーヴェの測地弧を訪ねるなら、まずはハンメルフェストの記念碑から始めましょう。

◆ハンメルフェストの測量点へのアクセス

ハンメルフェストの測量点へのアクセスは、ハンメルフェスト空港から約2km。タクシーなら数分、歩いても30分ほどで行くことができます。

ただし、日本からノルウェーへの直行便はなく、ハンメルフェスト空港へはトロムソなど国内線のみ就航しています。

「シュトルーヴェの測地弧」のおすすめポイント②:アラトルニオ教会

アラトルニオ教会(シュトルーヴェの測地弧)

フィンランドのラップランド州にあるアラトルニオ教会も世界遺産の1つです。

測定点があるのは、アラトルニオ教会の鐘楼。尖塔の中心が、計測点として最適な場所にあったことが理由とされています。

◆アラトルニオ教会へのアクセス

日本からヘルシンキへは直行便があります。ヘルシンキで国内線に乗り継ぎ、ケミ・トルニオ空港へ。

ケミ・トルニオ空港からアラトルニオ教会まで、約25km、タクシーで20分ほどです。

「シュトルーヴェの測地弧」のおすすめポイント③:エストニアのタルトゥ天文台(旧天文台)

エストニアのタルトゥ天文台(シュトルーヴェの測地弧)

エストニアにも、世界文化遺産シュトルーヴェの測地弧の測量点に指定されたタルトゥ天文台(旧天文台)場所があります。

タルトゥ天文台はタルトゥ大学の附属施設で、世界遺産に登録されているのは、タルトゥ市内にある旧天文台です。現在はタルトゥ大学博物館に所属する展示棟になっています。

タルトゥ市郊外にある新天文台は、現役で天文観測が行われている施設です。

◆タルトゥ天文台(旧天文台)へのアクセス

最寄りの空港はタルトゥ空港です。空港からタルトゥ天文台(旧天文台)まで約12km、タクシーで15分ほど。

エストニアの首都タリンからは、列車やバスで約2時間半。タルトゥバスターミナルから徒歩約15分です。

「シュトルーヴェの測地弧」のおすすめポイント④:ウクライナの観測最終地点

シュトルーベ弧の最南端碑(ウクライナ Stara Nekrasivka)

出典: Автор: Oleksandr Malyon - Власна робота, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=109760286 (CC BY-SA 4.0)

世界遺産シュトゥルーヴェの三角点アーチ観測地点群を楽しむためにおすすめポイントは、観測最終地点であるウクライナのスタラ・ネクラーシフカ(Stara Nekrasivka)にある観測地点です。

観測地点は、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、ベラルーシ、モルドバ、ロシア、ウクライナの全10か国にも渡って存在しています。しかしシュトゥルーヴェの偉大な功績に寄り添うためには、その観測が完了した地、ウクライナのスタラ・ネクラシウカという町にある観測点を外すことは出来ません。

この地には、世界遺産シュトゥルーヴェの三角点アーチ観測地点群の最終地点としてふさわしい立派な石像が建造されており、シュトゥルーヴェの功績が称えられています。

◎世界遺産「シュトルーヴェの測地弧」まとめ

ウクライナ(シュトルーヴェの測地弧)

シュトゥルーヴェの三角点アーチ観測地点群のおすすめポイントをご紹介しました。全10か国に渡って観測地点が南北に連なり、そのすべてが世界遺産として登録されている珍しいスポットです。今回ご紹介した観測最終地点のウクライナだけでなく、スタート地点のノルウェーから順に、シュトゥルーヴェが辿った足跡を追うように各地の観測地点を観光して歩くと、よりシュトゥルーヴェ偉大な功績を実感できること間違いありません。

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