名称:Archaeological Landscape of the First Coffee Plantations in the South-East of Cuba
住所:Santiago de Cuba Province/Provincia de Guantánamo
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/en/list/1008
東西に細長いカリブ海最大の島キューバ。その南東端のグァンタナモ州とサンティアーゴ・デ・クーバ州にまたがって、世界遺産の美しい景観が広がっています。世界遺産「キューバ南東部のコーヒー農園発祥地の景観」は、19世紀初頭に切り拓かれた伝統的なコーヒー農園跡。ハイチからやって来たフランスの入植者によってハイチの伝統的なコーヒー農園がつくられました。
原生林の茂る丘に広がる農業風景は、キューバの自然の美しさと人の絶え間ない努力が融合した秀作。他方で、その景観を実際に切り開いたのは、アフリカから連れてこられた奴隷たちであったという事実もあります。今回は、そんなキューバの世界遺産を堪能するおすすめ3つの厳選ポイントをご紹介します。
目次
植民地時代を語る世界遺産!キューバ南東部のコーヒー農園発祥地の景観
キューバ南東部のコーヒー農園発祥地の景観とは
19世紀初頭から20世紀初頭にかけて、ハイチから入植したフランス人たちによってつくられたコーヒー農園。サンティアーゴ・デ・クーバ州とグァンタナモ州にまたがる、広大な81475 haもの土地に作られた171のコーヒー農園跡が、2000年に世界遺産に登録されました。
もともとフランス人たちはフランス領のサン=ドマングで大規模なプランテーションを経営ていましたが、1804年にサン=ドマングがハイチとして独立すると、奴隷を引き連れてキューバ南東部へやってきました。気候はハイチと似ているものの、人跡未踏の原生林だったキューバ南東部を切り開き、多くの農園がつくられました。
しかし19世紀に入ると、ブラジルなど南米大陸産の新しい手法による安価なコーヒーが出回るように。競争に勝てなくなったハイチの伝統プランテーションは、やがて姿を消していきました。世界遺産のキューバ南東部のコーヒー農園跡は、開拓当時の農業形態が残っている唯一の遺跡であると同時に、過酷な労働を強いた奴隷制度の歴史を負うものでもあります。
キューバ南東部のコーヒー農園発祥地の景観へのアクセス
世界遺産「キューバ南東部のコーヒー農園発祥地の景観」を訪ねるには、キューバ第2の都市サンティアーゴ・デ・クーバを拠点とすると良いでしょう。サンティアーゴ・デ・クーバへは、首都ハバナやカナダのトロントから空路で行くことができます。
世界遺産の景観はキューバ南東部全域に点在しているので、ツアーに参加して巡るのが効率的です。サンティアーゴ・デ・クーバからもっとも近いのは東のラ・グラン・ピエドラと西のエル・コブレです。どちらも宿泊施設はありますが、公共交通機関は走っていません。個人で行くにはタクシーかレンタカーを利用する必要があります。
キューバ南東部のコーヒー農園発祥地の景観のおすすめポイント
1. 緑豊かな美しい景観と当時の建物
出典: Sigi Knoll (Lagaly_de) (CC BY-SA 3.0)
辺り一面の緑のカーペット奥には雄大な山々。世界遺産、「キューバ南東部のコーヒー農園発祥地の景観」に来たのなら、まずその遠目からの景観を味わってください。緑の平地にところどころ見える大きな木々。この広い農地を開拓するのに、多くの奴隷が使役されました。
世界遺産のキューバのコーヒー農園跡へ足を踏み入れてみると、典型的プランテーションの建物や農業主の家、コーヒーの製粉や焙煎を行うエリアや彼らの住居などの跡を見ることができます。フランス人が開発した、特殊な貯蓄池の灌漑システムを必要としたウェットパルピングのシステムなどの跡や、トロッコなどの設備も必見です。
とくに、ラ・グラン・ピエドラ(巨大な石の意)の頂に登れば、開拓されたキューバの大地を手に取るように一望できますよ!
2. ラ・イザベリカ農園
出典: Sigi Knoll (Lagaly_de) (CC BY-SA 3.0)
ラ・グラン・ピエドラ地区にあるかつてのプランテーション「ラ・イザベリカ農園(Cafetal La Isabélica)」は、当時の農業道具や家具などが展示されている博物館となっています。ラテン・アメリカの経済や社会、そしてプランテーションの生活や開拓、農業に関する資料を見学することができます。
博物館自体が農場主の屋敷を転用した、世界遺産の建物です。決して豪邸ではありませんが、瀟洒なデザインに、プランテーションの規模の大きさをうかがうことができます。他方で、この博物館には奴隷たちの足かせなど、植民地時代の奴隷文化も垣間見ることができます。19世紀のキューバの貴重な手がかりとして、ぜひ立ち寄りたいミュージアムです。
3. シエラ・マエストラ山脈
美しく広がる緑の平地の奥にそびえたつキューバ最高峰のトゥルキーノ山。この山を含むシエラ・マエストラ山脈は、この世界遺産「キューバ南東部のコーヒー農園発祥地の景観」の西側一帯に横たわっています。もし時間があれば、この山脈一帯の国立公園へ行ってみるのもおすすめ!標高1,974mの山頂へ行くことは制限されているものの、美しいキューバの大自然が楽しめる、いくつものトレッキングのトレイルが用意されています。
世界遺産「キューバ南東部のコーヒー農園発祥地の景観」をひと際際立たせているシエラ・マエストラ山脈を眺めていると、神秘的な雲霧林に心が洗われます。そして、こうした山々と森に抱かれた鬱蒼とした大地を、奴隷たちが苦労して切り開いていったのだということをしみじみと感じるでしょう。
◎まとめ
世界遺産「キューバ南東部のコーヒー農園発祥地の景観」は、植民地時代の奴隷をはじめとした人々の汗と涙の結晶。さまざまな工夫を凝らした農業システムには心が動かされます。美しく切り開かれた大地に、キューバの大自然も味わえる世界遺産です。