不毛の地に残る古代文化の痕跡!世界遺産「エーランド島南部の農業景観」

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不毛の地に残る古代文化の痕跡!世界遺産「エーランド島南部の農業景観」

スウェーデン南部、スカンジナビア半島に沿って細長くのびるバルト海のエーランド島には、先史時代から人々が暮らしてきた生活の跡が点在しています。海風に吹きさらされるエーランド島は石灰岩の平原が広がり、作物を育てるには不向きな土地。島内の遺跡からは、この不毛な大地で生きていくために人々が苦闘し、さまざまな工夫を行ってきたことが伺えるのです。また、やせた土地としては珍しく植生が豊かなことでも知られ、固有種や氷河期の残存種が多く見られることも、世界遺産として評価されています。今回は、そんなスウェーデンの世界文化遺産「エーランド島南部の農業景観」について解説します。

目次

不毛の地に残る古代文化の痕跡!世界遺産「エーランド島南部の農業景観」

エーランド島南部の農業景観とは?

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エーランド島は南北およそ130kmの大きな島ですが、大部分が石灰岩の露出した不毛な平原に覆われているのが特徴です。ただし、やせた土と高いpHレベルに比して多種多様な動植物が生息していて、島には低いながらも樹木も点在しています。

とはいえ農耕を営むのに厳しい環境であることに変わりはありません。そのような土地に人々が定住するようになったのは紀元前3000年ごろと考えられています。貴重な水源である潟湖の周りに木造の小屋を建て、野生動物から守るために農地や牧草地を石壁で囲い、人々は共同生活をなんとか維持していたのです。

しかし、6~7世紀ごろに突然人々はエーランド島から一旦姿を消しました。人口が不毛なエーランドの生産能力を上回ってしまったために、島を捨てざるを得なくなったためと推測されています。こうして、人々が長い年月をかけて築き上げた農村は放棄され、9世紀以降は海の民バイキングの集落が沿岸部に建設されるようになりました。

エーランド島南部の農業景観へのアクセス

エーランド島はスウェーデン最長のエーランド橋で本土と結ばれています。本土側の都市カルマルには空港があり、首都ストックホルムからのフライトなら1時間弱で着きます。鉄道の場合は、アルヴェスタという町で乗り換えて4時間半ほどかかります。

デンマークの首都コペンハーゲンから鉄道で行くこともでき、こちらのルートだと所要時間は直行で4時間弱です。

カルマルからは、エーランド島へ向かうバスが運行しています。また、カルマルの港からフェリーでエーランド側の港町フェリェスターデンへ向かうこともできます。島内の公共交通機関は発達していないので、ツアーに申し込むかレンタカーを借りるのが得策でしょう。

エーランド島南部の農業景観のおすすめポイント

1. エケトープ

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エーランド島南端近く内陸の「エケトープ(Eketorp)」という場所に、一番の見どころともいえる遺跡があります。石壁に囲まれた円形の集落跡で、かつて島内にはこうした村落が15~18くらいあったと推測されています。

エケトープ城とも呼ばれるこの城壁集落は、紀元後4世紀ごろに築かれました。現在の立派な城壁は復元されたもので、敵兵というより野生動物の襲来を防ぐのが目的であったとみられています。注目すべきは城内に残る井戸で、これは集落ができてから掘ったのではなく、真水が得られるこの井戸があったからこそ周囲に村と城壁ができたのだと考えられています。エーランド島の厳しい生活環境をうかがうことのできる重要な遺物といえるでしょう。

城内にも建物が再現されていて、古代や中世をイメージした服装のスタッフがかつての暮らしのさまざまな場面をデモンストレーションしています。ショップや飲食コーナーなどもあり、世界遺産の貴重な遺跡ながらテーマパークとして大人も子供も楽しめる施設ですよ。

2. ゲトリンゲの船形墓石群

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エーランド島には外周をぐるっと回る幹線道路が1本通っています。この道路に沿って島の南西部を走っていると、ゲトリンゲ(Gettlinge)とクリンタ(Klinta)という地区の間にストーンサークルのような遺跡があることに気が付くでしょう。

これはストーン・シップなどと呼ばれるバルト海沿岸地域特有の埋葬地で、エーランド島ではひときわ大きな石灰岩の石塔を先頭に、背の低い墓石が船の形に並んでいます。紀元後6~8世紀ごろの北欧鉄器時代につくられたものと推定されていて、世界遺産「エーランド島南部の農業景観」の重要な遺跡の1つとなっています。

3. 多様な生態系

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phの高い石灰岩質のエーランド島は、とくに植物には育ちにくい環境とされています。にもかからわず、不毛な土地にしては特異なほど多様な生態系が維持されているのがエーランド島の大きな見どころの1つです。氷河期の残存種や、エーランド島の固有種であるヨモギ属の植物など、大きくはなれないものの数多くの植物が島中に繁茂しています。

これらの野草は5~6月にかけて開花するものがほとんどなので、エーランド島観光にはそのころがベストシーズンといえるでしょう。これほど珍しい植生が見られる地形はヨーロッパでも最大の規模といわれています。「エーランド島南部の農業景観」自体は文化遺産ですが、世界遺産に選ばれた理由の1つとしてこの豊かな植物相が挙げられているので、エーランド島を訪れたらぜひ道端の草花にも目を向けてみてください。

◎まとめ

スウェーデンの世界遺産「エーランド島南部の農業景観」についてご紹介いたしました。過酷な状況でありながら、人々がおよそ5000年も前から生活し続けてきた証拠の残るエーランド島は、人類の歴史にとってとても大切な土地と言えます。現在のエーランドには多くの町や農地があり、木造の風車が点在する丘の景色は、この島を代表する風景となっています。北欧旅行でもし都合が合えば、ぜひ世界遺産「エーランド島南部の農業景観」にも足を延ばしてみてください。

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