名称:Ancient Villages of Northern Syria
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/en/list/1348
シリア北部、アレッポ周辺からイドリブ周辺に至る地域には、40ほどにも上る古代村落の遺跡が散在しています。多くは1~7世紀に建設され、8~10世紀の間に打ち捨てられたもの。いずれも石灰岩の広漠とした山中にあるため、放棄されて以降人為的に破壊されることもなく、貴重な遺跡となって現在に残っています。
こうした経緯から「死の町」「忘れられた街」とも呼ばれる「シリア北部の古代村落群」は、2011年に世界遺産に登録されました。シリア北部の広範囲に散らばる世界遺産の古代村落群は、大きく8つの考古学公園に分けられています。ちょうど東ローマ帝国が栄えていた時代に相当することから、「キリスト教徒にとってのポンペイ」とも形容されている世界遺産。その見どころをご紹介しましょう。
目次
忘れられた街と呼ばれる世界遺産!「シリア北部の古代村落群」
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シリア北部の古代村落群とは?
世界遺産「シリア北部の古代村落群」は、古いものではセレウコス朝を開いたセレウコス1世が紀元前3世紀頃に建設したキュロスなども含まれていますが、多くの集落は紀元後1~7世紀の間に成立したと考えられています。
現在では石灰岩の丘陵が広がる乾いた土地ですが、当時はオリーブが盛んに栽培されていたと考えられています。東ローマ帝国時代には交易ルートがこの地域を通っていたとも推定されていて、オリーブオイルの貿易によって村々も潤っていました。
しかし、イスラーム勢力が中東を制圧すると、交易ルートも変わってしまいます。貿易の恩恵を享受できなくなった村落は、次第に打ち捨てられていったものと推測されています。
シリア北部の古代村落群へのアクセス
世界遺産「シリア北部の古代村落群」の構成資産は、これまた世界遺産の都市アレッポの北西、トルコとの国境付近の地域に散在しています。
シリアは治安が良くない国なので、安さを追求せず、安心で安全なバス会社または現地旅行会社の手配する車での移動をおすすめします。
シリア北部の古代村落群のおすすめポイント①:聖シメオン教会
世界遺産「シリア北部の古代村落群」のなかで最も有名な遺跡の1つが、聖シメオン教会です。柱に登って説教をし、柱の上で亡くなったという隠修士聖シメオンを讃えて5世紀に建てられたもので、現存するビザンティン教会のなかでも最古の部類に属します。
シメオンの柱を中心に十字型に造られた聖堂は、天井は失われていますが美しいアーチの連なる石壁に、当時の威容を偲ぶことができます。聖堂の南200mほどのところには、ビザンティン建築らしい八角形の洗礼堂や巡礼者の宿泊所などもありますよ。
聖シメオン聖堂は、アレッポの北西約35kmの静かな山の上に建っています。周辺には、同じく世界遺産の構成資産となっているカロタ城やファレルティン教会、ハラーブ・アッ=シャムスのバシリカなどもあり、古代村落群観光のハイライトとなっています。
シリア北部の古代村落群のおすすめポイント②:バラード
バラードは聖シメオン教会の北東に位置する小さな集落です。2~3世紀の間に建設されたと推定されていて、共同浴場があることから、ローマの影響を色濃く受けていたことがわかります。
オリーブの栽培で栄えたとみられ、5世紀初頭には聖ユリアヌス修道院が、6世紀中ごろにはバシリカが建設されるなど発展します。しかし、他の世界遺産の古代村落群と同様、7世紀には打ち捨てられてしまいました。
バラードは、かつてはカトリックの一派マロン派の活動拠点だったとされ、現在も遺跡内には多くのバシリカが残されています。とくに、アーチと柱の一部だけが残る北のバシリカは哀愁を誘う美しさですよ。
シリア北部の古代村落群のおすすめポイント③:キュロス
トルコとの国境に近いキュロスは、世界遺産「シリア北部の古代村落群」のなかでは異色の存在。セレウコス朝シリアの建国者セレウコス1世が、マケドニア王国のキュロスにあやかって建設したという古代の都市です。
東ローマ帝国時代には司教が置かれるなど地方の中核都市として重視されました。他の世界遺産の村落群と同じく7世紀にイスラームの支配下に入ると衰退しますが、12世紀に十字軍が占領するまでは存続していました。しかし、間もなく再度イスラーム勢力に奪取されると、次第に重要性が薄れてやがて打ち捨てられました。
こうした経緯から、キュロスにはローマ風の建物が多く見られます。ローマ遺跡にはお馴染みの円形闘技場やローマ様式の橋などはとくにおすすめですよ。現在ではネビ・フリ遺跡とも呼ばれ、ビザンティン様式の聖コスマスと聖ダミアン教会なども見どころです。
◎まとめ
外務省が発信する海外安全情報により、2018年現在でシリア全土に危険度「レベル4」が発令されています。危険度「レベル4」は、退避してください、渡航は止めてください、という退避勧告です。
残念ながら現在渡航できない状況ですので、旅行を計画されている方は、今後の危険情報に注意してください。