名称:古都ダマスクス
住所:Damascus,Syria
公式・関連サイトURL:http://whc.unesco.org/en/list/20
中東と西アジアに位置する国シリア。シリアは北にトルコ東にイラク、さらにレバノンやヨルダンなどにも隣接する国です。そのシリアの首都ダマスクスの旧市街である古都ダマスクスは、1979年にシリアで初めて登録された世界遺産。ダマスクスには新市街と旧市街がありますが、城壁に囲まれた旧市街と、旧市街に残る歴史的な建築物が「古都ダマスクス」として世界遺産の対象となっています。
古都ダマスクスは紀元前3000年頃から形成された、中東でも最古の都市の一つ。古くからエジプトやメソポタミア、地中海地域を結ぶ東西交易の要衝の地として栄えた都市です。そんな興味深い世界遺産である古都ダマスクスをご紹介します。
目次
悠久の時の中で歴史を紡ぎ続けるシリアの世界遺産、古都ダマスクス
古都ダマスクスとは?
バラダ川の南側に位置する古都ダマスクスは、紀元前3000年頃が始まりだと考えられています。古代からこの地方の中心都市であり、紀元前10世紀にはアラム人の王国の首都が置かれていました。バビロニア帝国やペルシア王朝、ローマ帝国など様々な国に支配され、その複雑な歴史がこの世界遺産である古都ダマスクスを創り上げています。
古都ダマスクスは城壁に囲まれていますが、その城壁は1世紀頃にローマが最初に建設しました。しかし現在残っているのは、13~14世紀にアラブ人によって建設された城壁で、十字軍やモンゴル帝国の侵略から町を守るために建て直されたものです。ローマ時代のダマスクスは現在の町の下に埋まっていますが、旧市街の東にある門「バーブ・シャルキー」のみローマ時代のまま残っています。
世界遺産古都ダマスクスは長く深い歴史の中で様々な文化、王朝、宗教に支配され、その度に上書きするかの様に作り直されてきました。町を東西に走る道は旧約聖書にも登場しているなど、興味深い見どころの多い世界遺産です。
古都ダマスクスのおすすめポイント①:ウマイヤド・モスク
ウマイヤド・モスクは世界最古のモスクであり、世界最大級の規模でもあります。世界遺産である古都ダマスクスを構成する重要なものの一つであり、今でも世界中から巡礼者が訪れる神聖な場所です。
ウマイヤド・モスクはかつて、キリスト教の洗礼者ヨハネ教会でした。ダマスクスがイスラム史上初の王朝であるウマイヤ朝に支配されると、教会はモスクへと10年かけて改築されました。そのためこのウマイヤド・モスクにはローマ時代のビザンティン建築の様子が色濃く残ります。今でもイスラム教徒の巡礼者が絶えないモスクですが、洗礼者ヨハネの墓もあり、キリスト教徒にとっても大切な場所。キリスト教とイスラム教は元々深いつながりがある宗教であり、それを表すかのような世界遺産と言えるでしょう。
古都ダマスクスのおすすめポイント②:サラーフッディーン廟
ウマイヤド・モスクに隣接して建つこの建物は、サラーフッディーン廟です。こちらも世界遺産古都ダマスクスに含まれ、見どころの一つ。12世紀後半に十字軍との戦いでエルサレムを奪還し、アイユーブ朝を創設したサラーフッディーンが眠る墓がこのサラーフッディーン廟です。イスラムの人々にとって、西欧を撃退した英雄として慕われているんですよ。
イスラム教徒にとって英雄であるサラーフッディーンの墓は、その偉大さのわりには質素です。廟の外にこそ馬に乗った勇ましいサラーフッディーン像がありますが、内部は棺が二つひっそりと置いてあります。白い棺はドイツ皇帝から贈られたレプリカであり、サラーフッディーンが眠る棺は右にある木製のもの。美しい布が上にかけられており、サラーフッディーンの肖像を見ることができます。質素ではありますが、よくみると装飾の一つ一つが繊細であり、世界遺産の名に相応しい英雄の廟です。
古都ダマスクスのおすすめポイント③:アゼム宮殿
アゼム宮殿はウマイヤド・モスクのすぐ南側に位置し、オスマン・トルコ時代の建築物です。古都ダマスクスの中では比較的新しい建物ですが、それでも18世紀頃の建造物。オスマン・トルコのダマスクス州総督、アサド・パシャ・アル・アゼムによって1749年に建てられた邸宅です。アゼム家は18世紀を通してオスマン帝国のダマスクス州総督の地位を独占していた名望家で、アゼム家全盛期のアサド・パシャの在任中に建てられた大きな邸宅です。
現在は18~19世紀の装飾品や工芸品を展示する民族博物館となっています。宮殿の作りは見事であり、中庭も散策するのに気持ちいい場所。世界遺産古都ダマスクスをより一層知るのにもおすすめの場所です。
◎まとめ
古都ダマスクスは悠久の時を経て、今もなお人々の歴史が続く世界遺産です。たくさんの宗教や文化が通り過ぎて行ったこの場所は、政治的に難しい場所。残念ながらシリア全土は外務省の海外安全情報でレベル4に分類されています。これは「退避してください。渡航は止めてください。」という退避勧告です。シリアでは身の安全の保障は一切ありません。絶対に渡航しないようにしてください。今はどうすることもできませんが、いつか平和が訪れることを祈るばかりです。