40年ほどで姿を消し、都市遺跡のみが残るレバノンの世界遺産アンジャル

画像出典:Hamdan / PIXTA(ピクスタ)

40年ほどで姿を消し、都市遺跡のみが残るレバノンの世界遺産アンジャル

レバノン東部、シリアとの国境を成すアンチレバノン山脈西麓のベカー高原に佇む世界遺産「アンジャル」。イスラームのウマイヤ朝によって8世紀に建設された城塞都市ですが、未完成のまま破棄されたと考えられています。そのため、はっきりと繁栄した跡が残るものの、20世紀中ごろに発掘されるまで謎多き遺跡でした。

今日では、イスラーム勃興期の計画都市の例として、学術的に貴重な存在と認められています。そのため、1984年に世界遺産に登録されました。今回は、レバノンに眠るイスラームの都市遺跡アンジャルの見どころをご紹介します。

目次

40年ほどで姿を消し、都市遺跡のみが残るレバノンの世界遺産アンジャル

アンジャルとは?

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世界遺産アンジャルのある場所には、もともとはゲッラと呼ばれる古代の都市があったと推測されています。史上初の世襲イスラーム王朝であるウマイヤ朝の第6代カリフ(指導者)ワリード1世により、8世紀に建設されたといわれています。アンジャルの遺跡からは、イスラームの権力者たちの保養用の宮殿やモスク、公共浴場とみられる建物跡が見つかっています。

アンジャルの街は4つの区画に分けられ、南東は宮殿とモスク、南西は居住区、北東には宮殿、北西には公衆浴場という構成でした。今でもレバノンの首都ベイルートとシリアの首都ダマスカスを結ぶルート上という交通の要衝にあるアンジャル。ウマイヤ朝の最盛期を築いたワリード1世の下で繁栄を謳歌していましたが、アッバーズ朝の時代になる約40年後には破壊されてしまいます。そのまま復興されることなく地中の遺跡となっていましたが、1940年代に発掘調査が始まり、イスラーム初期の都の姿が再び世に出ることになりました。

アンジャルへのアクセス

世界遺産アンジャルはベイルートの東60kmほどのところにあり、遺跡の周辺には以外にも新興住宅地が広がっています。

とはいえベイルートからアンジャルへ向かう公共交通機関はなく、タクシーか地元の観光ツアーを利用する必要があります。シリア国境まで10km程度という近さにあるため、治安上の問題から個人での行動はおすすめできません。必ず、信用できる地元のスタッフと同行するようにしましょう。

ベイルートのラフィク・ハリリ国際空港には、日本からの直航便は乗り入れていません。アブダビやドバイ、ドーハなどを経由して行くことになります。

アンジャルのおすすめポイント①:テトラピュロン

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田の字状に区画されたアンジャルの中心には、かつてテトラピュロン(四面門)と呼ばれるそれぞれ4本の円柱で支える4基のモニュメントがありました。今ではそのうち1基が復元され、かつての城塞都市の姿を想像する一助となっています。柱の頭にはアカンサスの葉の飾りが施され、世界遺産アンジャルがビザンチン建築の影響を受けていることが見て取れます。

高い建物が全く残っていないアンジャルの遺跡にあって、すらりと立ち上がるテトラピュロンはひときわ目を引きます。世界遺産アンジャルの中心から周囲を見回せば、ここが王の居所たるに相応しい規模と壮麗さをもっていたことがわかるでしょう。

アンジャルのおすすめポイント②:2層のアーチ

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世界遺産アンジャルの宮殿跡には、残っている部分で最も高い2階までの壁面があります。この壁にあるウマイヤ朝時代の2層のアーチはとても美しく、当時の建築技術の一旦をうかがうことができます。また、壁のレンガと切り石の重ね積みによる独特の模様は、耐震構造も兼ねて造られたものと考えられています。

アンジャルを建設したワリード1世の時代には、ウマイヤ朝は西はイベリア半島から東はインド北部にまで勢力を広げ、最盛期を築いていました。それほどの大帝国の王宮の跡と考えると、崩れかけた壁のアーチ群に、当時の建築技術の粋を感じることができるでしょう。

◎まとめ

今回はレバノンの世界遺産アンジャルをご紹介しました。レバノンでは唯一の城塞都市遺跡とされるアンジャルの魅力は伝わったでしょうか。残っている部分は多くはないものの、記事で取り上げたテトラピュロンや王宮の2層アーチなどから、当時の繁栄ぶりをうかがうことができます。

残念ながら、2018年現在レバノンのシリア国境近くのエリアには、外務省の危険情報レベル2が出ています。世界遺産アンジャルを訪ねる際は、十分な安全対策を講じたうえで、常に最新の情報に気を配り、地元のガイドと行動を共にするようにしてください。

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